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寿司屋のカウンターの静かな空間*ひとりで座る
くもりのない白木のカウンターは素敵だ。
子供達が大きくなるまでは、
回転寿司はお気に入りのワンダーランドだった。
お寿司だけでなく、ハンバーグもケーキも流れて来たし、
「○○のサビ抜きお願いします」と伝えるなど、
子供なりに大人と関わりを持てるのも面白かったようだ。
親はと言えば、一度取ったのを戻しては行けないとか、
食べられるだけの物しか取ってはダメとか、
お皿は重ねて綺麗にしておく、とかそれなりの躾も出来た。
味はと言えば、冷凍のご飯やネタはもろ見えだし、
ただ冷凍食品を組み合わせて重ね合わせるだけは分かっていたが、
冷凍技術は進んでいるし、働いているのは家庭の主婦が殆どだし、
普通に美味しかった。
回らないお寿司屋さんのカウンターに座るのは、
片手で数える位だったが、去年から、ひとりで時々奮発している。
この何年かの間、外食するよりも、
自分で作った方が美味しいんじゃないかと思うくらい、
食事に凝ったのがその理由だ。
つまり、美味しいものにお金をかける価値がある!
自分で作れないものを食べたい!
人の手が入っていて、しかも職人技。
家庭ではじっくり熟成させることもしないし、
あれほどの材料も、一度には揃えられない。
ひとりなのでカウンターになっただけだけど、思ったより気楽。
美容院のようにお喋りに付き合わなくてもいいし、
カウンターの向こうでは仕事をしているので、基本会話は最低限だ。
二つ隣の席のおじさまが「ご馳走さま、美味しかったよ」と、
大将に声をかける。
気安い仲の様子に取れたが、
その佇まいは静かで落ち着いていた。
こういう感じ心地いい。
漬けマグロは軽く周りを炙っていて、少しの辛子を乗せている。
白身魚に紫蘇の小さな花を乗せている。
ホタテが新鮮なものより硬いのは、柑橘系を絞っている?
ままごとのようなレモンが乗っている。
人の丁寧な仕事が入る食べ物は美味しい。
細かく切れ目の入った中トロに、生姜で醤油をつける。
イクラの入ったグラスには、芸術的な細さの海苔が
ご飯の上に敷かれてあった。
小さい頃のおままごとが洗練されて、目の前に現れたようで面白い。
土をこねて、泥水をつくって「はい、コーヒー牛乳です」みたいに。
2つ隣の席に、アースカラーのコート姿の若い女性が座る。
30代に見える。
慣れた様子で「生ビールと莫久来」と簡素に告げる。
次回はアルコール無しでいいから、あの一品を頼んでみようと思った。
回転寿司のメカトロ(メカジキのトロ)だって、
かなり美味しくて捨てがたい。
美味しい贅沢はワクワクする。
「ばくらい」とは、ホヤとこのわた (ナマコの腸)で作る塩辛・珍味のことで、漢字では「莫久来」と書きます。 その名前の由来は原料のひとつである「ホヤ」の形が「機雷 (きらい)」に似ていることから由来していると言われています。
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![野原 綾](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/116212282/profile_6510399791a1a8fa821b437daebc2b7c.jpg?width=600&crop=1:1,smart)