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なぜ技能実習ではなく、特定技能なのか。

2021年7月2日、共同通信から下記報道がありました。

すごくシンプルにいうと、「技能実習は外国人を搾取する在留資格だ」という内容です。

アメリカだけでなく、世界のさまざまな国々から技能実習という制度は批判を受けてきた経緯があります。

そこで今回は、技能実習が生まれた日本の背景と、技能実習の延長線上に新たに創設された「特定技能」について私見を交えながら解説していきます。

38万人_技能実習の概要

結論、技能実習とは就労ではなく、日本でしか学べないような、高いレベルの「技能」を「実習」するための制度です。

にもかかわらず、多くの日本企業は彼らを人材として扱い、その上で実習だからと十分な賃金や標準的な生活環境を与えないという事実が多く浮き彫りになってきました。

現在では約38万人の外国人が「技能実習生」として滞在しており、うち4割がベトナム国籍、3割が中国国籍の外国人が占めています。

技能実習制度のカンタンな歴史

ということで、そもそも技能実習っていつからできて、外国人にどんな仕事をしてもらっているの?っていうところから説明します。

技能実習制度が開始されたのは1993年です。当時は「外国人研修・技能実習制度」という名前でした。研修とついている通り、外国人に技術を教育する側面が強い制度でした。

実はこの頃から、問題は生じていました。

前述の通り、実際は労働をしているにもかかわらず研修生であるという事実から、労働基準法に抵触するような扱いが報道されるようになりました。

2009年に入管法が改正され、「技能実習」という在留資格が設けられました。研修期間がなくなり、現在の技能実習制度の原型がここで形作られました。

具体的には、技能実習生であっても労働基準法の対象となり、残業も認められるようになりました。

2017年にさらに入管法が施行され、技能実習生をより保護できる体制を整えるために、「外国人技能実習機構」が設立されました。

つまり、技能実習制度の利用が厳格化されたということです。ただし、その一方で3年間から5年間へ実習期間が延長され、対象となる職種が追加されるなど、技能実習生自体は数を増やしていきたいという側面も見て取れる法改正となりました。

結論、外国人技能実習生に劣悪な環境を強いて、労働させるという構図自体は本制度が何度改正されてもゼロにはなりませんでした。

なんで改善されなかった?

外国人→お金を稼ぎたい
受入企業→安価で長時間働く労働力が欲しい

結局上記構図が変わらなかったからだと考えています。
技能実習制度は新興国の外国人向けにできた制度のため、やはり現地で働くよりも実習で日本でお金をもらった方が「稼げる」背景がありました。

受入企業側も、労働基準法でしっかり守られた日本人を雇用するよりも、実習制度を利用して安価な外国人に働きにきてもらう方がコスト的に旨みがあると考えるケースが少なくありませんでした。

この両者の思惑が合致し続けていたからこそ、常に需要と供給が存在していました。

NHK「ノーナレ」の特集も当時かなり話題になりました。

https://www.imabaritowel.jp/wp/?p=4984

約2万人_特定技能

技能実習制度が根本的な問題解決を成さないまま、2019年に創設されたのが特定技能でした。

2021年3月末時点で、22,000人の特定技能外国人が誕生しました。昨対比で566%の増加率という急拡大中の在留資格だといえます。

全ての反省を活かす!

そんな意気込みがあったかどうかは知りませんが、技能実習で課題とされてきた問題を全て実務レベルで解決しうる在留資格として誕生したのが特定技能です。

これまで通り新興国向けの在留資格ではあるものの、外国人は日本人と同じ雇用条件での「就労」が認められました。

更には外国人が適切に雇用されているかを指示・監督し、場合によっては入管に通報する役割を担う「登録支援機関」が原則必ず外国人支援を行う決まりとなりました。

特定技能の現状

コロナの状況下で増加しているのが、技能実習から特定技能へのビザ切り替えです。

特定技能は原則、技術の試験と、日本語試験を合格する必要があります。

ただし、技能実習で一定期間を修了した外国人は、同業種であれば特定技能へ試験合格無しでビザ変更することが認められています。

これこそが、特定技能が技能実習の延長線上にあると考えられる理由です。

今後日本人自体の人口は常に減少していきます。もちろん労働者も減少します。日本政府としてとりうる政策は3つです。

・日本人の数を増やす (出生率を上げる)

・減少した人口に見合った経済に抑える

・減少した人口を補い、経済活動を維持する

一つ目は現実的ではないため、省くとして、日本は明らかに最後の選択肢を取ったことが制度の変遷を確認いただけたら、わかると思います。

特定技能の雇用枠は2024年までに34.5万人が受け入れ上限とされています。つまりあと3年で32万人を受け入れることができるということです。

結論:なぜ、いま特定技能か

結論、技能実習と比較して制度として成熟しつつある「特定技能」で外国人を雇用する方が、コンプライアンスを重視する受入企業にとっても、日本でバリバリ働きたい外国人にとっても合法的で安全だといえます。

もちろん特定技能についても今後改善点が出てくると思います。よりよい制度を必要なところへ提供する支援を行う。それこそが僕たちExstanの使命だと考えています。

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