【原書講読感想】『ムーミン谷の仲間たち』「目に見えない子(Berättelsen om det osynliga barnet)」①
半年くらい前の話になりますが、スウェーデン語のグループレッスンで私ともう一人の受講者の方がそれぞれ読みたいスウェーデン語の本を少しずつ講読することになりました。
一緒にレッスンを受けている方は、アストリッド・リンドグレーンの『やかまし村の春・夏・秋・冬(Mer Om Oss Barn I Bullerbyn)』から、「やかまし村のクリスマス(Hur Vi Firar Jul Bullerbyn)」を選びました。冬に読み始めたので、私もクリスマスの準備をしている気持ちになりました。そしてハムを食べたくなりました。←現実は何もしていません。
私は、『ムーミン谷の仲間たち』から「目に見えない子(Berättelsen om det osynliga barnet)」を選びました。去年はムーミンバレーパークでこのお話がショーになっていたので個人的にはタイムリーな話題でした!
週1回の授業で二つの作品を何ページかずつ読みましたが、難しいところにつっかかって進みが遅かったり、教科書に戻ったこともあったり、休みもあったりで、最近やっと読み終えたので、感想を書きます。
一度にたくさん書く自信がないので…感想①として、日本語訳ではわからなかった「ムーミンっぽさ」について書いてみます。
その前に、「目に見えない子」とは?
その前の前に、言わずもがな、ムーミンの原語はスウェーデン語で、文も挿絵もヤンソンが書いて(描いて)います。『ムーミン谷の仲間たち』の原題は、”Det osynliga barnet och andra berättelser”(目に見えない子とその他の物語)で、「目に見えない子」はこの本に収められた9つの短編のうちの1つです。
物語の主人公である「目に見えない子」すなわち「ニンニ」は、今作にのみ登場します。この作品は、おばさんから皮肉をたくさん言われて姿が見えなくなってしまったニンニがムーミンたちと過ごして姿が見えるようになるまでを描いています。
ニンニは、『ムーミン谷の仲間たち』の表紙に描かれている子です(ピンクの方)。
動物の「足」
ニンニは、人間のような姿をしています。でも、「足」を表すスウェーデン語を見ると、人間とは違う印象を持ちました。
人間の足は、スウェーデン語で「fot」ですが、ニンニの足を表す単語は「tass」です。tassは、「動物の足」を意味します。挿絵を見ると、ニンニの足は潮干狩り用の熊手みたいで、確かにfootではないようなイメージです。日本語では人間も動物も「足」で、日本語訳でも「足」となっているので、原書を読んで感じたことです。
ムーミンは「妖精」とよく言われますが、『ムーミン谷の十一月』の訳者あとがきによれば、ヤンソンはムーミンたちこのとを「varelse」と言ったそうです。
varelseを辞書で引いてみると、levande företeelse med egen handlingsförmåga det vill säga djur eller människa (eller fantasiväsen)、
直訳すると、「独自の行動能力を持つ生物 つまり動物または人間(または空想上の存在)」です。
個人的にはこのあいまいさが好きなので、私はムーミンを妖精とは言いません。(でも妖精だという人に違うとも言いません。)
※参考にしている辞書:svenska akademiens ordböcker
鼻=顔
ムーミンは鼻が特徴的ですが、彼らの顔を表すときに鼻「nos」という単語が使われています。やはりここでも、人間の鼻を意味する「näsa」ではなく、動物の鼻を意味する「nos」になっているところが面白いです。
さらに面白いのは、足が見えてきてまだ顔の見えないニンニについてのムーミンパパの台詞です。
これは原書だと以下のようになっています。
パパはニンニの顔のことを「鼻」と表現していました。日本語訳では「nos」の訳は「顔」になっていたので原書を読んでこの面白さに気づきました。
それでは、今週はここまでにします!きっと感想②も書くはず。
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