【スウェーデン語】ムーミン谷の自然:荒れ地(ödemark)とジャングル(djungel)
先週、フィンランドセンター主催の文学サロンに参加したことを書きました。
そこでは、日本語とスウェーデン語(トーベ・ヤンソンの母語・創作言語はスウェーデン語)で『ムーミン谷の十一月』の冒頭の朗読を聞く時間がありました。日本語で朗読されたのは旧訳で、私は2020年に刊行された新訳を見ながら聞きました。
その時に、旧訳では「ジャングル」となっている箇所が、新訳では「荒れ地」となっていることが気になりました。
↓ 旧訳
↓ 新訳
原文を見てみると、該当する単語は「ödemarken」です。
↓ 原文
英語では「wasteland」、日本語では「荒れ地」なので、新訳のほうが辞書的に正しい訳です。文脈を考えてみても、ジャングルはおもに熱帯地方を指す言葉なので、寒々とした風景にはちょっと違和感があり、荒れ地のほうがしっくりくるように思います。
「ジャングル」についていままで何とも思っていませんでした。鈍い私を反省…。
ödemarkenの不定形ödemarkをスウェーデン語の辞書で調べると、mark som saknar spår av mänsklig närvaro eller verksamhet(人間の存在や活動の痕跡がない土地)とありました。
ちなみに、ジャングルはスウェーデン語では「djungel」で、この単語は『たのしいムーミン一家』(Trollkarlens hatt)で使われています。ジャングルが出てくるのは、まほうのぼうしに入った植物が成長して家の中をジャングルにしてしまう第5章です(原書ではp.88-111、日本語訳は新版だとp.124-160)。そういうわけで、荒れ地とジャングルはムーミンのお話のなかで使い分けられている言葉のようです。
蛇足です。日本語訳で「もみの木の林にかこまれた」「もみの木の深い緑の森にかこまれて」となっている箇所は、原文ではunder den mörkgröna väggen av granskog(もみの木の森の深い緑の壁の下で)となっているのが面白い表現だと思いました。針葉樹林はたしかに壁みたいなイメージです。
それではまた来週。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?