おかづのカットは マッシュルーム
「聞いてない…! おかづがカットか?」
「言うたやん!さっき言うた」
「いつ~?…踊りながら?💃…」
…保護犬シーズー(名はおかづ)…
「大事なことは踊りながら言わんといてくれ…心の準備がある…」
………………………
と言っても…拒否出来るわけなく、予約があるのでと…車に乗せられた…。
「朝から言ってたやろ…カットあるって…」
母さんの腕の中でぷるぷる震えるおかづに優しく言ってくれるが、あのムヒ鼻先事件で記憶は吹っ飛んでいた…。
「そりゃ、父さんが悪いなぁ…。鼻先にムヒってなぁ…。あほやなぁ…」と、笑う。
どっちもどっちなのだが母さんはいつも優しい…。が、車が揺れると…、
「あっぶないな~…気をつけて運転してや~」
と父さんに対しては厳しい…。
「なんでカット嫌なんかなぁ…? 大丈夫やでおかづ、台に乗ったらすぐよ…」と運転しながら父さんが言ってるが…、
ぷるぷる…ぷるぷる震えるおかづには、のんきな言葉は何の役にも立たない…。あの台に乗るだけでも嫌なのだ~。
体の動きを止められ、バリカンで切られる…。誰か好きな奴がいるか…?
……………
色んな匂いと多くの人の集まるホームセンター…。
母さんが、「予約のおかづです。あの…サマーカットで…お願いします。まつげはそのままで。……。はい、お願いします」
店員さんと母さんの簡単な話が終わってしまう…。
「…。はい、分かりました…。では、18時位にお越しください…」 「よ~し、さぁ…おかづちゃん…乗るよ~」
台の横でぷるぷる震えるおかづは「待って!」と、あがく…。「今日は、なすがまま…にされるから1つお願い…いいですか…?」
「“なすがままに”…って“Let it be”でしょ?」
「なら、ビートルズ…。 なら、マッシュルームカットでしょ…?」
「…。」
「お願いします…。」
「…。」
店員さん…一瞬止まったものの
笑顔でカットが始まった…。
ステージに上がるつもりが…
まるでまな板…