メモ:スクリーンリーダーのシェアとその推移
noteで久しぶりのウェブアクセシビリティネタ。
去る8月10日(日)に福岡で、アクセシビリティの勉強会"Accessibility Step Vol.01"が開催されました。
遠方ですのでtwitterにて、現地にいる方たちがハッシュタグ付きで呟いてくださっている会の内容を追いかけているうち、スクリーンリーダーに関する情報で気になることがあったことに端を発し、そこからスクリーンリーダーの利用状況等話をtwitter上で複数人の方とやり取りすることができました。
その時のまとめは、togetterに作ってあります。
なお、Accessibility Stepの主旨等については主催の方がnoteに書いておられますので、そちらをご覧ください。
面白そう! 機会があれば行ってみたいです。
視覚障がい者とパソコン
支援ソフトと補助制度
視覚障がい者がパソコンやスマートフォンなどICT機器を利用する際に使用するスクリーンリーダー、画面拡大ソフトといった支援ソフトがあります。支援ソフトの利用率は、障害の程度の重さによってあがります。
スクリーンリーダーは音声で画面を読み上げ、画面の一部または全体を拡大表示する画面拡大ソフトは弱視のかたに使われています。
この他に支援ソフトとしては音声ブラウザ、検索支援、読書支援他、利用者のニーズにあったソフトがいくつかあります。
参考: 東京都障害者IT地域支援センター 支援ソフト一覧
スクリーンリーダーは、後述する一番シェアの高いPC-Talkerで38,000円(税抜)、他社のものですとNVDAのように無料で使えるもの、ビジネスの場などで使えるもので10万円を超えるものもあります。
なお購入については障害の程度の重さによって、自治体等から補助が出ることがあります。
障害者総合支援法に則った制度で、「日常生活用具給付制度」という言葉で検索すると引っかかりやすいです。
厚生労働省 日常生活用具給付等事業の概要
この中でパソコンやスクリーンリーダーのようなソフトは「情報・通信支援用具」となります。ただ、この「日常生活用具給付制度」は支給の条件、金額や利用期間に限りがあります。お住まいの自治体や地域によって異なりますが、一例をあげると次のようになります。
情報・通信支援用具(パソコン周辺機器)‥基準額100,000円 耐用年数5年(分割)
情報・通信支援用具(アプリケーションソフト)‥基準額153,360円 耐用年数6年(分割)
新宿区は比較的条件が良いように感じました。因みに当方が居る地域では、情報通信支援用具は「パーソナルコンピューター周辺機器及びソフト」として一括りで基準額(10年合算)100,000円という条件でした。いくつかの自治体しか確認していませんが、10年合算100,000円は他にもありました。
スクリーンリーダーのシェアとその推移
スクリーンリーダーに関する調査報告として参考になるものとして、視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット・パソコン利用状況調査2013(新潟大学 渡辺哲也先生)があります。
全文資料が掲載されているURL等は新潟大学学術リポジトリで確認できます。
視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット・パソコン利用状況調査2013
ありがたいことに、この調査(類似含む)は過去にも何度か行われています。
・視覚障害者のWindowsパソコン利用状況 2000
・視覚障害者のWindowsパソコン及びインターネット利用状況調査2002
・視覚障害者の携帯電話・パソコン・インターネット利用状況調査2007
ICTの一般への普及と同様に視覚障害者にとっての活用方法も広がりが見られ、私自身のこの調査順に追って見てきましたが毎回面白いです。
こちらを参考に、スクリーンリーダーに関するデータを拾ってみます。
なおnoteではtableタグが使えないので、見づらくなりますがご容赦ください。(ややこしい表より、いっそテキストのほうがスクリーンリーダーも行儀よく読んでくれるかと。)
なお同調査では、複数のソフトを使用しているかたがいることから、最も利用時間が長いスクリーンリーダーとして回答があったものと併用しているソフトを合算したものがグラフとして表示されています。2013年と2007年の数字はそれらを使用しています。
「最も利用時間が長いスクリーンリーダーとして回答があったもの」のみをデータから当方で拾い、カッコでくくって記載しています。
2013年
PC-Talker 85.3%(75.0%)
JAWS 18.3%(7.5%)
95Reader 9.5%(5.6%)
FocusTalk 8.7%(3.2%)
NVDA 6.0%(2.8%)
VDM 4.4%(4.0%)
※カッコ内が足して100%にならないのは、回答数が少ないソフトがありそれを省いているため
2007年
PC-Talker 68.2%(54.6%)
95Reader 36.4%(25.2%)
VDM 19.4%(13.8%)
JAWS 19.1%(5.2%)
CatWalk 5.5%(0.9%)
FocusTalk 4.5%(0.3%)
2003年と2000年調査では、職場におけるWindowsパソコンと自宅におけるWindowsパソコンの利用状況に分けていましたので、各々最も利用時間が長いスクリーンリーダーとして回答があったものを拾い合算しています。
また併用利用を含んだデータのため、一番使うソフトのデータが抜けませんでした。
2003年
95Reader 47.9%
PC-Talker 27.9%
VDM 20.7%
outSPOKEN 2.1%
JAWS 1.4%
2000年
95Reader 61.5%
VDM 23.7%
outSPOKEN 14.8%
※2000年調査には職場における Windows 用スクリーンリー
ダの利用状況のみにその他 2があるが、その数字は上記には含んでいない。
当方が確認できている最新のデータが2013年であり、その後5年経っています。個人的には無償で利用できるNVDAがもう少しシェアを伸ばしているのではないかと推測してます。自分自身も検証ツールとしてNVDAを使用しています。
以上、自分メモとtwitter上でのやり取りの補足を兼ねて。
関連情報
(了)
ヘッダー写真 撮影地 ニュージーランド ©moya