物語 | 珈琲の夜
「珈琲といえば」なんて言われても僕には何が何だかわからない。キリマンジャロだの、ブルーマウンテンだの言われても、コーヒーの種類なんだろうな、と思う程度である。スーパーで売っているようなインスタントのコーヒーを、スプーンで適当にカップに入れてお湯を注ぐだけで満足していた。
妻もそれほどコーヒーに造詣が深いわけではないが、書店に行って本を買ったら、よくカフェで読書していた。
「ねぇ、あなた知ってる?ここからそんなに遠くないところに、新しいカフェが出来たの。一度休みの日に、一緒に行ってみない?」
「でも高いんだろ?珈琲なんてインスタントで十分だろう?一杯何千円もする珈琲なんてカネのムダさ」
「でも一度くらい行ってみたっていいんじゃない?たまには高いモノを飲んでみないと、コーヒー本来のおいしさを理解出来ないでしょう?」
結局僕たち夫婦は、次の日曜日、一緒に新しくオープンしたカフェに行くことになった。
落ち着いた雰囲気の店内はなかなか心地よい。書店ではないが、本が棚に並んでいて気にいった本をゆっくり読むのも良さそうだ。
「いらっしゃいませ。お二人様ですね。こちらへどうぞ」
現れたのは、とても品のある女性だった。メニューは多くなかったが、とりあえずオススメの二杯のコーヒーを頼んだ。
「少々お時間いただきます」
「なかなかの美人さんですね。あなたのお好みの女性じゃないかしら?」
「まぁ、きれいは綺麗な人だけどね。若すぎるから、僕とは合わないかなぁ」
「あら、男なんてたいてい、若ければ若いほどいいんじゃないんですか?若さなんて、ほんのいっときのものですけどね」
「分かってるじゃないか。そうだよ、女なんて若けりゃいいってものでもないさ」
「お待たせいたしました。ごゆっくりおくつろぎくださいませ」
そう言い残すと、僕たちはまた、夫婦二人だけになった。
「何歳くらいだと思う。20代後半から30代前半くらいかしら?」
「さぁ、どうだろうね。それくらいかな?」
出されたコーヒーを僕たちはいっしょに飲んだ。
「やっぱりおいしいわね」
「そうだね。だけど、どうだろう?頻繁に来たいとは思えないな。何千円もコーヒー1杯にかけるのはねぇ」
「それもそうね。でも、またしばらくしたら、私は1人で来てゆっくり本を読むのもアリかな、と思ったわよ」
「それでいいんじゃない?僕はもうこれきりでいいかなぁ」
「それか、私たちが子どもを授かったら、また… …」
それからしばらく経った。明日、あさっては土日だ。
「あなた、今晩、どうかしら?今日はタイミングがいい、というか」
「あぁ、最近は、、、わかった。とりあえず風呂に入ってから」
風呂からあがると、すでに妻は下着姿になっていた。
「私はいつでも」
「わかった。すこし汗がひくまで待っていてね」
「待たせたね」
無言の合図で、僕たちはベッドの上で寄り添った。
僕はキスをしたあと、彼女のブラを外した。
彼女は僕の上のシャツをゆっくりと脱がす。
その時だった。
いつの間にか服の間に紛れ込んでいた、コーヒー豆が1つ、ベッドの上に転がった。
(おしまい)
フィクションです。。。
https://note.com/komaki_kousuke/n/n4025ce09a0b4
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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします