狐の嫁入り。
←前話
影に寄せられ更に闇へ、そのまた奥へと……皆が戸惑い無く寄せられてゆく様を、ややも穿った見方をするのなら “ 夏 ” と言うのは斯のよう理りを無下反する季節なのだろうか。
ーー
綿雲のままのお天道が夕立ちに育つまでを見なかった月夜は、雌日芝をさも大木かのように和がせていた。
……ポツリ、ポッ、ポツポツ
「れ、店までもたなかったみたいですね……折りたたみ傘なんて無いですよね? 雪乃さん」
ーー雪乃さんから聞いた話だ。
鬼灯と書いて “ ホオズキ ” と読むのだけれどね、碧白いソレが並んでいたのなら結婚式をする狐が人間に目隠をするよう月夜に雨を降らす……そんな祝い事のおとぎ話なのだけれど……それはね、後に贖罪に苛まれた者が逸話としたんだよ。
由来とされている話は “ 意中の殿方とツガイになれるからと騙されて雨乞いの生贄とされた雌狐の涙 ” なのだけれど……それだけでは昨今まで世界各地で語り継がれるには弱いと思わない?
ーー
“ 殿方 ” も存分と彼女を恋慕っていたんだ。そしてね、生贄ならば彼女では無く自分をと切に嘆願した。
狐の涙とされているこの大粒の雨がさ、慕う者の心を知り、尚殿方の村を救えたというモノだとするのなら、天隠すように傘をさそうなんてまるでもったいない事だと思わない?
「かような折、今は水月と二人なのだからさ」
……あぁ、“ キツネの嫁入り ” ですね雪乃さん。
少しだけ愛をください♡