夢ってなんだろう?
今回の内容は、朝ドラ『舞い上がれ』のネタバレを含みます。
ご注意ください。
NHK大阪放送局制作の朝ドラはだいたい見ている。
今回の『舞い上がれ』も見ている。
録画してだけど。
今のところ、ストーリーは順調で、誰が見ても、
「まぁ、いいんじゃないか」
という感じになっている(個人的感想)。
特に奇をてらったこともなく、わかりやすく、かつ、それなりに納得感のある仕上がり、というところだろうか。
昨日の回は、主人公の兄で現役東大生の悠人が東大阪の実家に帰ってきて、父親と対峙するシーンがあった。
悠人はこれまで家族からの電話にも出ず、家族は心配していたのだが、就活も成功し、株のトレードで2,000万円稼いだということだった。
父親の浩太は息子の悠人が大企業に就職できたことを喜び、
「3年の我慢や。3年すれば仕事の面白さが分かってくるようになる」
と悠人に話す。
悠人は、
「俺、3年したら辞めんねん。はよ独立したい」
と言う。
浩太は悠人に何か夢があるのか聞いたところ、
悠人は、
「秒で億単位を稼げるようになりたい」
とのこと。
それを聞いた浩太は
「それは夢やない」
と悠人の考えを否定する。
というような話だった。
このドラマを観ていない人向けにちょっとあらすじを話すと、
父の浩太は東大阪で町工場を経営しており、一時は経営の危機にさらされる。だが、困難な要求にもこたえて何とか耐えしのぎ、今では従業員を十数人雇えるくらいの中小企業になったのだった。
息子の悠人は父の工場を継ぐ気はなく、小学生のころから東大合格を目標に勉強し、現在東大生であることは上で書いた通り。
それで、僕はこれを観ていて、
「夢ってなんだろう?」
と思ってしまった。
僕は父親の浩太と息子の悠人の間くらいの世代だから、二人の考え方はどちらもわかる気がする。(悠人役の横山裕とは同い年だが…笑)
浩太の考えは正論ではある。
浩太はもともと飛行機を作りたいという夢を持っていて、飛行機産業の会社に入社したものの、もう少しで飛行機を作れるポジションになれるところで親の経営する工場を継がなくてはいけなくなり、会社を辞めざるを得なくなる。
それでも、今でも飛行機の部品を何とか自社で作れないだろうか、というような夢を持っている。
この浩太の夢は世の中の人にしてみれば結構応援したくなるようなものかもしれない。
その理由を考えたのだが、実業であること、世の中の役に立とうとしていること、等が挙げられると思う。
一方、「秒で億単位を稼ごう」としている悠人だが、株のトレーディングで巨万の富を得ようとするのは、世間的には何となくいいイメージを持たれないかもしれない。
お金を稼ぐこと自体が目標になっているから。
それは自分の利益になることはあれ、世の中の役に立つことではない、というイメージはある。
ただし、お金があれば、お金を必要としている人に投資することも可能であるし、お金を持っているからこそ持てる夢だってあると思う。
なので、僕は悠人にそこまで否定的ではない。
今の日本で大企業の会社員となったところで、あまり先行きは明るいとも思えない。
このへんは世代によって捉え方が違うかもしれないが、もう日本は経済成長しないのだ。
経済的に潤いたいのであれば、金融投資もポートフォリオに入れるのはどちらかと言えば普通のような気もする。株で儲けるにもそれなりの労力はかかる。
父の浩太は、工場の経営が傾いたところから立て直し、従業員を十数人も雇えるようになったわけだが、これは凄いことだ。
だれでもできるようなことではない。
なので、普通に浩太は凄いと思う。
実際に役立つものを世の中に供給しているわけでもあるから。
ただし、何度も言うが、町工場を健全に経営して、それなりの規模にするのは誰もができることではないし、「飛行機を作る」という夢は誰でも持てるものでもない。
実際には、特にこれといった夢も見つけられず、低賃金に不満を言いながら、その日暮らしをしている人の方が多いかもしれない。
そういうリアルな世界を思ったときに、浩太の、
「コツコツ頑張れば、デカい夢もいつかは叶う」
という考え方は綺麗事に聞こえてしまうのも、ある意味仕方ないのかもしれない。
けれど、綺麗事でも正論だとは思うし、そのように思えるなら、コツコツ頑張って成功した方がいいのだ、とも思う。
父の浩太と息子の悠人、どちらが正しいということもないが、悠人は稼いだお金をどう使うのか、というところまで考えてほしいな、とは思う。
自分の生活を潤わせるのはいいのだが、ただそれだけだとむなしい。それだったら浩太のほうがいいなとは思う。
社会の役に立て、とは言わないけれど、お金を稼ぐところで夢が終わっていたら、それは未完ではないだろうか。
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