自社ブランド「ramgu」のロゴマークができるまで
前回は、アイヌの伝統を取り入れた生活道具ブランド「ramgu」のコンセプトについてお話をしました。
前回の記事はこちら↓
今回はramguのネーミングとブランドロゴができるまでについてのお話をします。
ネーミングについて
「ramgu」はアイヌ語と日本語を掛け合わせた造語で「ラムグ」と読みます。
※正確には「ム」は小文字になり、アイヌ語の発音では口を閉じた「ん」に近い音になりますが、一般的には難しいので「ラムグ」とそのまま発音しています。
「ラム」=アイヌ語で魂や心を表す言葉
「グ」 =道具の「具」からきています。
ブランドコンセプトの「こころ宿る道具」が先に決まっていたので、それを表現できるようなネーミングにしたいと言うことで、あれこれ言葉の候補を出した中で、響きが良くて、海外の方でも発音しやすい「ramgu」に決まりました。
アイヌ語のみだとネガティブな意味を含む言葉も多いのと、よく使われるようなアイヌ語(例えばカムイやピリカなど)は既に他社のブランドなどでも多用されていることから、オリジナリティを出すためにアイヌ語と日本語を掛け合わせた造語にすることになりました。
SNSで検索されることも想定し、「ramgu」と言う言葉のブランドが他にないことや、他国の言葉でマイナスイメージとなるような意味を持たないかなども確認した上で決定しています。
当初、候補としていた他のネーミングを一部公開します。
※これはあくまで私が提案した言葉であって、代表の萱野のアイヌの目線で精査してもらう前のものになります。
こう見ると、「ramgu」が一番発音しやすく、かつコンセプトを体現したいい名前だなと我ながら思います。
ロゴマークのデザインについて
ロゴマークについては、これが私が手がける初めてのロゴデザインだったので、なかなかの難題でした。
最初は「こころ宿る道具」というコンセプトをロゴマークで表現しようと思っていたので、ステートメントにもあるように、大切にしている3つのこころの「3」という数字や「こころ」に絡めたデザインを考えていました。
初回のデザイン案がこちら
これを代表の萱野に提示したところ、返ってきた返事は「どれもアイヌ文様として違和感がある」という言葉でした。
その頃は、二風谷ワークスに参加して間もない自分にとって、何がアイヌ文様らしくて、らしくないのかという微妙なニュアンスが理解できておらず、おまけに3という数字に囚われすぎていたため、アイヌ文様が奇数と相性が悪いということも理解できていませんでした。
奇数と相性が悪いというのは、アイヌ文様が基本的には垂直または並行に線対象であることと関係しています。つまり、2や4は線対象として描きやすいが、3や5、9といった奇数になった途端、斜めに対象となることが多く「ニヴフ」や「ウィルタ」といった別の民族の文様っぽくなってしまうとのことだったのです。
その後も別のアイディアを考えましたが、コンセプトに囚われすぎるとうまくいかないということに途中で気がつき、一旦白紙に戻して一からロゴマークを考えることになりました。この時点で2ヶ月以上は経っていたと思います。
限界を超えた先に、突然降ってきたアイディア
他の仕事が手につかなくなるくらい何日も悩みあぐねて、もう私にロゴデザインは無理だ・・・と諦めてシクシクと泣きながらベッドに横になっていた時。
何気なくPinterestを見ていたら、アルファベットを組み合わせたシンプルなロゴマークの画像が出てきました。
「これだ・・・・!!!」
直感的にそう思った私は、その場にあった裏紙に鉛筆でスケッチをしました。その時のメモがこちら。
ほぼ現在のロゴの原型になっているかと思います。
「ラムグ」の頭文字「ラ」のrとaをアイヌ文様で組み合わせており、全体の形も四角っぽくてどことなくイタのような形を表しています。
※イタとは代表的なアイヌの民具で、丸や四角い形をした木彫りのお盆のこと。
シンプルで分かりやすく、ロゴだけでも存在感があってかっこいい。これはいけるぞ!と翌日社内に提案したところ、満場一致で即決となりました。
完全な線対象というわけではないのですが、それが逆に新鮮で、代表からも「アイヌの伝統と現代の新しさがかけ合わさったいいロゴですね」といった言葉をかけてもらったことを今でも覚えています。
デザインはこういうことが度々起きます。考え尽くしてもうこれ以上出てこない・・・という時にポンっと思いついたものが採用されたりする。おそらくこれは、それまで懸命に向き合ってきた経験とアイディアの蓄積が頭の中に張り巡らされた時、偶然結びついて生まれると考えています。
ひたすらインプットとアウトプットを繰り返すことが、いいデザインを生み出す。そんなことを経験させてもらったロゴデザインでした。
以上、3回にわたって「ramgu」のブランドについてお話しました。
ご覧いただいた方、ありがとうございます!