社会的排除ってなに?
「社会的排除」という言葉を最近よく耳にするように思います。
社会的排除を端的に説明するのであれば、「あってはならない状態」を指します。具体的にどのような状態が「あってはならない」のかについては、後ほど詳しく説明しましょう。
社会的排除という言葉は、なにが「あってはならない状態」なのかを示す概念です。同じように「あってはならない状態」を示す概念として、「貧困」があります。社会的排除も貧困の文脈から派生し、現在では様々な文脈において、文字通り「排除」を表す言葉として用いられるようになっています。
「貧困」は先進国(であるとされている)日本でもホットなトピックです。貧困の割合などがニュースで示される場合、「相対的貧困」という概念がしばしば用いられます[1]。
相対的貧困についての説明は省きますが、「相対的貧困には当てはまらないけど、あってはならない状態」を説明するのが「社会的排除」という理解でいいでしょう。
EUが示す社会的排除の説明を見てみましょう。
すなわち、所得の欠如という状態だけが「あってはならない」なのではなく、社会への十分に参加できる状態が欠如している状態も「あってはならない」ということです。つまり、所得の保障だけではなく、権利の保障までもが必要という理解でいいかと思います。
貧困に詳しいかたはご存じかと思いますが、いわゆる「絶対的貧困」から「相対的貧困」、そして「社会的排除」へと「あってはならない状態」の考え方が社会とともに変化していったのです[3]。
さて、「社会的排除」の対として「社会的包摂」という言葉があります。これら二つを併せて、社会的排除/包摂として議論されることもあります。
志賀信夫(2022)『貧困理論入門――連帯による自由の平等』堀之内出版