【伊勢型紙】見習い日記②
小刀を研げる職人は貴重。
1.型おこし
前回に引き続き、型おこしが伊勢型紙において一番大事な作業ということで、もう一度別の図柄で作りました。
ちなみに、横の長さが一致+縦の長さが不一致。
この場合は、縦の長さをどっちかに統一して、対角線も一致させた長方形にする。
カーボン紙で図柄をなぞるときは、色ありのほうがいいそう。黒だとどこをなぞったか分からなくなってしまうから。
2.小刀の研ぎ方
①小刀は自分で作るのだ!
鋼を購入し、研いで、柄の部分は糸鋸で真ん中を切って鋼を差し込み、糸で巻きつけて固定してできあがり。
②研ぐのは難しいのだ!
<刃が右側の場合>
親指中指で支えて、人差し指で刃の端っこを押さえて小刀の柄は右にして研いでいく。
<刃が左側の場合>
親指で刃を押さえて、小刀の柄は左にして研いでいく。
・小刀について
小刀は鋼(はがね)でできている。
1本17~18cmで研いでも一生のうちでなくなることはない。
一般的に新品の鋼を購入して刃を作るのに1時間以上かかる。
鋼の硬さが硬いと研ぐのに時間がかかる。しかし、鋼は硬ければ硬い方がいいというわけではない。
小刀は持ちての部分が錆びてくるので、半年に1回、紐を解いて、錆を落とす。
小刀は柄によって使い分ける。
○刃の角度がゆるい小刀→大きい柄を彫るのに向いている
○刃の角度が急な小刀→細かい柄を彫るのに向いている
・小刀の柄の部分について
柄の部分はお箸だったり、竹だったり、手持ちが自分の持ちやすいもので作る。
・砥石(といし)について
砥石は3種類。
*粗砥(あらと)・・・粗目の砥石。刃が折れたときやよほど切れ味が悪いときに粗砥を使って刃を研ぐ。粗さは200番。(※頻度少なめ)
*中砥(なかと)・・・粗さは800番。色は茶色目。
*仕上砥(しあげと)・・・粗さは1000~2000番。(※頻度高め)
(ちなみに砥石は100均にも売っていて意外と使えるそう!!)
研ぐときには、水をつけて研いでもOK!
粗砥で研いだ場合、目詰まりしてしまうので、水をつけてやったほうがいい。粗砥が目詰まりした場合は粗砥を洗えば問題ない。
粉が広がらないのでおすすめだが刃が錆びやすいので要注意!
研ぎ終わったあとは必ず油を塗る。
職人によるが、刀の切れ味は柄にもよるが半日やったら仕上砥で研いでいるそう。デザインカッターの場合は、研ぐ必要はなく、新たに刃を変えればOK!
3.割り箸を使って研ぐ練習
割り箸を使って研ぐ練習をしました。
刃の左は問題ないが、右はまだまだ平らになっていない・・・。
感覚も全く掴めていないので、練習あるのみ。
▼横から撮影
▼刃の右側
▼刃の左側
4.彫り作業
自宅で彫り作業を進めていたけど、引き彫りと錐彫りの箇所がある場合は、錐彫りから先に彫っていくのが基本らしい!
理由としては、引き彫りを彫っていくと、浮き上がって破れやすいため。錐彫りは重りをのせてやると浮き上がらない。
※重り=書道の道具で皮で包んでいる文鎮、皮巻文鎮(鉛でできた重り)
普通の文鎮を使うと刃が負けてしまうが、皮巻文鎮は、皮に包まれているから刃が傷まない。
▲錐彫り=丸(○)の部分から先に彫っていくのが基本!!だけど・・・
引きぼりでお花の部分も彫ってしまった~~~
錐彫りが全て終わったら、裏返してボコッとなっている部分を爪でならしていく。染めるときに出っ張った部分が邪魔になるからだそう。
5.用語・学んだこと
・型紙の横幅について
<帯や着物>
1反の生地の幅は約40cmが主流。昔は女性の体の大きさが小さかったから、35~36cmが主流だった。昭和で作られている型紙は35~36cmは出てこない、もし見ることがあれば古い江戸時代に作られたもの。
<手ぬぐい>
90cm~110cm前後が主流。1反の生地を10本とるか11本とるかで長さが変わってくるが、染屋さんによって何本とるかは異なるそう。110cmだったら130cmの枠が必要。手ぬぐいの依頼があった場合は、染屋さんに「幅が何cmですか?」と聞くこと。(手ぬぐい用の型紙があるので、それを使うと楽!)
・型紙は乾燥に弱く、湿気にも弱い。
そのため、一時しのぎとして油を塗る。布に染み込ませて型紙の裏から油を塗る。油はサラダ油などでOK。
いくつか図案や型紙を重ねて彫るときは、油を一枚ずつ塗り全部塗って重ねて彫ると彫りやすい。小刀にも油がついて滑りがやくなるし、錆びにくい。
・東京にいる伊勢型紙の職人たち
現在5人ほどしかいないそう。平均年齢も70歳以上ということで、後継者がいないというのは問題ですね。素晴らしい技術がなくなってしまうのは悲しすぎる。
6.最後に
小刀を研げるということは、職人の証だということ。
今では職人の数も少なく、その中でも小刀を研げる人も少なくなっているらしい。5年近く生徒さんで研いでいる方がいらっしゃるみたいだが、それでもまだ研げるようになっていないそう。それだけ難しい作業。小刀を研いでもらうためにわざわざ研げる職人さんの元に訪れる人もいるらしい。いくら商売道具の小刀を買ったとしても、研いで刃を作る必要があるし、刃が折れてしまったとき、切れ味が悪くなったときには、研いで修復するしかない。結局研ぐ技術を習得できなければ、商売道具の小刀は使い物にはならないのだ。
今日は、彫りの練習のために素敵な柄のしおりいただきました!
可愛すぎる~!!!綺麗に彫れるように頑張るよ~😄