これだけは大人も知っておきたいZ世代のメディア事情。
マーケティングに携わる方々は頻繁に耳にしているであろうキーワード「Z世代」。この「Z世代」は1996~2012年生まれを指しており、彼らは現在の7歳から23歳までにあたります。対して、1980~95年生まれを指す「ミレニアル世代(Y世代)」は現在の23歳から39歳まで。ちょうど境目の95年生まれである私は、どちらの感覚も持ち合わせているため、上の世代に向けてZ世代のトレンドやインサイトを通訳することが得意だったりします。
ミレニアル世代とZ世代
イントロダクションとして、私が考える「ミレニアル世代」と「Z世代」の女性に対照的な3つのポイントがこちら。
まず、Instagramの普及とともに定着した、ヴィジュアルの質で直観的に評価する感覚「photo genic(インスタ映え)」は、InstagramストーリーズやTikTokの普及により「movie genic(ストーリー映え、動画映え)」へと変化しています。これまでインスタ映えとして愛されたような、局所的に可愛いフォトブースや、正面だけ拘り抜かれたアイテムは、Z世代にとっては少し物足りない存在です。最初から最後まで、全方位どこから見ても、こだわり抜かれていること。ビフォーアフターの物語性があること。これがZ世代の求める「movie genic」の条件です。
ふたつめに、第三者として「いいね・フォロー」してアイテムを購入していた「empathy(共感)」の感覚は、より共同的に変化しています。芸能人も、ブランドも、メディアも、ごく普通の女子高生も。SNSにおいては平等ないちユーザーなのです。したがって手の届かない存在という感覚、第三者としての感覚は薄れており、「empathy(共感)」するだけでなく共同的に「support(応援)」するのです。投稿することや、投稿コンテンツを創造することへの関心度や実行力が高まっているため、フォローするだけではない、CDを買い占めるだけではない、より高度な応援消費をしています。
みっつめに、「suit me(私に合っているか)」という感覚に寄り添ったカスタマイズ商品がこれまで盛り上がりを見せてきましたが、この感覚もより共同的に変化し「suit us(私たちに合っているか)」という文脈で評価されるようになっています。たとえ自分自身が同性愛者でなくても、身体障害がなくても、マイノリティを含む"私たち"に合っているかどうか、という視点で「評価」、というよりも「批評」するのです。
この3つのポイント、冒頭の説明だけでは理解できない方もいらっしゃるかと思いますがご安心ください。最後まで読み終えた後には理解できるはずです。疑問点があればお気軽にご質問くださいね。それでは参りましょう。
Z世代のメディア事情
昨年、アメリカ国外初の開発拠点を日本に置いたInstagram。日本市場に注力しているInstagram責任者のアダム・モッセーリ氏は、戦略として「Z世代ファースト」を掲げています。若いユーザーがSNSを育てているのだから当然の戦略ですが、片時も忘れてはならない事実です。デジタルコミュニケーションの重要度が増すばかりである昨今のマーケティング。各SNSのマーケティング戦略の理解は、有効なデジタルコミュニケーションの設計に繋がります。たとえ、あなたがZ世代をターゲットとしたマーケティングに従事していなくても、Z世代の理解なしにSNSの理解は不可能ともいえます。(だから他人事と思わずに読み進めてくださいね…!)
同時に彼は「TikTokが競合」とも明言しています。昨年世界でダウンロードされたアプリランキングにおいて、InstagramなどFacebook社のアプリが上位を占める中に割り込んで2位にランクインしたのは「TikTok」でした。Instagramでは、ミュージック機能の追加、発見タブでのストーリーズ表示、ARフィルターの充実、ハッシュタグ表示におけるフォロワー数の形勢逆転など、TikTokに対抗するためのアップデートが日々進んでいます。これらのアップデートがなぜZ世代にとって喜ばしいのか、Z世代はいまInstagramに何を求めているのか、が理解できなければInstagramが今日起こしている波に乗るコミュニケーションは設計できません。
これらを踏まえた上で、各メディアはZ世代にとってどんな存在か、改めて言語化していきます。
YouTubeは「集中するためのツール」であり「耳だけ暇なときのコンテンツ」(もちろん目が暇なときも)。視聴に集中するときも10秒スキップしながら、「コスパをよくするアクション」を常に怠りません。そして意外と多いのが「商品検索」。知らないYouTuberでも、登録者数の少ない投稿主でも、商品名でヒットしたら使用感を確かめるために視聴するのです。
Instagramは「連絡するためのツール」や「自分を語るためのツール」であり、「完全に暇なときのコンテンツ」や「リアルを確かめるコンテンツ」でもあります。10年前は連絡先として交換するのはメールアドレスで、センスは携帯電話のストラップやデコレーション、制服の着こなしやヘアアレンジなどリアルに表出するものでした。いまは連絡先として交換するのはInstagramのIDで、センスはアカウントページのファーストビューに表出するものになりました。したがって「周りからセンスがいいと思ってもらう材料にはならないからファーストビューには残したくない、けれどリア充度の貯えにはなる」ような一時的な投稿を可能とした、アーカイブ機能やストーリーズ投稿は日本のZ世代による利用率が突出して高いのです。また、保存機能の定着や発見タブの改良によって「ググる」や「立ち読み」といったアクションもInstagramにリプレイスされています。
Twitterは「災害時のためのツール」や「オタ活をするためのツール」であり、「シェア消費」と「ひとり消費」の両方をする場所です。画像や動画での投稿に慣れ親しんだZ世代は、Twitterに対してコンテンツを投稿するメディアとしての認識は薄いです。一方で、即時性のあるSNSとしての価値はますます高まっており、今回のコロナの影響でTwitterを初めて利用したユーザーが多いです。(コロナの影響については近日中に詳しくお伝えします!)
TikTokは「自分を試すためのツール」であり「完全に暇な時のコンテンツ」です。クリエイティブ欲求を満たすSNS、という点ではInstagramと近いですが、「自分を語る」のではなく「自分を試す」という感覚が大きく異なります。動画は編集が難しい上にリア友と繋がっているInstagramには投稿しづらいコンテンツだったのが、TikTokは編集から投稿まで容易にできて、尚且つ個性的なクリエイターが愛される場所であるため、日本のZ世代が「自分を試すツール」として使うようになりました。また、ユーザーごとの視聴傾向からおすすめを表示する独自のアルゴリズムや、連続的に15秒(~60秒)のコンテンツを表示するテンポのよさをもつTikTokによって、「受動的な好感認知」がZ世代にとって当たり前になってしまったように思います。これに伴い「テンポのわるい強制認知」はますます逆効果となりそうです。
最後に、コロナの影響でZ世代ユーザーが増加しつつある音楽配信サービスについてです。「集中するためのツール」であり「耳だけ暇な時のコンテンツ」であるため、競合メディアはYouTubeとなります。CD時代より簡単に無数の音楽を生活のBGMにしているZ世代がいま、ループ系のLo-Fiミュージックが愛されている理由として、そのBGM性の高さが考えられます。
コンテンツ本位の評価
これらのメディアを、シェアレベルとアクションレベルによってマップ化すると以下になります。後進のメディアほどシェアレベルとアクションレベルがより高度になっています。どのメディアも、コンテンツや機能によってシェアレベルとアクションレベルを上げたり下げたりすることで、まだまだZ世代に寄り添える可能性を感じます。
例えばテレビの場合。座談会にて「好きな番組は?」という質問に対してあがったのは以下で、どれも全世代から愛されている人気番組とは言えません。番組の母体であるチャンネル自体が好き、という声もありませんでした。共通項はシェアレベルとアクションレベルの高さ。ただ視聴するだけではなく、友達に「これ面白いよ!」とリアルタイムでシェアし、気になる出演者のSNSアカウントを検索してフォローやコメントといったアクションをとる、ここまでがZ世代にとってのテレビの楽しみ方なのです。
少しメディアから離れてみましょう。SHIBUYA109lab.さんの「好きなファッションブランド」についての調査によると、1位は男女ともに「特になし」という結果になっています。「好きなブランドだからこの服が好き」、「好きなチャンネルだからこの番組が好き」、「好きなYouTuberだからこの動画が好き」といった傾向よりも、「コンテンツ自体で評価する姿勢」や「コンテンツの母体に対する関心の低さ」が全体を通して伺えます。
文字にすると長くなってしまいましたので、初回は以上で終わりたいと思います。Z世代の理解や何かのヒントに少しでも繋がっていれば幸いです。ご質問やご要望等ございましたら、お気軽にTwitterのDMまでご連絡ください!
今後の更新予定
・10代女性への新型コロナウィルスの影響
・JKトレンドから紐解くインサイト
・オタクでクリエイターなZ世代
・Z世代を魅了する3つのメソッド など