真夜中、春キャベツ
布団に入って3時間。
時計の針が差すのは午前2時過ぎ。
一旦何もかも諦め、常夜灯のスイッチを切り替え、部屋を明るくする。
冷たい麦茶を飲んで、キッチンに立つ。
昨日、授業終わりにスーパーで買った春キャベツが冷蔵庫でお行儀よく待っているのを、おもむろに取り出す。
あとはまな板の上、包丁を右手に、思うままに切っていく。
真夜中、静かなキッチンで、ざく、ざくざくと音がする。
包丁から伝わる振動が心地いい。
ただ白紙のノートに文字を書いたり、キャベツを切ったり、トイレを掃除したり。
キャパオーバーになりそうなとき、これらの単純作業は、それをしている間だけは頭を空っぽにしてくれるから好きだ。
切ったキャベツをボールに入れ、ぽん酢とごま油を適当に加えてあえていく。
しゃきしゃき、ボールから溢れそうだったキャベツは、混ぜている間に少しずつしなしなになって、そのかさが減っていく。
これは明日の、というか今日の朝ごはん。
卵もあるし、冷凍してあるごはんも、インスタント味噌汁もある。
朝ごはんのメニューが決まったところで、あくびが出た。
なんだか少しすっきりした気持ちで、ボールにラップをかけ冷蔵庫にしまう。
もう一杯麦茶を飲んで、布団に入る。
ちゃんと体が沈んでいくのがわかる。
寝れそうだ。
もう5月。
真夜中、共にするのが春キャベツなのもあと少しなのが名残惜しい、そんなことを思いながら、息を吐いて体重を布団に預けた。
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