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母の役割


父の世界では母も役を与えられていた

与えられていたのか
自ら望んで演じていたのか
それは彼女にしかわからないが


彼女は崇拝的に父を愛していた
やはり父の言うことは絶対で
父の言葉を私たちに伝えるときも
どれだけ父が偉大で私たちのために愛情を注いでくれているかを
伝えるべき言葉よりも大事なこととして
事あるごとに言われてきた


少なくとも私は
彼らから温かい愛情を感じたことはない
条件付きの愛情でしかなかったし
条件を満たさなければ逆に存在を否定されたから

彼らの愛情が偽物で
彼らの言葉は常に偽善的にしか感じられなかった


母は父の望む役割をとても上手に演じていたと思う

私の精一杯の反抗には
悲劇のヒロインになって
私を非難するように自殺騒ぎを起こした

私は彼女にとっても悪者だったのかもしれない

でもそんな行動も父のシナリオのアドリブとしては父をとても喜ばせた

意気揚々と母を苦しめているのは私だと
私を責めて否定してきた


母は何をするにも父の意見がなければ行動できなかった
父の前と私の前とでの態度はもちろん違ったし
自分をヒロインに仕立て上げることにとても長けていた

それがきっと父の望む母の役割だったのだろうと
今では思う



父は母をとても愛していて
母も父をとても愛していた


その愛情がどんなものなのかは
私にはわからない


誰かのシナリオの人生に入れてもらうのではなく

自分の人生と相手の人生とが
うまい具合に並んだり重なり合ったりして
支配されることのない
監視されることのない

自由な心で愛情を感じたい


父とも違う
母とも違う


私だけの私なりの愛情を感じて



生きていきたい




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