Oxford MBA 夏学期(Long Vacation)と帰国前の振り返り
1年間にわたるMBA留学が終了し、先日無事日本に帰国しました。
このnoteでは、MBAを締めくくる7月〜8月の夏学期(Long Vacation Term)と、9月の卒業式から帰国までの出来事を振り返ります。
EIT Foodでのインターン
この7〜8月は、EIT Foodという組織でインターンをさせていただきました。EIT Foodとは、ヨーロッパのフードシステムの変革を目指すEU傘下の非営利組織(European Institute of Innovation and Technology/欧州イノベーション・技術機構)の食料セクターです。EIT Foodは産官学をつなぎ、サステナビリティ、栄養、食糧安全保障などの課題に取り組んでいます。特に私がインターンをしたEIT Food Educationでは、食農セクターのイノベーションに貢献する未来のリーダーやスタートアップの育成に焦点を当てています。
以下は私のOxford MBAに出願した際のエッセイの一節です。
「I want to create a system for food sustainability that supports many farmers, fishermen, and consumers by promoting collaboration among governments, large corporations, and social enterprises.」
多様なステークホルダーと協力しながらフードシステムの課題解決をしていくEIT Foodは、まさに私がぼんやりと考えていたことを体現している組織でした。そのため、ここでインターンをできたことは私にとって光栄なことでした。
私がインターンで担った主な役割は、EIT Food Educationの今後7年間の資金調達サイクルに向けた戦略策定のサポートでした。EITの各組織に対するEUの助成金は段階的に廃止されるスキームになっているため、それを見据えて財政面で自立していくことが求められていました。そのため、いかに外部の助成金への依存を減らしながら、EIT Food Educationの社会的インパクトを維持・拡大するか、ということが主なテーマでした。具体的には、市場分析、社会的インパクト指標の見直し、既存の施策評価と今後の収益確保に向けた提案などを行いました。
ヨーロッパ中の国々から集まった、食料・農業の領域にパッションを持った多様な人々と一緒に仕事をできたことはとても良い経験になりましたし、そこで同僚や上司から高く評価してもらえたことは自信にも繋がりました。また、多くのステークホルダーと一緒に大きなゴールに向かっていく面白さを感じると共に、これまで私が働いていた日本のスタートアップとは全く異なる環境で、物事の進め方など色々な難しさを感じたこともいい経験でした。
Capstone(卒業式)
9月上旬には1週間弱にわたりCapstone(卒業に向けた一連のイベント)が行われました。入学したばかりの時には見ず知らずの他人だった300人以上のクラスメイトが、見かけたら気軽に声をかけられる関係になっていることに気づき、この1年間でこれだけ多くの人と関係を築くことができたことに驚きました。伝統であるガウンを来てSheldonian Theatreで卒業式に出席することもでき、オックスフォードの卒業生になるということの重みも感じることができました。
すでにオックスフォードの友人たちと散り散りになって1ヶ月近くが経ちますが、SNSでやり取りをしたりしているので、あまり物理的な距離は感じません。気軽に会うことができない寂しさはありますが、今後の再会を楽しみにしたいと思います。
食農のサーキュラリティについてのサマースクール参加
9月上旬にオックスフォードを離れてからは、ヨーロッパの様々な国を巡っていました。
主な活動の一つとして、EIT Food Educationが提供するプログラムの一つである「Inspire - Circular Agrifood」というサマースクールに参加しました。2週間の全体オンラインセッションの後に、1週間ポルトガルのArrudaという農業地域で泊まりがけの研修があり、フードシステムのサーキュラリティ(循環性)に興味がある、15カ国20人ほどの人が集まりました。
比率としてはPhDの学生がやや多かったように思いますが、食農のサステナビリティ関連で働くプロフェッショナルや起業家なども集まっていました。私のチームはベルギー人、トルコ人、ガーナ人、フィリピン人、私という構成で、グループワークではFrassという昆虫を飼育する際の副産物を活用するビジネスアイディアを考えてピッチしました。国籍もバックグラウンドも違う中でリーダーシップをとってプロジェクトを進めるという、MBAの経験を大いに活かすことができ自信につながりました。
オランダ・サーキュラーエコノミー研修
同じく9月には、『サーキュラーエコノミー実践: オランダに探るビジネスモデル』著者の安居さんが主催するサーキュラーエコノミー研修にも参加させていただきました。3日間の研修の中で、水に浮かぶコミュニティ・Schoonschipや官民一体となった実験区・De Ceuvelなど、オランダの先進的な事例の数々を訪問しました。オランダの人々のクリエイティビティ、それを実現可能にする行政の姿勢、コミュニティの参加を促す仕組みなどを間近に見ることができ勉強になりました。
また農業の文脈では、施設園芸における研究・教育等で世界をリードするWorld Horti Centerにも6年ぶりに訪問しました。展示がよりサステナビリティ寄りになっていたり、AI活用もより普及していたりと、たったの数年でもアグリテックを巡る文脈が変わってきた様子を見てとることができました。
アウシュヴィッツ博物館の訪問
アウシュヴィッツは、留学中に絶対に訪れたいと思っていた場所でした。運良くアウシュヴィッツ唯一の日本人ガイドである中谷剛さんのツアーに参加することができ、迫害を受けたユダヤ人の方々の状況に思いを馳せるとともに、なぜ私たちと同じ人間がここまで残忍な行いをすることができたのか考えました。
中谷さんのお話の中では、近年話題になった『関心領域』と『オッペンハイマー』の共通点としてあえて一方の視点しか映していないこと、そしてその危険性を多くの人が認識するようになった時代の変化について言及されていたのが印象に残っています。人々の分断をどのように防ぐことができるのか、というのは私の人生の中でも引き続き考えていきたいテーマであると再認識しました。
そのほか旅行
8月にはリモートでインターンをしながらスコットランドのエディンバラに滞在し「フリンジ」という世界最大の演劇祭で、涙あり笑いありのパフォーマンスの数々を楽しみました。
帰国前には、ずっと行きたいと思っていたスイス・アルプスとコペンハーゲンにも旅行しました。スイスの山や湖は想像を絶する美しさで、アルプスの山々に囲まれた谷の狭間の村は桃源郷のようでした。また、コペンハーゲンでは街を自転車で巡る中で、都市デザイナー・ヤンゲールさんの「人間中心のまちづくり」の思想を体感することができました。ここまで自由な時間を確保して行きたい場所に行くことができたのも、留学してよかったと思うことの一つです。
以上が夏学期から帰国までの振り返りでしたが、MBA1年間の簡単な振り返りも以下のnoteにまとめました。もしよろしければこちらもご覧ください。
過去のnoteはこちら
▼MBA留学の経緯
▼1学期の振り返り
▼2学期の振り返り
▼3学期の振り返り
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