夢の天秤

誰もが微笑む　小さな手を握り
しあわせを辞書で引くと出てくるんじゃないかって
くらい朗らかな　春の午後みたいな家族が
交通整備のバイト中　目の前を横切る

あんな未来も描ける今が　この時間が
この世で一番　苦しい

諦めなければ叶う夢と　諦めれば叶う夢
天秤に掛けても目なんか覚めないのに
夢想家が夢みるのやめたら　何者になるんだろうね

財布が寒くなると　心も寒くなって
ぬるま湯すら有難いほど暖かく感じる
逃げるわけじゃなくて　歩くのをやめるだけ
たったそれだけで　こんなに離れるものなんだ
夢も友も時間も、別にかけっこなんてしてないのに

何もしてないのがこわくて　焦って手を動かす
何も出来上がらなくても　手を動かした達成感がある
何も手に入らなくても　経験は裏切らないと信じて
何もやらないよりはましだと　言い聞かせても眠れないな

久々に観た　いつだって熱をくれた先輩
鬱屈な影で輝いてたあの人　いまはただの酒飲み
諦めなかったやつらじゃない　諦めたやつらの末路だろ
冷めた歌なんかやめろ　ぬるま湯に浸かりながら呟く

そんな風に通りすがる　あなたへ

諦めなければ叶う夢なんて正直に言うと幻想だ
諦めて叶う夢もあるけれど　それだって幻想だ

でも知ってたでしょ

みるひとがいないと　夢は生きられないよ
夢を諦めるのは　殺すことになるんだよ
そうやって自分で背負ったんだから
倒れるまでは　その夢はあなた自身だ

目が霞んで、耳も遠くなり、声が出なくなって
手が痺れ、足が動かなくなったら　ちがう
そうなる前に　名前を呼んで　手どころか魂まで貸すから

夢を現実に変える魔法使い　そんな面白い人たち
それがあなたの正体で　それがあなたの生涯だ

そんな魔法を信じる人間だっていること　忘れないで
天秤なんて　捨てていいよ