人魚は浴槽で横たわる
欲したものは全て手に入らない
自我を願い 歩くための足を望んだ
歌と言葉を失い 絶望と身体を得た
ああして人魚は夜な夜な
誰にも届かない難儀を以て人体を着る
欲したものは全て手に入らない
遂行を願い 進むための道を望んだ
心と静謐を亡くし 絶望と鳥目を得た
そうして人魚は夜な夜な
誰にも届かない憂悶を以て義務を為す
欲したものは全て手に入らない
安眠を願い 終わるための末を望んだ
足と道を逸して 希望と静穏を得た
こうして人魚は夜な夜な
誰にも届かない惨痛を以て瓦斯を嚥む
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