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下北沢に行った日

この日はまず、心療内科に行った。
2回目の診察だった。前回とは違う先生。

1回目の診察から10日ほどが経ち、調子は今も上がったり下がったりだった。
先生に薬は効いているかと聞かれて、効いているか分からないがとにかく毎日眠くてしょうがないと伝えた。

薬を飲み始めてから、家にいる時に無性に眠くなって1〜2時間の昼寝をしたり、電車の中で気付いたら寝ていたり、夜ソファで寝落ちをしたりと、そんなに体力は使っていないはずなのに充電が切れるように寝てしまうことが増えた。

人は不安なことがあったり憂鬱な気分になると不眠の症状が出るというのはよく聞くが、それと同様に過眠の症状が出ることもあるそうだ。
今の私の状態だと、その眠さが薬の副作用なのか、それとも鬱の症状が強くなっているのかがはっきりと分からないため、一旦薬をストップして様子を見ることになった。

今も頭の中で色々な考えが巡り自分でもよく分からないまま泣いてしまうことがあるが(よく考えてみたら一日一回はあるかもしれない)、それを薬で止めるのではなく、とにかく今はそういう時期なのだと割り切って一旦受け入れる。そうして様子を見ようという判断だった。

その日の午後、下北沢に出かけた。
下北沢は学生時代によく行った馴染みのある街だが、再開発されてから全く知らない街になった。再開発後初めて訪れた時、「これが本当に下北なの??」と思うくらい街並みが変わっていた(もちろん、昔ながらのお店が残っており変わらぬ風景で私を安心させてくれるエリアもあった)。

だが、私は新しい下北沢をとても気に入っている。地元の人がどう思っているかは分からないが、若者や外国人観光客も増え、街全体として活気があって良いと思う。大きなビルがあるわけでもなく、グルメや雑貨、服など様々なジャンルの個性あるお店が点在しているので、散歩をするのにぴったりだ。

下北沢と世田谷代田を繋ぐ道には緑がいっぱい


この日下北沢に来たのは、APFR(アポテーケフレグランス)という日本発のフレグランスブランドの規範店とB&Bというセレクトや見せ方が素敵な本屋さんに行くことが目的だった。

このように一人で出かけた時、私は初めていくお店や飲食店に入るのが苦手だ。飲食店の場合システムが分からない(席に案内されるのを待つべきか、先に席を取るべきか、はたまた食券制なのか等々)のに不安があり、その他のお店でも店員さんにやたら話しかけられたりしないか、他のお客さんと比べて浮かないか(?)等余計なことを考えて不安になってしまうのだ。こういう自分の一面を「気にしすぎ芸人」と言ってきたが、今考えてみると社交不安障害だからなのかもしれない。

というわけで、この時は行ったことのあるお店にしか行かなかった。

駅に着いてまずAPFRに向かった。ここでは何十種もある香りを嗅いで試すことができるが、私は以前友人と訪れた際に全ての香りを嗅いで自分のお気に入りが「Endress Summer」と「Fig」ということを把握していた。
「Fig」のお香を今愛用していて、それが無くなりそうになってきたので別の香りのお香とディフューザーも買おうと思っていた。

久しぶりにお店に来たのでもう一度香りを嗅いでみると「Endress Summer」は結構甘いフローラルな香りで、少し香りが強く感じた。前回来たときは「これ一択!名前も最高!」と思ったのに、その時によって感じ方が変わるものなのだな。今年の夏は暑さが酷かったので、この名前にも手放しでは賛成できない。

また全ての香りを嗅ぐのは面倒なのでその周辺の香りをいくつか嗅いでみると、「Oakmoss&Amber」という名前からだと何の情報も得られない謎の香りが、お花や草などの植物の香りに柑橘系のフルーツエキスを少し足したような香りで気に入った。

もう少し他の香りも試してみようかと思ったが、お客さんが多くさっさと決めてしまいたい気持ちになったので、常に部屋に置いておくディフューザーは「Oakmoss&Amber」の香りにして、気分転換したい時にたまに焚くお香は「Endress Summer」の香りにした。


OAKMOSSもAMBERも何だか分からないが良い香り


2点で11,000円。分かってはいたが、高い。

部屋を一時的に良い匂いにするためにこんなにお金がかかるなんて、恐ろしい世の中だ。
でも今の私にとって自分の周りの環境を良くすることは最重要項目なので、投資だと思ってケチらずいこう。そう自分に言い聞かせることによって、散財の罪悪感を少しでも減らしたいという魂胆だ。


その後、世田谷代田方面に歩いて本屋B&Bに行った。

本屋さんには「目的達成型」と「偶然の出会い型」の2種類があると思っているが、ここのお店は完全に後者だ。
最近の私は、SNS等で気になる本を見つけて「この本が読みたい→その本を手に入れることを目的に本屋さんへ行く」という流れが多かったので、「何か本が読みたい→良い本に出会えそうな本屋さんに行く」という行動を取るのが久しぶりだった。

というのも、ここ数日、私の推しているK-POPグループが炎上しており(悲しくも、アイドルにとって炎上は日常茶飯事なのだが)、SNSを開くと見ているこちらまでダメージを喰らってしまうような攻撃的な言葉がどうしても目に入ってしまうので、少しデジタルから離れたい気分だった。

そのため、何か気分が紛れるような、あるいは憂鬱な毎日を脱するためのヒントになるような本と出会えたら良いなと思いながら、ジャンル別に陳列された本を見ていた。

が、暑い。

この日は気温が25℃ほどまで上がり、お店に着くまでの徒歩ですでに若干汗ばんだのだが、店内は恐らくクーラーが効いておらず、汗っかきの私にとっては本のタイトルが目に入らないくらい暑く感じた。

店内を見渡すと一人のご婦人が扇子で仰いでおり、こんな素敵な本屋さんにいながら心の中で「暑い暑い!」と大騒ぎしているのは自分だけでないことに少し安心した。

暑いしざっと見たところ気になる本がなさそうだったので今日は帰ろうかなと思ったが、帰るにしてももっと暑い外にまた出ないといけないので、もう少し自分を落ち着かせようと思い店内をもう一周した時、見覚えのあるタイトルが目に入った。

「私が望むことを私もわからないとき」

少し前にTikTokでこの本の中の文章を載せている人がいて、気になっていたんだった!

私は暑くてしょうがない店内で、一つの答えを見つけたような気分になった。

韓国のエッセイ集です

この本の存在を忘れていたのに、こんな完璧なタイミングで私の前に現れるなんて。タイトルもまさに今の私にぴったりだ。暑いからといってすぐに帰らなくて良かった。諦めなければそこに答えは見つかるんだ!

そんな壮大なことを考えながら、本屋さんの楽しさを噛み締めた。暑い暑いと言ってごめんなさい。

家に帰って早速お香を焚きながらその本を読んだ。
お香もディフューザーも良い香りでとても満たされた気分になった。

ディフューザーの香りに含まれている「Amber」が今使っているハンドクリームにも入っていることに気付き、「私はこの香りが好きなんだな、というかこれは何から取れる香料なんだろう?」と思い調べてみたら

甘いような塩っぽいような、複雑な香りが特徴的なアンバーの本来の名称は「アンバーグリス」。マッコウクジラの腸で生成される結石のことを指し、動物的、また塩っぽい香り、ビャクダンのような甘さやたばこのような香りなど、複数の香りを混ぜ込んだような特徴的な芳香を持ちます。

https://www.karumoa.co.jp/suvaliteair/column/amber/


く、クジラの腸の中にある結石…!?
もちろん今香料として使われているのは合成香料だそうだが、何とも複雑な気持ちになった。

ちなみにoakmossはナラの木の表面につく苔だそう。私は結石と苔の香りを嗅いで癒されていたのか…

そして本屋さんで運命的に出会った本はというと、

前書きを読んだだけで、寝た。

決してこの本が眠気を誘ったわけではない。薬の副作用か、鬱症状のどちらかだ。

私の「自分との戦い」はまだまだ続く…


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