見出し画像

可愛い子に旅をさせるオランダと過保護な日本。 やめ太郎、子育て論を大いに語る。

先に言っておこう。

今から”やめ太郎が学生時代に死ぬほどお世話になった先輩家族をちょっとだけディスることになる”けど、どうか許して欲しい。

個人的にその先輩や家族を嫌いになった訳ではない。
決してバカにしている訳ではない。

むしろ先輩を心から尊敬している。

ただ、”あるオランダの家族と比較したときに同じ日本人として非常に残念というか、何だか悲しい気持ちになった”と言う話だ。

その結果としてちょっとディスった形となっている。けど許して欲しい。

言い訳はここら辺にして、さあ行ってみよう。


やめ太郎が大学生だった頃、既に社会人になっていたT先輩(男性)に死ぬほどお世話になっていた。

仕事がない休日にはT先輩の車であちこちのB級レストランに食べに連れて行ってもらったり、読んでおくべき漫画やアニメ、雑誌など多くの事を教えてもらった。

きっと奢ってもらった金額も数十万円。

学生からするとほんとに足長おじさん。

喋りも上手くて頭もキレる尊敬する先輩。それがT先輩だ。

T先輩にもし出会っていなかったら、やめ太郎の人生はきっと20%くらいつまらないものになっていただろう。それくらいの影響力。

社会人になってからは疎遠になっているものの、やめ太郎は崇拝し続けている。

最後にあったのは7年くらい前、あれは共通の後輩の結婚式だった。

その際もT先輩に対してだけは全く頭が上がらずに恐縮しまくっているやめ太郎の姿を見たやめ太郎の嫁さんが”引いていた”くらいだ。

松ちゃんを尊敬するスピードワゴンの小沢さんのような構図だ。

例えが悪いか。

それくらいリスペクトしている。

そんな先輩から去年の夏くらいに突如連絡があった。

「高校2年になる息子をオランダのお前の家に春休みの間ホームステイさせてやってくれないか」と。

秒で即答した。「勿論です」と。

「お役に立てるなら何なりと」と。


お世話になった恩を少しでも返すことが出来るまたと無いチャンスだ。


どうやら先輩の息子は英語に興味があって、大学受験が本格的に始まる前に”海外の生活や生きた英会話を体験したい”との事だった。

幸いオランダはどこでも英語が通じるし、フローニンゲンは3万人を超える大学生がいる学生街だ。

そして、やめ太郎は料理教室を通じてフローニンゲン大学に通う若い友達が多くいる。

オーダーメイドの短期留学プログラムを用意しようではないか。

滞在日や滞在中の英会話レッスンの段取り、飛行機チケットの予約などを先輩とLINEでやり取りしながら中身を固めていった。


あれは正月だっただろうか、ほとんど全てが決まった頃にT先輩から突如キャンセルの連絡が入った。

「韓国の旅客機事故を受けて、T先輩の奥さんが息子さんの渡航に断固反対している」との事だった。

子を持つ親として、心情はわからなくはない。

わからなくはない。

でも

よくある話だけど飛行機よりも電車事故、電車事故より交通事故の方が何倍も何百倍も死亡率は高いはずだ。

それを理解できないような奥さんではないはずだ。

邪推かもしれないけど、
それはきっかけであって本当は他にも理由があったり、
そもそも最初から反対していたところに事故が重なったのではなかろうか。

ただまあ”了解しました”と伝えてその話は終わった。

そしてくどいけど、そんな先輩家族の決断には何の文句もない。

それはそれ、である。


その数日後、

やめ太郎が娘と一緒にバスに乗っていると近所に住むオランダ人ファミリー(母親と娘さん)に遭遇した。

「ハーイ、やめ太郎元気?今から娘は高校の短期留学プログラムでバルセロナに3泊4日のホームステイに向かうところなのよ」と母親。

「バルセロナの高校の授業に混ざって移民政策や移民受け入れに関する課題とその対応についてディスカッションしてくるのよ、とってもクールでしょ」と娘さん。

そして、フローニンゲン駅までは母親がバスで送って行くけれど、そこから先は娘さんが1人でアムステルダム空港を経由してスペインに向かうとの事だった。

ふむふむ。

なんて立派な娘さんなんだろう。

オランダ人だって母国語はオランダ語。そしてまだ17歳の女の子が単身でスペインに行って同世代の学生とディスカッション。

素晴らしい。Amazing!!

んー、いや待てよ。

何だこの違和感。

??

何だか最近これに似た話があったような。。。そうだT先輩だ!!


しかし似たような話ではあるけれど似て非なるもの。

異文化生活を経験したいと言う本人の希望に沿って親が全てを準備する日本。

そして飛行機事故があれば反対して渡航をキャンセルする日本。

一方で学校のプログラムの一環とは言え単身海外の高校に乗り込んで英語でディスカッションをやってのけるオランダの高校生。


こりゃ日本はオランダに勝てないわ!!!

なんか世界の縮図を見た。

可愛い子には旅をさせろと言うけれどそれだけではない。

旅に向けたスーツケースや着替えの準備、電車の乗り換え、空港での搭乗手続き、ひとつひとつの新たな経験が全て学びなのだ。

飛行機事故があったから行くべきか、行かないべきか、その判断も学びだ。

日本の大多数の親はこうした成長の機会を過保護という名の触手でわざわざ摘み取っているのだ。

雑草や棘を抜かれた舗装路をあるくだけなら、労せず得るものもない。

やめ太郎が初めて就職した日本の大手企業もスイスに海外本部を持っていたけど、やめ太郎が30歳くらいで駐在した時に周りを見渡せば同世代の同僚なんて複数言語ペラペラは当たり前、おまけにビジネス経験というか社会経験も抱負、いかんせんディベートやディスカッションのような対話のシーンだと日本人なんて入る隙が全くない。

その理由がわかった気がした。

場数が違う、子供の頃から。

経験値の差。

苦労の差。

きっとそう育てられている。

日本では雨の日に近所の中学校や塾の前には送迎する親御さんの車が長蛇の列をなしていた。

ここオランダではどんなに土砂降りでも全員自転車でびしょびしょに濡れながら通学が当たり前だ。

T先輩の息子さんは飛行機事故のニュースを目にした時にどう感じたのだろうか。渡航反対という親の意見に対して本当に納得したのだろうか。

結局一度も顔を見ることはなかったけれど、

彼が飛行機に乗ってアムステルダムに降り立ち、こちらの学生と一緒にフローニンゲンの街を散策したりフローニンゲン大学で学ぶ学生たちと対話する様子を見てみたかった。

きっと春休みに大手予備校に通うよりも100万倍勉強になったはずだ。

いずれにしても数年のうちにまた海外滞在にチャレンジして欲しいと思う。

子育てには、時に子供と離れる事や、子供に試練を与えることも重要。

いつでも手を差し伸ばしていたのでは社会や海外にポンと放り出された時に対処できなくなってしまう。

そんなことを感じた出来事だった。

まあ、やめ太郎もまだ父親歴3年の若輩者ではあるけれど、

全てお膳立てするというのは子供の成長に資するものではないという事を深く胸に刻んだ出来事だった。

あー、お仕事したい。


いいなと思ったら応援しよう!