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世界一子供が幸せな国、と言われるオランダの医療の話

中山美穂さんの訃報を目にした。

やめ太郎が物心ついた時には既にアイドルというより歌手や女優さんとして活躍されていた。

今では懐かしいレンタルビデオ屋で岩井俊二監督の映画ラブレターを借りて観たのがやめ太郎が高校一年のタイミングだったかと思う。

その後、社会人になってから撮影地である小樽で1年働いたこともあって、何度か映画を見返した。

オランダに移住する前にも、それが目的という訳ではないけれど、別の撮影地である八ヶ岳にも何度か宿泊した事があった。

日本の実家には映画のサウンドトラックのCDまである。

そんな事もあって、あの素敵な映画音楽と雪の中に佇む中山美穂さんの横顔を写したジャケット写真はやめ太郎の記憶に深く残っている。

年の瀬だったり雪が降ると、ふとあの映画を思い出すことがある。

美しい映画だ。

今夜はきっと多くの方が彼女が遺した作品に思いを馳せている事だろう。

心よりご冥福をお祈りしたい。


さて、話がのっけからずれている。

今回はオランダの医療体制についてレポートしたい。

ひとつは嫁さんの通院について。

もうひとつは愛娘の疾患と小児にまつわる医療体制についてだ。


❶嫁さんについて

先日久しぶりに嫁さんが風邪で倒れた。

鬼の霍乱か知恵熱か。

1週間くらい熱が出たり治ったりを繰り返していたが咳が止まらず。

意を決してホームドクターを受診したところ、気管支炎だった。

映画ラブレターの主人公である藤井樹の父親は肺炎で死んでしまった。

風邪は侮れない。

嫁さんにはすぐに抗生物質を処方された。

診察代も薬代も全て民間の保険でカバーされた。

何事にも生産性と効率を追い求めるオランダのお国柄、病院でも薬局でも現金はおろかクレジットカードの支払いすら発生しないのである。

更に処方箋はメールだかシステムで薬局に共有されていたようで不要な紙の印刷物も発生しない。エコである。

日本で健康保険証やらマイナンバーやら病院でのクレジットカード利用推進やら議論があるようだけれども、ここオランダでは民間保険のカードを見せるだけだ。

国外に居るからと言って、日本の文句を言うのはやめ太郎の好むスタンスではないけれど、日本の医療現場ってやっぱり少し時代遅れなんだろう。

何とかもうちょっと受付や精算の手続きをスムースにすることはできないものだろうか。(日本で内科にお世話になった時は風邪引いてフラフラなのに何度もコンビニのATMに足を運んだな〜、あれは辛かった。)

日本国政府及び厚生労働省、どうにかしてほしい。

❷愛娘について

よくよく考えたらnoteで書いたことはなかったかも知れないが、やめ太郎の愛娘には生まれた時に口唇裂という疾患があった。

過去形で書いたのは何故かというと、生後3ヶ月でオペをしてもらって今では唇に少し手術跡が残っているくらいで生活や健康状態に何ら支障がないからだ。

あれは今から遡ること3ヶ月くらい前だった。

突然昼過ぎに保健所の保健師さんが我が家を訪ねてきた。

「ハロー、住民登録によると3歳の娘さんがいると思うけど娘さんに会わせて!!」と。

訪問の主目的は健康状況の確認、またワクチン接種状況の確認、及びDVの有無の確認だったのだと、今になって思う。なんせノンアポの訪問だったから。

20分程滞在した後に「では2ヶ月後くらいに保健所で健康診断とワクチン接種してね」と言い残して去っていった。

そして程なくして我が家にワクチン接種のお知らせ通知が届いた。

保健所では女医さんが身長・体重チェック、そしてワクチン注射をしてくれた。

問診時に「何か過去に病気や怪我したことある?」と聞かれたので口唇裂について告げると、フローニンゲン大学病院に口唇裂の専門チームがあるから、後で案内レターを送るから経過を把握する為に受診するようにとのことだった。

数日後、大学病院の診察日と時間が記載された通知が届いた。

そして今日、その大学病院を訪ねてきたという訳だ。

まずはその建物の大きさに驚いた。

通路なんて横幅10メートル以上あるのではないだろうか。

日本の大規模病院の通路の狭さや待合スペースと比べると雲泥の差だ。

とにかく広い、ゆったり、のんびり。

何だか落ち着いたホテルのエントランスのよう。

そして待合室の至る所に子供用のおもちゃや無料のコーヒーマシンが。

スーパーがテナントとして入ってる
さすが花の国
エントランスはクリスマスのイルミネーション
クリスマスのお菓子の特設売場もあるしカフェもある
広い院内の移動はカート
コーヒー飲み放題
待合室は空港ラウンジみたい
写真撮影の部屋はさながらスタジオアリスみたい
アートもある

診察室に入ってみると更にびっくり。

目の前には白衣を着た方が4人。

女医さんから「私は整形外科医、彼女は歯科医、彼は耳鼻咽喉科医、そして彼女はSpeech Therapist」と紹介があった。

口唇裂に関係するであろう医療のプロがそこに集ってくれていたのだ。

発声の確認や触診などを経て、「手術跡や発声に問題ない、何も心配いらない。でも年のため3ヶ月後に専門施設で聴力検査をしたいからもう一度受診すること。その案内レターはまた家に送るわ。今日撮影した写真やカルテは保管しておくからまた3年後に経過観察のためにここで会いましょう。」との事だった。

日本でオペしてくれた先生も6歳になった段階で再度追加の手術が必要かどうか見定める必要があると言っていた。

その為に、娘が6歳になる前に日本への本帰国はマストだと考えていた。

この4人の専門家曰く、オランダでも6歳で再度経過観察して、追加手術が必要なら7歳か8歳での手術が適当だと思う、そしてオランダでも口唇裂の治療に関する費用は無料だから安心して欲しい。との話があった。

日本でもオランダでもオペは可能ということで選択肢が増えた訳だ。

移住者にも、そして子供に対して本当に優しい国、オランダ。

保健師による家庭訪問、保健所の医師による的確な健康管理と適切な専門職への襷リレー、専門職による更なる診察。

一気通貫とはまさにこのことではないか。

なんてクレバーでスムースでストレスフリーなんだろうか、オランダの医療現場。

どんな子も取りこぼすことなく公平に医療を提供する。

子供の健康と幸せを守る。

そんな気概すら感じる。


なお、娘はこの大学病院を病院というよりアミューズメントパークか何かと勘違いしてすっかり気に入ってしまったらしく、「パパ、また来ようね」と言っていた。


きっとそういう事なんだろう。


あー、お仕事したい。





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