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ep.57 雷鳴を恐れながらも待っている
溶ける、というより、丸焼き。灼熱ですね、今週。暑い暑いと言ってしまうと、夏のやつに負けたみたいでくやしい。どうにか愉快に過ごしたいのだけれど、どうやったらこの熱波を”おもしろ”に変換して生活できるの…。
こんばんは。たまです。あなたはご無事ですか〜!せめて涼をお届けすべく、直近に摂取した冷たくて甘いものを添えておきます。
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見えなくなるまでかけたグラノーラ🥣
ここは、小さなラジオブース、あるいは寝る前の談話室。水曜日は「生活の日記」と「今夜の1曲」をお送りします。
生活の日記
ゴロゴロと低音で響く音が窓の外から聞こえる。カーテンを細く開けて覗いてみると、雨がざあざあ降り出している。音の正体は雷鳴だった。
雷は決定的な稲妻を落とすことはなく、分厚い雲の上で、ピカッピカッと光を放っている。その不規則に放たれる光は、まるで壊れた蛍光灯のよう。
そういえば。19歳、ひとり暮らしをしていた夏の夜も、こうしてベランダのガラス戸とカーテンの間に入り込んで、じっと眺めていた。ぽつんと取り残されたような孤独感をどこかで感じながらも、ついでに稲妻が見られたらラッキーだな、なんて呑気に考えていたように思う。
悲観的なのか、楽観的なのか。曖昧な本質は今もあまり変わっていない。
向かいのアパートの窓で、住人がしゃっとカーテンを閉めて電気を消した。そっか、もう23時。わたしも寝ようと思いたち、テーブルに出しっぱなしだった2リットルのペットボトルを抱え、冷蔵庫にしまう。
ベッドに転がってからも、まだ雷鳴が遠くに聴こえた。猫が喉をゴロゴロ鳴らす音とリンクする。なお、猫と暮らしたことはないので、ここでいう猫はわたしのイマジナリー猫になる。
目を閉じても考え事が止まない。ぼんやりとした焦燥感から抜け出せない今日みたいな夜は特に。とはいえ、暑さ和らぐころにはこのもやもやもなんとかなるかもしれないねえ、とすっとぼけている自分も同時に存在している。
そのとき!雷に打たれたように人生は動き出し……!
……ってことは起こらない。タイムトラベルさせてくれるドクもいない。じたばたするしかないのだ。じたばたなら、今もしている、毎日じたばた、だからたぶん、だいじょうぶ。
心の夏バテは、のぼせそうな夏の積乱雲みたいなものだしさ、とそれっぽく言い聞かせてみる。高気圧と低気圧、悲観と楽観が入り混じって、雷の夜は更けていく。
今夜の1曲
The Sound of Music より My Favorite Things を。
何年経ってもおまじないみたいな音楽。「お気に入り」を心に持っておけば、怖さや不安につぶれそうなときも、I don't feel so bad と歌うに至れるんだなあ。
このシーンの直前に、雷が怖くなったキッズたちがひとりひとり順に、マリアのお部屋へ逃げ込んでくるところも可愛くて好き。大人1名もよければ追加させてほしい。ぽいっと投げ出してとことこ逃げ込みたい夜が、わたしたちにもあったっていいと思うから。
この行き詰まっている夏も、終わるころには喜劇だったな、と笑い飛ばしたい。奔走して、ぐったり休んで、お水しっかり飲んで、まずは週末に辿り着こう。
今日もおつかれさまでした。あなたも、わたしも。