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ep.71 でも、まずはごはん食べよ それから話そ

ざわざわと良くない感情が渦巻いている。そういうできごとはなぜだか続いてしまうもので。凪のような人でありたいと思うのに、一層そうは問屋が卸さない。まったく、自身の喜怒哀楽の目まぐるさに、自分でさえもいつも追いつけない。

こんばんは。たまです。こんな夜は、もやもやに飲み込まれてしまう前に、なにか食べて、推しの写真でも見て、少しでも穏やかにぐうすか眠りたいという所存です。


ここは、小さなラジオブース、あるいは寝る前の談話室。水曜日は「生活の日記」と「今夜の1曲」をお送りします。


生活の日記

なにかを聞き間違えたのかと思った。

高校1年生の夏の終わりのことだった。次の曲の練習まで、部室で休憩していたときだったと思う。同じパートの女の子たちでおしゃべりしていたら、ふたつ上の先輩が「もうすぐだね、たのしみだよね、新米……」と呟いたのだ。そう、米の話だったのだ。

「わたし、何杯もおかわりしちゃうの、新米おいしいから」そうふくふくとした表情で彼女は続ける。んまあ大人!とわたしは密やかに閃光を走らせていた。

だって、あのサツマイモでも栗でもりんごでもなく?!白米を秋の味覚として楽しみにしているなんて!そんなのあまりに大人すぎるでしょう!

脳内にはあれこれツッコミが駆け巡っていたのに、わたしはほかのみんなと並んでふにゃふにゃと笑っているだけだった。ほんとうは「え〜っお米が最初に浮かびます〜?!」とかしょうもない茶々を入れたかった。言える仲になりたかった。もっと仲良くなりたかった。なのに、素直さと勇気がいつもなかった。

同級生が「やっぱりお米ですよね〜!おかわり〜!」なんておどけたので、先輩もにこにこ小躍りしていた。ふたりは、うちら食いしん坊ユニット組もうよ、といつも盛り上がっていた。

もっと好きなものも嫌いなものも知りたかったのに、あっという間に秋になって、新米がスーパーの店頭にならぶころ、先輩は部活を引退した。

あれからもう十何年経つのに、新米の季節が来ると、チクっと胸が痛む。あの青い気持ち、片想いみたいな切ない時間を思い出しちゃう。

先輩、お元気ですか。美味しいお米食べてているかな?わたしは今日、今年の新米はじめましたよ。

つやつやをいただきます



今夜の1曲

IU 아이와 나의 바다(My sea)を。

幼い自分、過去の自分を愛せない夜に贈る音楽。そうやって歩き出せなくなってしまう日も、どうしてだか人生にはあって。

ふと流れてきたIUちゃんの歌声にだばだば涙が止まらなくなった夜がわたしにもあった。荒んでしまった心も優しい海が戻る日はちゃんといつかくるからね、と励まされたのかもしれない。ただただ、この美しい歌が琴線に触れたのかもしれない。

足りない自分も小さな痛みもぜんぶ、不完全な愛おしいにんげん。そのままのわたしたちを愛でていたいものです。



夏のこと忘れてないから、忘れないから、頼むからいったん暑さが落ち着いてほしいわたしです。残暑のやつ、手厳しすぎ〜!

今日もおつかれさまでした。あなたも、わたしも。

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