ep.87 昔のまんま、赤毛のあの子は心の友だ
もしかしたら11月が1年でいちばんすきかもしれない。
きゅっと冷えながらも穏やかな気候、文化的なイベント、味わい豊かな食材たち。じんわりホリデーシーズンに近づいていく高鳴りまでセットだ。
こんばんは。たまです。はやく週末にたどり着いてくれーっと常に願っているわたしですが、ゆっくりでいいよ早く進んでいかないで…と今月ばかりは念じています。
生活の日記
今週を生き抜くたのしみは何だ、と問われたら、「週末のピクニック」と腹から声を出して答えられる。
なんなら先日も実施したばかりなのですが。ベランダでごはんを広げての日向ぼっこもカウントしたら、この秋一体もう何回目かな?わたしがピクニック狂なのは、ぜったいに「赤毛のアン」の影響だ。
チャンネル数も少ない、地方の放送局だったからだろうか。70年代に放映されていたらしい世界名作アニメ劇場が、90年代半ば、我が家の居間では朝8時台に放送されていた。ちょうど朝食後、5歳のわたしが幼稚園バスを待つ時間。
小公女セーラや、未来少年コナン。あれもこれも楽しく観ていたけれど、とりわけ5歳児なりに目を輝かせ、暮らし・食べもの・ファッション・大人になっていくということ……すべてに憧れたのが「赤毛のアン」だった。
舞台はカナダ プリンスエドワード島。今でもうっとり思い出せる、収穫したリンゴを馬車に乗って町まで搾りに行くシーン。親友とロウソクの灯で秘密の信号を送りあう夜、クリスマスコンサート、物語クラブの活動…。
わたし、大人になったら、薪ストーブのある家に住みたい。洗顔用の水ポットを屋根裏部屋のドア近くに置くんだ、ぜったい。そんな夢を思った。妙に生き急いでしまって、8歳くらいで「輸入住宅のモデルルームいきたいナ」と両親に申告し、やや引かれた覚えもある。
物語には、アンがピクニックを心待ちにする回がある。
まだ見ぬアイスクリームを友だちと原っぱで食べること。アンはなるべく鮮明に空想しながら、その日をどきどき待ち侘びる。そうして、念願のピクニックを迎えられたときの、綻ぶ笑顔よ…。ああピクニックって最高に素敵なことなんだねアン、と心にしかと刻まれた。
空想の世界は、コンプレックスや寂しさを乗り越える力をくれる。帰る家があるしあわせ。恥ずかしすぎる失敗をしても、明るく捉える強さ。大人を生きるわたしのことも、時折アンはひっそり励まし続けてくれている。
三つ子のたましい百まで。きっとわたしはおばあちゃんになってもピクニックを愛しているんだろうな。どこにいたってグリーンゲイブルズで過ごしている気分で。今週末もどうかどうか晴れますように!
今夜の1曲
U.S.A For Africa の We Are the World を。
クインシージョーンズの訃報を聞いて、まっさきにこの歌が浮かんだ。当時は超多忙スターだったレジェンドアーティストたちが、一夜限りでスタジオに集い録ったWe Are the World。その中央で、淡々と指揮を進めていたのがクインシー。
個性、才能が爆発し、一歩間違えば即解散してしまいそうな空間で、彼らはクインシーの手振りに、発言に、集中しながら、自分のパートをつくっていく。
なお、この日の録音で、ライオネルリッチーのファシリテーション力が輝きすぎていることも申し添えたい。We Are the Worldで上司にしたいランキング(急に軽薄)なんてあったら悠々とランクインしそうだな。待って、それを言い出したら、ヒューイルイスの話もしていいかな?あのメンバーに囲まれて、緊急でコーラス担当する懸命さったら熱くなる。混乱したボブディランをサポートするスティーヴィーワンダーもいるしさ……良い……。
誰かにとっては友達、頼れる先輩、憧れ、北極星のような道標だったクインシー。どうか安らかな旅を。アメリカは一体どうなっちゃんだろう、とやきもきする今夜は、この歌を抱きしめて。
新しい本を先週末買ってきて、積読があるうれしさに満ちています。ほくほく。日記を書き終えたら、1節読んでから寝ちゃおっと。
今日もおつかれさまでした。あなたも、わたしも。