蒙昧
なにも みようとしない
なにも しろうとしない
みえなければ もんだいは そんざいしない
おなじものを おなじかくどから みていれば
それがしんじつだと 安心していられる
ひとがばたばたと 死んでいく
死がいまよりも ずっと ずっと 近かったころ
せいねんたちは 大人だった
じごくをみた かれらは
くるしみとやさしさを かかえて
たくさんの物語と歌をのこしてくれた
死がとおのくにつれて
それでも 過ちを にどと おかすまいと
むずかしいことに なやみすぎたおとなたちは
ゆたかになっていくのに まずしくなっていく
まんなかのみちをすすむことに いやけがさして
ちいさなこどもに さいごの夢をみた
夜な夜な おどりあかし
かんがえることをほうきした おとなは
ミイラとりのミイラ
まちには どくがまかれ
だいちは おおきくわれた
こどもたちは
ちせいをもつことができずに
ただ このよを いきつづけている
なにもうみだせない
己ばかり ながめては
みえないものに おびえている
ぼくたちは
めかくしを おまもりにしながら
あまい あまい 夢をすいつづけている
そとは あまりにも まっくらだから
きたないものも みにくいものも
ちょくしすることなんてできないんだ
ほそい針がささっただけで
大泣きしている パパ
パパ なにか はなしてよ
かわいい ぼうや
もうなにも こわくないわよ と
ちゅういぶかく
きけんをとりのぞいた世界だけをみせる ママ
ママ なのにどうして悲しい顔をするの
あぁ
それはとつぜん やってくるんだね
ぼくは あなたにであって いちど 死んだ
もうあの頃には 戻れない
戻れやしないのさ
僕の心臓からはこんなにも血飛沫が噴き出している
パパが泣いていた理由が分かった
それが酷く詰まらないことだったということも
ママのみせた世界は硝子細工の様に脆い偽りの優しさだった
ママの涙は 僕ではなく ママ自身への失望だった
パパ ママ
僕は 真実と愛を教えて欲しかった
同じものを信じ 同じ言葉を
話していたはずのあの子とも
いつのまにか共通の言葉を失っていた
言葉が滑り落ちていく
それは とても とても 孤独で
僕だけが違う世界を眺めているようだった
乖離していく僕の精神とせかい
僕は もうぼくのままではいられないと
叫び声がした
苦しみがこの世からなくなることはない
何千年も昔に生きたという偉人が
悟ったその真実は 僕の頭を殴りつけた
僕は 本を読むことにした
真実を語る人を探しに出た
考える人を探しに出た
何も持たない人を探しに出た
目隠しを外して世界を見つめる人を探しに出た
僕と同じようにありのままの事実を
そのままに受け入れようと藻掻く人を探しに出た
そうして僕は 暖かさを 優しさを 強さを 知った
僕は ぼくを理解しはじめた
僕は もっと 他者を知るべきだったのだ
世界には 変えられないことと 変えられることがある
世界の残酷さを変えることができないならば
生きるということは 覚悟の連続だ
僕は ぼくを抱きしめて
ぼくを後にすることにした
父さん 母さん 僕はいくよ
僕は変化を恐れるのではなく楽しむことにした
外の世界は相変わらずだ
それでも僕は 何度でも
この空の青さに驚いて
茜色の夕日の眩しさに 胸焦がし
真夜中に浮かぶ月の孤高に憧れを抱くだろう
そうして また 朝日が昇れば
この世界の美しさにあなたを思わずにはいられないんだ
僕はもう孤独を寂しいとは思わなくなった
絶望している時間すらないんだ
世界とは こんなにも醜くいのに
この上なく 美しい
あぁ
愛おしいとは そういうことなのだろう?
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この詩は、さすがに書いてて、心がひりひりした。私が生まれた平成って、結構、とち狂ってたと思う。
変化を受け入れることに対しては、もしかすると女性の方が耐性があるのかもしれない。
ある日、突然、毎月のように自らが変わってしまう不思議を受け入れないといけないし、
子どもを授かれば、お腹はどんどん大きくなる。こんな大きな変化を受け入れないといけないのだから。
環境や状況に応じてメタモルフォーゼしていく。流れるままに身を任せ、と。
緩やかにしなやかに、
でも力強く生きていきたい。
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