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推しが鬱をブラッディースクライド

 四半世紀以上オタクをやっている。大抵のことに手を出しているオタクで、ジャンルもまあ大概広い。

 ところで「ダイの大冒険」という漫画がある。
 私が小学生の頃から高校の頃まで、週刊少年ジャンプという雑誌に連載されていた漫画だ。

 当時から大好きで、どれくらい深く深く愛していたかというと、連載終了当時に高校生だった私が歳を重ねて重ね、昨年に私が不惑の齢40になって息子が5歳になり七五三をしたとき、自分も着物を着て、日枝神社の門外にて千歳飴でアバンストラッシュをした。アバンストラッシュというのは、そのダイの大冒険の象徴である必殺技の一つだ。連載当時、雨上がりの帰り道で、小学生は必ず傘でアバンストラッシュの修行をしていたのだ。ちなみに私のお着物アバンストラッシュはなんなら息子にカラミティウォールで迎撃された。やだ息子大魔王の才能ある。この先長く生きていれば息子のカイザーフェニックスが見られるかもしれない。生きよう推しのために息子のために。それ順番逆だよ私。ちがうよまずは最推しが息子なんだよ。ていうか私もうポップくらいの息子いてもおかしくないんだよな。

 とはいえ、そういう感じで生きていたら、令和になってなんと30年ぶりに、ダイの大冒険が再アニメ化された。連載当時にもアニメ化をされていたので、30年ぶりにリバイバルということになる。最近だとシャーマンキングという漫画もだけれど、ここ数年ほど、リバイバルで過去の名作がアニメ化されるという流れがあると思っている。るろ剣なんか本編最終章の実写映画が公開されているし。そんな流れなのかなと思った。ただ、私は、実はダイの大冒険の令和再アニメ化が発表になった時、手放しで喜んではいなかった。つい先々月のとある回を見るまでは。そりゃあ令和風にリメイクされた推し漫画の推しは素敵だったし、放送が始まれば、土曜日の朝9時からテレビの前にスタンバイをした。ウルトラマンZに寝坊して録画にしていたのにダイが始まってからはウルトラマンクロニクルからテレビの前で正座をして待機した。もちろん全話録画済みだ。しかし、それでも私の心の中にひとつの蟠りがあり、手放しで喜んで見ていなかったと思う。

 それは、そう、30年前のアニメ化に思うところがあったからだ。なんということはない、まあよくある話で、連載当時のアニメは、途中のいいところで打ち切りになった。当時は、原作もまだ完結していない中でのアニメ化だったため仕方がなかったというのは分かっていた。

 しかし、その、よりにもよって、よりにもよって!当時の打ち切りのタイミングが、推しの最高の見せ場をカットするという打ち切りのされ方であったのだ。

 私はそれを30年間恨み続けた。だって!推しの!最高の!見せ場を!削られて!!怨恨を抱かないオタクなんかいるか!!!いや、いるかも知れないけど私は恨んでいた。深く深く。

 話を現在に戻す。この令和のご時世のアニメのレーティングというのは厳しい。
 原則が首ふっ飛ばしである「鬼滅の刃」が深夜アニメであったのは当然であると思うし、そういえば、鬼滅の遊郭編もやはり深夜なのだろうなと思っている。世の中の親御さん達はどうするおつもりか。なお、息子6歳は、さすがに鬼滅のあそこまでの流血描写は怖いらしいので、1話を試しに家族で見て以降は見せていない。
 さておき、我々コンテンツの受け手のオタクというのはつまり、生殺与奪の権を他人に握られているわけである。そうであるから、鬼滅の1話で冨岡義勇が喋りすぎちゃうくらいには、ダイの大冒険再アニメ化には正直狼狽した。ちなみに鬼滅の推しは不死川実弥だ。今年小学生になった息子は、周囲の影響でよく鬼滅のグッズに反応する。どうやらこんな母親でも世間並には慕ってくれているらしい息子らが、一緒に買い物に出かけた店舗などで、よく、私のために鬼滅のグッズなどを教えてくれる。しかし、基本的に鬼滅のグッズはアニメ準拠であるから、残念ながら、それは概ね「実弥がいない、はい解散」となる。そうしてあまりにもそれをやりすぎていたところ、最近、息子は、コンビニやスーパーマーケット等の一般店舗で「おかあさんさねみいるよ!」と遠くから叫んでくれるようになった。私は息子らに愛されている。ありがとうみんな。しかし、わかってくれとは言わない、むしろわからないままでいて欲しいところだが、アニメだけでは実弥の良さが全くわからないのだ。あれだけの描写ではただの人格破綻者だよという話なのだ。実弥は寝顔が可愛いしブラコンを拗らせすぎているけど犬に好かれるところとかがいいのであって、アニメ版の立ち絵や柱合会議での実弥は、例えるなら「判断が遅い」と主人公を引っ叩いた鱗滝さんが、最終選別などのエピソードがなく、そのままの状態で放置されているみたいなものだ。それにしても義勇は最後まで義勇だったが。そういうところですよ。なお呪術廻戦はこれから履修します私は今モリアーティ推しとして「憂国のモリアーティ」に忙しかったりしますので。正義のモリアーティってなんだよ喧嘩売ってんのかと強火のオタクとして試しに読んだらたいへんに面白かった。なお当然FGO新茶もレベル100スキルマフォウマなのでご心配なきよう。いや心配だよ私は自分が。自分と自分の財布が。

 違う。

 話をダイの大冒険に戻そうと思う。

 今回のアニメ化においても、原作が、そして前回のアニメがそうであったように、ダイの大冒険は、子供向けアニメとして放映されている。
 そして、前回のアニメでカットされてしまった推しの最高シーンは、子供にはだいぶ衝撃が強い場面である。
 だから、私は心から恐れていた。ダイの大冒険を30年怨恨するまで愛するが故に。そのシーンが、この「令和子供向けアニメ」というレーティングの中で、またカットされるのではないだろうかということを。
 仕方のないことなのかも知れない、マァムは今回もナイスバディだけどポップはあんまりラッキースケベできていないし、だから、それよりも余程色々なことに引っかかる「あの」シーンは、残念ながらカットされてしまうかも知れない。でも、いくら仕方がなくても、もしカットされるようなことがあれば、私はもうオタクをやめるほどの自信があった。なおそれでも生涯私は誰も見ていない場所で雨上がりに傘でアバンストラッシュの練習は続けるとも思っていた。そういえば、アバン先生の剣が傘になって商品化するところをもって、やはり当時の小学生男児は、傘でアバンストラッシュの修行に明け暮れていたのだろうと思う。ちなみに私は大地斬ですらできないので、私のアバンストラッシュはまがいものである。悪人ヅラのヒュンケルがダイにくれてやるあんな感じだ。悪人ヅラのヒュンケルは小学生の頃から苦手だ。でも楽しそうなのであれが実はヒュンケルの素なのではないかと思うこともある。ありのままの人間を受け容れるということはいつだってしんどいものだ。

 ところで、冒頭でしか言っていなかったが、ダイの大冒険の私の推しはポップである。なお、ポップの魅力については、世界中の人にダイの大冒険を読んで知っていただきたい。ダイの大冒険は素晴らしい作品であるし、ポップは、その中でも最高の登場人物だ。

 さて、そうして結論から言うと、私の怨恨は晴らされ、というか、30年ぶりに私の夢は果たされた。

 最高の絵柄で、担当声優さんの最高の最高の最高のもう最高の演技で、最高のポップを、30年の長き時を経て、私は、先々月に目の当たりにした。もう30回は視た。余談だがシン・ゴジラは150回くらいは見ていると思うが多分それを上回る勢いだ任せて欲しい。何を。いや、そうではなく「生きて来てよかった」と、心からそう思った。生きるのは辛いことも多くて、その昔に夏コミで無理をしたら持病の痔が恐ろしく悪化して緊急手術入院になったり、職場でえぐみの強いパワハラにあったりしたり、辛いことを数えればキリがないというのが人生であろう。しかし、生きて来て本当によかったと思った。私の30年の想いは叶ったのだ。

 虹を見かけたり、黄色いてんとう虫を見かけたり、30年も前に背負った業が晴れる瞬間が訪れたり。こういう瞬間のために人は生かされているのだ。心からそう思った。

 ちなみに、どうやら、今回のアニメでは、原作最終回まで構想があるようなので(OPなどで見られるイラストなど)、推しの見せ場が、あと何回もある。つまり私は、毎週土曜日の朝に、二日酔いで酔い潰れていなければ、息子がドン引くテンションでウルトラマンとダイを見ることになるわけだ。だけどせめて言わせて私は幸せだ(なんか聞いたことのあるメロディーにのせて)。ところでちなみにあれだがポップの見せ場のところできちんと原作の通りヒュンケルを動揺させてくれたところをはじめ、その前の竜騎衆戦においても、ヒュンケルが助けに入る際にポップにそっけないのに、ポップが寝た途端バチギレするヒュンケルも最高で、そういったところを描写してくれたスタッフの皆様にも、ヒュンケル担当声優の梶裕貴さんにももう感謝しかない。はじめエレンがヒュンケル?とか思って申し訳ないほんとうにほんとうに最高だった好き。ついでに言えば関智さんハドラーも速水さんバランもまさかの石田彰さんラーハルトも、ついでに、今度はヒムが三木眞一郎さんだという。なんというかこれはもうアルビナスに「あの女本当に人間か」とかシグマに「君は本当に人間なのか」とか言われながら何度でも死んでは墓から出て来られる自信がある。だから生きるためにちゃんとコロナのワクチンも打った。副反応は痛かったし、打ったのが金曜日だったので、翌土曜朝に「ポップが今日も可愛いヤッター!」と諸手を上げたら、打った左腕に激痛が走ったが私に悔いはない。どうでもいいがさっきからヒュンケルとポップの話が多いがお察しいただきたい。そもそも連載当時は、幽遊白書、スラムダンク、ガンダムWという腐女子殺しが蔓延っていたので、私は極めてピュアな目でポップのことを見ていたのに、まさか令和になってこうなるとは思わなかった。場所が場所なのでこれ以上の言及は避ける。しょーがねーだろ腐女子なんだから。

 で何が言いたいかというと、今回のダイの大冒険再アニメ化に際し、なにはさておき、ひとまずは、打ち切られては身も蓋もないということで、途方もない怨恨を胸に、それでも私は公式にお布施をしたのだ。
 子供向けということで、ある日カードゲームが出たため、とりあえずそれに大金を注ぎ込んだ。クロスブレイドである。ある日糖質ゼロ麺を買いに出かけた地元の大型スーパーで、ポップが喋っているのを聴いたあの日の衝撃を私は忘れることができない。もう衝撃すぎてとりあえず有り金を全部両替して入れたし、その後も課金を続けた。毎月の傷病手当金の全額くらいはその都度課金をした。ところでBlu-ray4巻ジャケットのヒュンケルがイケメンすぎて本当に辛くAmazon特典のタペストリーが5本は欲しいので、主に収入的な観点からしてそろそろ仕事復帰を考えている。もうなんかこれは推しが鬱をブラッディースクライドだ。アバンの使徒長兄イケメンマジ辛い。しかし、いくら傷病手当金を全額注ぎ込んでも、あの手のカードゲームはランダム排出なので推しが来ない。魔軍司令時代の三流魔王ハドラーのSSRとか3枚もいらないし、フレイザードが4枚出てフローラが1枚しか出ないとか、私は本当にもう私の普段の行いの悪さを常に呪いながら生きている。改めろ。そうですね。
 ちなみにこのカードゲームは、ドラゴンボールや仮面ライダーのほか女の子向けのものなど様々なジャンルがある。ダイの大冒険で課金をして初めて知ったのであるが、このカードが出てくるゲームは、「データカードダス」というものらしい。
 平成の誕生とともに世に出たカードダス。何せ私は四半世紀以上オタクをしているので、もうカードダスに何十万円使ったかなんか数えていないが、そのカードダスが令和でカードゲームになり、不惑を過ぎた私の財布を再び狙って来たのだ。バンダイめ。バンダイめ。私がバンダイに使った額を合わせると、高級外車が数台買えると思う。


 で、そろそろこの長々と書いて来たオタク特有の意味のわからない早口言葉を書き起こしたような文章を締めようと思う。

 何が言いたかったと言うと、先日、クロスブレイドのカード目当てに、発売日にVジャンプを探していたのだが、ありとあらゆる書店で売り切れだった。さすがにおかしいと思い、地元の本屋でやっと一冊買えた後に調べたのだが、どうやらそれは、そのVジャンプに付いてくる他の付録である、遊戯王カードのせいらしいということがわかった。
 遊戯王については、週刊少年ジャンプを毎週フラゲしていたどころか週刊少年ジャンプが火曜日にならないと手に入らないというそれだけの理由で現役で受かった地方国立大学を1ヶ月で辞めて関東地方に帰って来るくらいのやらかしをした身としては当然履修をしているが、そのカードゲーム自体については履修をしていない。しかし、なんだかかわいいし、自分用にコレクションしてある。
 しかし、それにしたって、そんなに貴重なものなのかと、試しにメルカリで調べてみたところ、本の倍くらいの値段が相場であったし、soldの数もえげつなかった。



 私が言うのも何だが、あの、なんか、オタクって怖くない????




 あと表題はハーケンディストールでもよかった。そして勿論であるが、この先、推しが鬱をメドローアしてくれることを私は確信している。

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