鋭利なチクワ#毎週ショートショートnote
白と茶色で構成された猫がよく神社で寝ている。まっすぐ寝ている。その姿はまるで、チクワだ。どこの猫だかわからないので、私はチクワと呼んでいる。
「チクワ。今日も寝てるのか。暇なのか。働かなくてもご飯が提供されて羨ましいぞこの野郎」
動物は好きだ。可愛くて、ふわふわしてて、癒される。でも、チクワは癒されない。もふもふしてやろうと近づき、手を伸ばした時、チクワは飛び起きて私を引っ掻こうとした。ギリギリ避けたので傷はつかなかったけれど、その日から私のチクワへの思いは、可愛い猫ではなく戦略的な猫となった。
寝たふりをしてチクワは人間を油断させる。近づいてきた瞬間に飛び起きてその鋭利なチクワの爪で引っ掻き、ストレスを発散しようという魂胆なのだ。ぶつかりおじさんより卑怯だ。
「私はもう騙されないぞチクワめ。今度私にその罠をかけようものなら、その爪を切ってやる」
「にゃー」
初めて聞いたチクワの鳴き声は、やっぱり可愛かった。
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食べ物のチクワではなく、猫の名前をチクワにしてしまいました。