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春にさよなら



春が思い出させる、くだらない記憶。

高校卒業あたりのことを書きたいと思う。

私には好きな先生がいた。

先生への恋というのはよくある話だが
いわゆるそういう話に登場するような'先生'
ではなく、かなり変人だった。

別に格好良くもないし、2回りも年上。
一見すごい冷たくて絡みづらい。
ひねくれていて自虐的。教師らしくない……

でも本当は情熱的で、優しいところもあった。
自分でも何で好きになったのかよく分からない。
まぁ、気づいたら好きになっているのが
恋というものらしいけれど。

その先生には
2年間はよくお世話になったのだが、色々あり
3年になって接する機会(授業)がかなり減った。

誰にもはっきり打ち明けていなかったので、
(何となく分かってる友人はいたけれど)
どうにもならない苦しい気持ちを抱えつつ
何もないふりをしていた。
関わりたくても、意識しすぎて上手く接することも、普通に話すことすら全くできなかった。
(むしろ苦い思い出しかない)



前置きはこのくらいにして。

卒業式の前日
夜な夜な私は手紙を書いていた。
もちろんその先生への、だ。
感謝や想い、伝えたいこと全部を込めようとしていた。

私はその高校からかなり離れた場所へ
進学が決まっていた。
(合格報告すらできなかったのだが。)
なのでもう簡単には会えなくなってしまう訳だ。
つながりが欲しかったんだと思う。
必死に手紙を書きながら、
追いつめられていた私は
自分のメアドを書いておくか悩んでいた。

書いていいものか友人にメールしたところ
「その距離感でそんなことしない方が良い」
と正論で返され、そういう関係になれなかった
辛さ、苦しさで泣いてしまったのを憶えている。
そのアドバイスは本当にそのとおりで、
自分でも分かっていた事だと思う。
間違ったことをしないようにしてくれた
その友人には感謝している。



卒業式の日。
どんな気持ちで学校に向かっていたのかは
全く思い出せないし、記憶も断片的だ。
でも、式で1人ずつ名前を呼ばれたとき
どうせなら先生に呼ばれたかったな…と
思ったのはよく憶えている。

諸行事が終わった後
私は友人たちと教室にいた。
手紙を渡そうと思っても勇気が出ず
なかなか先生のところへ行けなかったのだ。
やっと向かったときには先生は帰っていて、
結局手紙はちゃんと渡せなかった。
職員室のデスクの上にそっとそれを置いて
私はその場を後にした。



その後、手紙がどうなったのかは分からない
でもきっと読まれているはずだ。
どんな気持ちになったのか
笑みが溢れたのか泣いたのか、
あるいは何も思わなかったのかは分からない。


でもそこには確かに
私の手紙とそれを読む先生という
'2人だけの空間'が存在していた。
それを想うと不思議な気分になる。


ちなみに
最後に書いた言葉は '大好き'だった。

おわり。


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