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労働安全衛生法の一般定期健康診断で「女性の健康に関する質問項目案」が提示されるが…

7月19日開催「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会 第5回」を傍聴ました。

前回までのレポートはコチラ↓

今回も引き続き、「女性の健康に関する事項」が議題で、事務局から前回までの議論の概要の説明の後、具体的な内容が事務局から提示されました。

○考え方
健診の機会を活用し、労働者本人への気づきを促し、必要な場合の早期受診のほか、女性の健康課題に対する配慮を申し出やすい職場づくりにもつながるよう、「一般健康診断問診票」に女性の健康に関する質問を追加してはいかがか。
※労働者の受診義務と事業者の事後措置の実施義務は課されない。
○「一般健康診断問診票」に追加する質問項目
質問32:女性に関連する健康問題で職場において困っていることがありますか。
①はい、②いいえ、③どちらとも言えない
質問33:(質問32に「はい」と回答された方)職場において相談したいこと(配慮してほしいこと)がありますか。
①はい、②いいえ、③どちらとも言えない
※「女性に関する健康問題」とは、月経困難症、更年期症状などを指します。
(↑欄外に)

資料2 「一般定期健康診断における女性の健康に関する健診項目について」一部を筆者の選択で引用

この提示に個人的には、初めは予想通りかな、と思いましたが…、資料の説明や構成員の質問から、事務局が想定している内容が少しずつ詳しくわかってきて、自分の勉強不足を実感する展開になりました。

質問32「女性に関連する健康問題で職場において困っていることがありますか」について

健診後、事業者は健診結果をどのように入手するのか。
→従来の「一般健康診断問診票」の取扱と同様に、事業者は個別の労働者に関する結果は入手しない/できない

資料2 「一般定期健康診断における女性の健康に関する健診項目について」P9

資料2の中に上記の記載があります。
うーーん、特定健診の「保険者」のイメージについつい重ねて考えてしまい、健診結果を実施者が把握していると思っていましたが、「事業者」は健診結果を入手できないんですね。大変勉強不足でした。。。

労働安全衛生法66条では、

「医師による健康診断を行わなければならない」であり、「健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない」

労働安全衛生法66条 一部、筆者選択で引用

というわけで、事業者が知るとしたら、必要な措置が必要なときだけ、ということでしょうか。ちなみに、

事業者は「健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない」また「健康診断の結果を記録しておかなければならない」

労働安全衛生法66条 一部筆者選択で引用

とあり、事業者は、労働者への健診結果の通知義務があり、また健診結果は記録はしていても中身は見ることができないということ(?!)とされています。

さてさて元に戻りますと、
質問32の受診者の回答には健診診察医が対応し、事業者はもちろん、事業所の産業医にも、回答の情報は届かないということになるようです。
これに対して、健診機関側からは、現状として健診の診察の場での対応は難しい。
産業保健側からは、個人情報の問題をクリアして情報を提供してもらいたい。
といった意見が出ていました。
事務局の想定では、この質問は「本人への気づき」を促すためのもので、その場で診断ということでなく、リーフレットなどツールによる啓発、必要に応じて医療機関への受診勧奨、相談内容に関する情報提供等などを考えているようです。このため、診断ではないので、事後措置などはないということですね。

質問33「(質問32に「はい」と回答された方)職場において相談したいこと(配慮してほしいこと)がありますか」について

資料にも課題の一つとして挙げられていましたが、この質問に「はい」と回答したら、何かしら職場にアクションをしてくれるのでは、と感じてしまいそうです。事務局からの説明ですと、個人を特定したものでなく、「はい」の数を把握することによる「事業者への気づき」のための質問項目とのこと。
これに対して構成員からは、やはり私と同様に感じたという発言や、数を知ることでなんの効果があるのか、また数を知ること自体を事業者の任意を担保すべき、また事後対応は産業医や産業保健スタッフのいない小規模事業場でも実施可能なことにする配慮が必要、という意見もありました。

最後に座長からのまとめとして
⚫︎質問項目からどのような進むかのフローを作成するなど、全体のスキームをどうするか検討
⚫︎質問の文言についての検討
⚫︎事後の対応についての検討
3つの課題が挙げられました。

構成員一人が「それぞれの質問により、誰が何をするためのものか明確に」と発言されていましたが、なんだか混沌としていたな、と。
また、想像していたより全体的にやわになったなあという印象を持ちました。
現状、労働安全衛生法という「全事業者の義務(罰則あり)」という制度設計から事業者の負担増を考えると、この辺がギリギリなのかもしれません。

こうなると、根本的な課題になりますが、「一般健康診断問診票」自体の制度としての位置付けを明確にし、利用促進を周知することが必要なのでは、といった構成員の方の発言にとても頷いてしまいました。


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