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介護被保険者証のペーパーレス化など、介護DXはもう待ったなしの状況なのかも

7月8日開催の「第113回社会保障審議会介護保険部会」を傍聴しました。

●介護情報基盤の整備の必要性とそのメリット

議題のメインは「介護情報基盤」について。
「介護情報基盤」とは、自治体・利用者・介護事業所・医療機関等が介護情報等を電子的に閲覧できる情報基盤のこと。
令和5年に成立した「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」にて、下記のように、必要性とメリットが記述されています。

現在、利用者に関する介護情報等は、各介護事業所や自治体等に分散している。今般、医療・介護間の連携を強化しつつ、多様な 主体が協同して高齢者を地域で支えていく地域包括ケアシステムを深化・推進するため、自治体・利用者・介護事業所・医療機関等が介護情報等を電子的に閲覧できる情報基盤を整備する。
具体的には、自治体、利用者、介護事業所・医療機関について、以下のような効果が期待される。
自治体
利用者が受けている自立支援・重度化防止の取組の状況等を把握し、地域の実情に応じた介護保険事業の運営に活用。
利用者
利用者が自身の介護情報を閲覧できることで、自身の自立支援・重度化防止の取組の推進に繋がる。
介護事業者・医療機関
本人同意の下、介護情報等を適切に活用することで、利用者に提供する介護・医療サービスの質を向上。
※ さらに、紙でのやり取りが減り、事務負担が軽減される効果も期待される。

全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律
(令和5年法律第31号)【令和5年5月19日公布】

また、介護基盤整備のためのお金出所として

こうした情報基盤の整備を、保険者である市町村が実施主体であり、地域での自立した日常生活の支援を目的としている地域支援事業に位置付ける。
市町村は、当該事業について、医療保険者等と共同して国保連・支払基金に委託できることとする。

全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律
(令和5年法律第31号)【令和5年5月19日公布】

●今後の検討課題として、介護被保険者証のペーパーレス化

具体的な介護基盤整備とそれぞれの情報の流れを下記の図版として掲載されています。

資料1  介護情報基盤について

資料には、「利用者」「自治体」「介護事業所」それぞれの活用イメージも図版化されて、わかりやすいですね。

資料1  介護情報基盤について 「利用者の活用イメージ」
資料1  介護情報基盤について 「自治体の活用イメージ」
資料1  介護情報基盤について 「介護事業所の活用イメージ」


今後の検討課題としては、情報閲覧など情報共有への本人の同意取得(家族や委任者の扱い等)、関係各署のデジタル化への理解、基盤整備のための予算も含めた支援などが事務局から挙げられていました。

そして、介護基盤整備により、介護被保険者証の情報がデジタル化されることから、介護被保険者証のペーパーレス化が提案されました。

○介護情報基盤の施行に向けて、被保険者の資格情報等(被保険者証、負担割合証等に記載されている情報)が格納される。
○ したがって、これらの情報を被保険者、保険者、事業所等が活用することにより、さらなる業務効率化や利便性向上を図ることが考えられる。

介護被保険者証のペーパーレス化により、65歳での被保険者証の一斉送付、以降も介護保険利用時の複数回の被保険者証の提示などを、認定の申請・通知、届出など、ペーパーレス化によって、業務効率化や利便性向上となることなどが示されています。

資料1  介護情報基盤について

●2026年(令和8年)4月1日の施行を目指す

今後の具体的な日程として、市町村の標準準拠システムへの移行目標が令和7年度中とされていることを踏まえ、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和5年法律第31号)の介護情報基盤に係る規定については2026年(令和8年)4月1日の施行を目指し、準備を進めることとしてはどうか、という提案がされました。

令和8年4月までの課題として、国、市町村、介護事業所、医療機関について、下記内容を挙げています。


・システム設計・開発にかかる調整、事業者支援策の構築、自治体システム改修の支援 早急な情報提供 等
市町村 (介護保険者)
・介護保険事務システムの標準化に伴う改修(介護情報基盤との連携が含まれる)等
※ 介護情報基盤の施行までに標準準拠システムへの移行が間に合わない場合には、既存システムの改修によって対応いただく。
介護事業所
・インターネット環境の整備
・介護情報基盤に接続し、情報を閲覧する端末の準備(既存端末も利用可能)
・マイナンバーカードを読み込むカードリーダーの準備
・閲覧端末のセキュリティ対策(端末認証、ウイルス対策ソフトの導入等) 等
主治医意見書を作成する医療機関
・主治医意見書を電子的に共有するための対応(既存ソフトの改修等) 等

資料1  介護情報基盤について

としています。介護事業所の整備はかなりありますね。

●総論は「賛成」進めるにあたっての課題は色々

事務局からの説明後、各委員から意見が出されました。総論は、「全員賛成」ですね。ただ、それぞれの立場から、

○漠然と不安を持つ高齢者や、認知症の人などに対して、前提となるマイナンバーカードの取得、情報閲覧への本人同意の取得などへの丁寧な対応。

○介護情報と医療情報との相互の情報共有。

○実際に、ケアプランなどの情報など介護事業所の情報がデジタル化していかないと、絵に描いた餅になってしまう。紙からデジタル化するための過渡期には十分な時間と支援を。

○事業所に対して、業務効率化や利便性向上、そして介護の質の向上につながる、といったメリットの「見える化」と、導入負担を考慮すること、そして具体的な技術支援が必要。

○年々、加算という形で対応してきたため、介護保険報酬の業務が複雑化している。介護保険自体の請求なども簡素化することを考えていくべきでは。

などの意見が出されていました。介護事業所への支援は必須ですね。

●「地域共生社会の在り方検討会議」の概要の説明

議題のその他として、最後に6月27日に初回が開催された「地域共生社会の在り方検討会議」の概要が説明されました。委員からは、地域共生社会の概念の定義が担当部署によって、近いとはいえバラバラであること、自治体ごとに取組に格差が生じないようにすべき、また市町村自体が人手不足、市町村という単位で取り組むこと自体も再検討しては、などの意見が出ていました。

こちらの検討会には、部会長の菊池先生、石田委員も参加されているので、今後の進行内容なども報告していくとのこと。

介護DX化、なんだか一気に進みそうですね。ただ事業所は小規模も多いので対応できるか。それでも人手不足など日本の課題解決として、もう待ったなしの状況なのかもです。

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