肥満症の治療はどんどん進化しているが、新しい薬剤・手術にも多職種連携が必須
10月19、20日開催の日本肥満学会・日本肥満治療学会学術集会に参加しました。
大会長の提言や学会理事長の講演を聴くと、
今回の学術集会のトピックは、
2024年から肥満治療薬として、肥満症の新しい治療選択肢を提供する薬剤「セマグルチド(遺伝子組換え)」、内臓脂肪の蓄積を軽減し健康障害の出現を予防する目的の OTC 薬「オルリスタット」が国内で使用可能になったこと。
また、
2024年の診療改定で新しく保険適用になった「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術+十二指腸空腸バイパス術」のように感じました。
薬剤や外科手術というと、食事や運動をないがしろになってしまうのでは、一瞬思ってしましいましたが、これは大きな、大きな間違えでした。
わかりやすい点でいえば、「セマグルチド」について、乱用を防ぐために、厚生労働省では「最適使用推進ガイドライン」を作成し、使用についてかなり厳しい要件を課しています。
保医発1121第2号 令和5年11月21日
https://www.mhlw.go.jp/content/001169796.pdf
多職種連携という視点でみると
新しい手術においても同様です。
シンポジウム「新しい肥満症治療における栄養管理の重要性」
パネルディスカッション「これからの肥満症治療の展望」などでは、
手術の要件となる高度肥満や合併症をもつ肥満症には、手術だけ実施するのではなく、術前・術後のカンファレンスをしっかりとして、管理栄養士をはじめさまざまな専門家の関与が重要であることを、発表者の多くが語っていました。
実際にどのような食事指導が必要かということも管理栄養士の先生の発表で、具体的なお話をいただきましたが、術前の指導はもちろん、術後の変化により、食事量をはじめ、たんぱく質の量や栄養素の欠乏へのサプリメントの使用など、手術の種類や本人の状態、以降の経過により、大変にプロフェッショナルな知識と対応が必要なことだけは、理解しました……。
ちなみに、手術は、薬剤との併用も効果があるかもということや、減量による改善だけでなくホルモンの関係で、糖尿病改善にも効果があるそうです。
薬剤だけ、手術だけでは、ほんとうの意味での「治療」とならず、肥満症の治療は、食事・運動・行動療法、そして薬物療法、外科手術(減量・代謝改善手術)を取り入れた、統合的肥満症治療の確立を目指していることがわかりました。
他にも、ゲノムなどの遺伝子からの個別化治療、食事においては「食嗜好」をとりいれたものなど、今後も新たな治療もうまれていきそうです。
女性のやせ、ダイバーシティ、他にもポスター発表など、学会で興味のあったものを後ほどレポートできればと思います。取り急ぎ、全体の印象についてご報告まで。