電話がしたい患者

精神科に入院していた70〜80代のおじいさん。
糖尿病、うつ病、アルツハイマー型認知症がありました。

おじいさんは家族の声を聞くと落ち着くため毎日家族に電話をしていました。

病院内のため携帯電話は使用不可。電話をするには小銭かテレホンカードを使って、病棟から出た所にある公衆電話を使うしかありませんでした。

記憶障害があり、お金の管理が難しいため電話代は看護師が管理しており、電話をしたいときはステーションに来て電話代が欲しいと言わなければなりませんでした。


『あの〜、すいません。電話〜』おじいさんはステーションに来て電話代をもらい、看護師同行にて公衆電話まで行き、家族に電話をかけました。

家族も暇ではないため、午前中に一回、夕方に一回としていました。

午前中の電話が終わりました。


普通なら次は夕方と思いますよね?


そうです。記憶障害があるので電話をしたことを忘れてしまうのです。

電話をして部屋に戻った5分後にまたステーションに来て『あの〜、すいません。電話〜』と言うのです。

先程電話しましたよと伝えてもおじいさんにはその記憶はありません。

今は時間取れないからもう少ししたら行きましょうと伝え部屋に帰ってもらっても、また5分すれば『あの〜、すいません。電話〜』とステーションに来ます。

来たことも、言われたことも、電話をしたことも全て忘れて『あの〜、すいません。電話〜』と言います。

このエンドレスな対応に困ってしまい、実習に来ている学生が受け持ちとして対応しましたが、学生も困っていました。

学生曰く『電話のこと以外も話して欲しかった』とのこと。


この患者さんの病室の隣にはお風呂場と共同トイレとがありました。

夜中にこの『電話〜』の患者さんが洗面器を持って病室から出てきました。

どうしたんですか?夜中だからお風呂はありませんよ?と伝えたところ、お風呂場を探しているわけではないと言います。

洗面器の中を覗いてみると中には液体が。

患者さんはトイレが分からずに洗面器におしっこをしました。

トイレが病室の隣にあり、トイレの電気はついているのに素通りしてステーションまでやって来たのです。

失禁したり放尿したりするよりも洗面器にしてくれてありがとうと思った出来事でした。


この患者さんを在宅で面倒みるのは大変なんだろうな・・・


だから糖尿病があるのに棚には菓子パンやらお菓子がたくさん入ってるんだな。

家族の気持ちが良く分かったが、早く退院してくれと願っていました。







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