このXは真似できない
70代のおばあさん
脳梗塞、胃ろう造設術後、廃用症候群
脳梗塞の後遺症でしょうか
話すことができません。
長期入院により首が固まってしまい、ずっと上を向いた状態となっています。
唾液を飲み込んだり口から吐き出すことが出来ないため口の中には唾液や痰がいっぱい。
1時間から2時間おきに吸引をしないとすぐに誤嚥性肺炎となる危険があります。
看護師が1人しかいない夜勤帯でも吸引が必要なので大変さは分かって頂けますか?
さて、このおばあさんのすごいのは吸引が頻回なことではありません。
手足の拘縮がすごいのです。
拘縮とは筋肉や関節を動かさないことにより硬くなり、関節の曲げ伸ばしが困難となります。伸びていたら伸びたまま、曲がっていたら曲がったままの状態になってしまいます。
入所時にご主人様は「 病院では爪も切ってくれなかった 」とぼやいていました。
忙しくて爪切りに当てる時間が取れないのは良くあることです。
時間を見つけて切ってあげようと思いTさんを見ると
ん?
これはどうやっているのだ?
腕を使い『 エックス 』を作り出しています。
さぁ、ご自身の肘から先を使って『 エックス 』を表現してみましょう。
エックスジャンプの際にやる『 X 』以外に作れますか?
腕を交差させずに作れますか?
私にはできませんでした。
他の職員も真似してみましたが腕が痛くなりました。
どんな『 エックス 』だと思いますか?
このおばあさんの『 エックス 』はこちら
拘縮が進んで肩、肘、手首、指と全てが曲がり固くなっています。
爪を切りたくても角度が難しいですよね。
パチンパチンと簡単に切れるような感じでもありません。
しかし、この人に伸びない素材のパジャマを着せた人が凄いですよね。
拘縮しているため腕を自由に動かせないのに着させています。
入所前に伸びる素材で2サイズ大きめの物を用意して欲しいと相談員が説明してくれないため、入所してからご家族様に依頼をしました。
ご家族様は快く承諾してくれました。
爪は後日切りましたが、爪が確認しにくいためどうやれば良いんだ?と一生懸命覗き込みながらやりました。
まぁ、コロナの影響で面会できないのでご家族様が確認することは難しいのですが、切ってくれたか聞かれた時のことを考えて頑張りました。
切ってもすぐに伸びてくるのが悲しいところですね。