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なぜ人と組織は変われないのか、なぜA1Aは変われたのか

お久しぶりです、A1A CTOの佐々木(@_mnc90)です。
ブログリレーということで、代表の松原(@matsushi0706)の記事(↓)に続いてブログを書きます。

今回のブログでは「対話を大事にする」というA1Aのカルチャーについて書いていきます。(ここでいうカルチャーとは、大事にしようと明文化されたものではなく、現状のA1Aにたしかに存在する暗黙的な価値観のことです)

「対話を大事にする」というA1Aのカルチャーをもう少し説明すると、以下のような要素を持つ深い会話がなされるカルチャーだと捉えています。

  • お互いの考え方や意見の違いを受け入れる

  • 自己の内省や相手への共感を伴う

  • 新しい共通理解を生み出す

双方向のコミュニケーションを通して、人々の間に意味が流れるような話し合い。当然と考えている前提を、対話を通して探究することで、新たに意味づけがなされ、自分たちがもつ前提を発見していく。

ジャルヴァース・R・ブッシュ,ロバート・J・マーシャク,エドガー・H・シャイン. 対話型組織開発その理論的系譜と実践

実際にA1Aでは、考え方や価値観の違いを恐れずに自身の考えを表明し、相手の考えを聞くコミュニケーションが様々なところで行われています。
その中でも私が対話をするときには、論理だけでなく感情まで含めて出し切る、出し切ってもらうことを大事にしています。

このカルチャーはさまざまな難所を乗り越えながら徐々に作られてきたものですが、事業ピボットという出来事において特に重要な役割を果たしました。

※事業ピボットについては代表も過去に記事を書いているので良ければご覧ください。

A1Aの事業ピボット

2020年のA1Aは事業的にも組織的にも様々な問題がおきていました。

  • プロダクトに対する顧客の低い満足度と見つからない打ち手

  • CS組織の疲弊

    • 営業時の顧客の期待とプロダクトで提供できる価値のギャップが大きく、顧客の期待に答えられないと気づきながらオンボーディングを進める心理的負担が大きかった

  • プロダクト組織のモメンタム喪失

    • 受注時に機能の開発がコミットされており、要求分析がままならないまま開発することが常態化していることに不満が募っていた

    • 目指す方向性がなく、また仮説検証が会社として軽視されていることで、実行よりも議論ばかりに時間が使われていた

  • 部門間(およびボードメンバー間)の信頼の欠如

これらの問題を認識し、解決すべき問題だと捉え、歩みを止めてもう一度進むべき道を見つけるために時間を使うと決めたのが2020年12月です。
※この意思決定をA1Aでは事業ピボットと呼んでいます(スタートアップ文脈で言及されるピボットとは異なります)

逆に言うと、問題を認識してからピボットの意思決定をするまで1年以上かかりました。
それは、これらが技術的課題ではなく適応を要する課題であり、解決するためには人(まずは社長や私を含むリーダー層)の変革が求められたから、そして人はなかなか変われないからです。

以降はピボットの意思決定をするまでを振り返りながら、どんな対話が行われてきたのか、それによってどんな問題を乗り越えることができたのかをお話します。

佐々木が問題を理解するまで

問題の表出

2020年4月、ひとつの開発プロジェクトが終了し、次の開発案件について議論していました。
この議論をしているとき、なかなか思ったようにプロダクト開発が進まないなと感じ始めました。

このとき起きていたことは以下のようなことです

  • 代表が作りたいもの(代表がPdMを兼ねていた)に対して開発メンバーの課題の再解釈が入った結果、代表が想像していたものとは異なるものを作る方向に議論が進む(これは問題ではないのですが、当時は「言ったものを作ってくれない」という捉え方になっていました)

  • 期待値ギャップが大きい顧客のオンボーディングが多くCSの不満の声があがりはじめる

  • コミット開発が常態化しており、開発メンバーの不満の声が強くなりはじめる

  • ビジョンが見えないと言われる

的外れなアプローチ

これに対して、私は上記の不満を解決する直接的なアプローチをとっていました。

ビジョンが見えないという声に対してはビジョンを作ろうとしたり、コミット開発が常態化していることに対しては顧客への開発コミットを禁止したり、代表の想定と違う方向に議論が進んでいる場合にファシリテーションをしたり。
(↓に当時のブログのリンクを貼っておきます。いま振り返ると的外れで恥ずかしいですが、そういうことこそオープンにしないと学びにならないと思うので赤面しながら出します///)

しかし、ビジョンもどきを作っても状況は一向に改善せず、コミット開発を禁止してもCSが疲弊することは変わりませんでした。

開発メンバーとの対話

どれだけ説得してもビジョンもどきを作っても、状況は一向に改善せず、プロダクト開発メンバーの違和感は拭えませんでした。

そこで、私はひたすらメンバー(プロダクトデザイナーとエンジニア)と対話を繰り返しました。

このときにわかったのは、①違和感を表明しているメンバーもなにが問題かわかっていないことが多いということ②しかし、それでも彼ら彼女らの違和感を一緒に言語化して共通理解を作ると、自分の不理解によってスルーしていた重要な事実や洞察があることがあるということ。

このときを振り返ると、彼ら彼女らがそこまで違和感を表すということはなにかしら問題があるはずだ、という前提でひたすら理解に努めたこと(説得ありきではなく、一緒に問題を言語化するというスタンスで対話したこと)が重要だったと思います。

このプロセスによって、A1Aが抱えている問題の本質により近づくことができ、対処しなければならない問題だと強く認識するに至りました。

自分の裏の目標に気づく

無自覚な裏の目標と固定観念

このように対話によって問題をより深く理解するに至ったわけですが、実は理解してからもなお、経営の問題として代表を巻き込まず、2〜3ヶ月の間、一人で解決しようと動いていました。

本当に深刻な問題なのであれば、スタートアップなら経営レベルでアプローチするべきはずです。しかし、当時の私はまだ自分の管掌範囲だけで解決すべき問題だと矮小化していました。

いま振り返ると、その背景には自分でも無自覚な裏の目標と固定観念がありました。

それは、代表の指示が期待通り実行され、代表から頼りになるCTOと評価されることでした。
(すごい情けない)

そして、その背景には最終的には代表の指示に従えばA1Aはうまくいく、という固定観念がありました。

もちろん、メンバーから気付かされたプロダクトに関する問題を解決し、価値の高い良いプロダクトアイデアを発見し、作り、ビジネス成長につなげるという目標も本心から実現したいと思っていましたが、無自覚の裏の目標と両立しようとすることで、一人で取り組むというアプローチになっていたのです。

自分の限界を思い知る

代表の期待通り、なんとか事業計画の達成をし、その上でプロダクトの問題を解決する方法を模索していました。

しかし、成果はまったく出ませんでした。

アイデアらしきものは出るものの、それを成果につなげるためにはなにをどうやって進めたら良いのかがわからなかったのです。

これにより、両立が不可能であることに気づくと同時に、代表に評価されるという裏の目標を自分が持っていたことに自覚的になり、両立が不可能ならプロダクトの問題を解決しないとA1Aに未来はないと考え代表にアプローチしはじめました。

なぜ人と組織は変われないのか

「なぜ人と組織は変われないのか」という書籍があります。

当時の私の的はずれなアプローチの数々は、実はこの書籍で多く説明できると思います。(当時はこの書籍の存在を知りません)

この書籍の内容を簡単にまとめると以下のような内容です。


人は心の底から変わろうと思っても、免疫マップという不安に対処するメカニズムによって実現したいことを阻害する行動を無意識にとってしまう。

その免疫マップを把握することでなにを変えたら有意義な変化をおこせるのかが見えてくる。

自身の免疫マップというメカニズムを把握するためには、以下の4つをあぶり出す必要がある。

人が本心から改善目標の実現(自己の変革)を望んでいても、その達成を阻害する行動をとってしまうことがある。
その場合、その阻害行動は実は改善目標の実現と矛盾する裏の目標の実現に役立っている。
そして、その裏の目標は自身の強力な固定観念によって作られている。

それを突破する(知性の成長がなされる)のはジレンマに陥ったとき。

なんらかの挫折、ジレンマ、人生の謎、苦境、私的な問題などに悩まされ続けること。 それを通じて、自分が現在いだいている認識アプローチの限界を感じること。 自分にとって大切な局面で、その限界を思い知らされる経験をすること。

ロバート・キーガン,リサ・ラスコウ・レイヒー. なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流 自己変革の理論と実践



以上を踏まえ、当時の佐々木の考えを整理すると以下のような免疫マップができあがります。

佐々木の免疫マップ

当時の環境では、改善目標と裏の目標に矛盾があり、改善目標を達成できませんでした。
しかし、両立することが無理だというジレンマを抱えることで裏の目標と固定観念に自覚的になり、改善に集中することができたのです。

代表へのアプローチ

響かない論理とストレートな物言い

自己の抱えている矛盾とそれによる限界の認識により、佐々木はA1Aでいうピボットの実行へと邁進することになります。

しかし、問題の大きさやピボットの必要性をCEOにどれだけ伝えても、心を動かすことはできず時間が過ぎていきました。

このときの資料を振り返ると、技術的な課題かのように伝えていた形跡が見られます。つまりビジネスの論理でなんとか必要性を伝えようとしていたようです。

また、代表の感情について共感せず、自分の正論をぶつけるようなコミュニケーションをとっていた形跡も多くありました。

きっかけになったメンバーの声

あるとき代表から以下のような質問が来ました。

RFQクラウドの「開発目線」の課題って、
・負債が多くなってきており、身動きが取りづらくなっている
・サプライヤ側、新明細、旧明細と3つのアプリケーションにまたがっている
・顧客指定納期のある開発がある
が俺の方でぱっと思いつくところなんだけど、教えてほしい。
どのあたりが問題になっているのか

これを受けて私はプロダクト開発メンバーに問題だと思っていることをポストイットで出してもらい、代表に共有しました。

個人名が入っているカードは塗りつぶしています

ポストイットには「CSしんどそう」や「つくってて気持ちがしんどい、滅入る」など感情面を吐露したものが見られます。

これが代表に刺さり、深刻な問題だと捉えてくれるようになりました。
代表は当時を振り返って「このままでは組織が離散する」と感じたそうです。(離散しても作り直せば良いという捉え方もあると思いますが、代表はそうではありませんでした)

代表の変革

メンバーの声がきっかけになり、この問題について対話の時間をしっかりととれるようになりました。

しかし、この問題の課題特定を進める中で、私にはどうしても内省が足りていないように感じていました。
様々な打ち手は考えられるものの、自分たちの内省が足りていないとまた同じような失敗を繰り返すように思えてなりませんでした。

代表の心の底を明かしてもらう

そこで私達は創業から2年間の出来事を振り返り、その当時なにを考えていたのか、どんな感情だったのかをポストイットで出していくワークをしました。

このワークの中で、私は代表の心のうちを知っていき、なにに不安を感じていたのか、その背景にはどんな思いや固定観念があったのかを知り共感することができました。

共感のない正論では人は変わらないと今は強く感じます。

2年間の振り返り


2年間の振り返り

代表の裏の目標と固定観念

当時からオープンな会社にしたい、メンバーが自律的に動ける会社にしたいと代表は言っており、様々な情報をオープンにしていました。

しかし、振り返りを見ると、色んな時期にメンバーや顧客から発せられていた危険信号のほとんどを真剣に取り合わず、押し切っていたことがわかりました。

なぜ取り合わなかったのか、どんな不安を抱えていたから取り合わなかったのかを深ぼっていくと、「失敗を認めたくない」という裏の目標と「失敗すると人はついてこない」という固定観念がありました。

代表は学生時代のサッカー経験から「実績が出ているうちは褒められるが、失敗したり、不調になったりすると誰も見向きをしてくれなくなる」という固定観念を持っていたそうです。

つらいジレンマに陥ったことで、良いプロダクト、良い組織、良いビジネスを作るためには、失敗を認め不都合な真実からも学ぶ必要があるということを認識したことで、これ以降の代表は大きく変わりました。

(贔屓目ですが、支えたくなるし、一方で最終的に代表が決めたことは、正解に変えてやろうと思えるような魅力を持つようになったと思います)

2020年12月、会社全体に対して自らの失敗(および私の失敗も)と反省を話し、今後の厳しい見通しと代表の希望を伝えました。

しかし、結果としてほとんどのメンバーは残り、いまもコアメンバーとして当時よりもさらに強く活躍してくれています。

乗り越えた現在のA1A

改めて振り返ると、当時問題だと認識していたことがすべて解決されたわけではないことに気が付きます。
正確にいうと、問題だと認識した上でときには捨てる決断をしたものや、実は問題ではなかったものがありました。

それでも当時のように組織に停滞感が出たり、モメンタムを喪失したりすることはありません。

そこには対話が大きな役割を果たしています。

B2B Enterprise x Vertical SaaS x 製造業ドメインという、多くの人が初めて取り組む事業領域だと、僕もメンバーもモヤモヤを感じることはいまでも多々あります。

しかし、そのモヤモヤを放置せず対話することによって、「その時点での自分たちの答え」を出すことができているのです。(これは必ずしも正解とは限りません)

こうやって対話を繰り返し、一つ一つ共通理解をつくりあげることで、無駄な迷いを抱えることなく高いモメンタムで実行に移せます。
そして、実行することでしか得られない、より深い学びを得ることができています。

今後も、未知の問題に取り組むA1Aでは、みながモヤモヤを多く抱えることがあるでしょう。
それでも、対話を忘れなければチームで乗り越えられると思っています。

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