「風待ち」とは「信じる自分を選ぶこと」かもしれない。||風待ちステイを終えて
ひょんなきっかけなのか、
はたまた、必然だったのか。
2022年6月、わたしは
初めて伊豆稲取に流れつきました。
個人的な話をすると、
わたしは大学を休学して全国を旅しながら
人と人、地域と地域、人と地域を結ぶことがしたいなと
次のいっぽを踏み出そうとしているタイミングで。
知り合いも何人か住んでいて、ずっと行きたかった稲取。
この場所に、「風待ちステイ」なんてものがあるらしい。
港町の暮らしを旅する宿「湊庵 -so-an-」で体験できるプランで、
訪れる人、一人ひとりの思いに沿った滞在を
いっしょに考え、実現させてくれるものだとか。
私が2泊3日でお世話になったのは、
赤燈 -sekitou-
「泊まれる裏路地カフェ」がコンセプト。
稲取へ来て、
私がいちばん初めに撮った写真です。
そしてここへ来た瞬間、直感的に思ったことがあります。
ああ、きっとここには素敵な出会いが待っている
根拠はなかったし、
そのときはよくわからない感情だったけれど、
「ここには何かある」
という感覚があったのです。
*
その直感は間違っていませんでした。
想像以上の出会いの数々が、私を迎えてくれたのです。
*
とにかく充実の2泊3日。
いろいろな人と出会い、語り合い、
いろいろな景色を見て、癒され、
いろいろなものを食べて、お腹を満たす。
このような体験を提供してくださった
湊庵スタッフの方々、
稲取住人の方々、
たまたまご一緒したゲストさんへの
感謝の気持ちは尽きません。
人生の風を待つのが、風待ち港の役目です。
風待ちステイを紹介してもらったとき、
こんな言葉をいただきました。
いいことばだ、
と思ったけれど、その感覚はまだ曖昧だった。
*
風待ち
とは、なんだろうか
*
この3日間を通して、
その意味が、少しずつ感じられた、
そんな気がします。
このまちに住むということは、
このまちには、いい風が吹いてくるんだと
信じることを選ぶこと。
このまちに居心地の良さを感じるということは、
何をしようと、自分は自分でいられるのだと、
そんな自分を受け入れてくれる環境がそこにあるんだと、
信じることを選ぶこと。
このまちに「出会ってしまった」自分を
信じることを選ぶこと。
信じる、だけではなく、
信じることを選ぶこと。
それが、「風待ち」なのかもしれません。
*
私は今、
大学を休学して全国を飛び回り、
地域と人を旅しています。
どうしてこんなことをしているんだろうかと、
自分のやりたいことはなんだろうかと、
迷ったり悩んだりすることが、実は多々あります。
その迷いや悩みは、
自分でいくら理由をつけても消えるものではありません。
それらが去っていくのは決まって、
「行きたいから行く」
「会いたいから会う」
それが、なんの躊躇いもなく言えたときです。
「行く」ということに
「会う」ということに
理由をつけるのではなく、そんな自分を信じる。
行きたいから行く、会いたいから会うと
言い切る自分を信じると、選ぶ。
それができる空間を、
私はとても居心地がいいと感じます。
*
実は、風待ちステイを終えたあとも、
数日間、稲取に滞在していました。
次の場所へ旅立つ前に、
稲取で出会った方々に、
一人でもいいから感謝の気持ちを伝える場をつくりたい。
前日のわがままなお願いにも関わらず、
湊庵のオーナー・荒武さんは、「風待ちステイ報告会」の場を
セッティングしてくださいました。
2泊3日を振り返りながら、
考えたことや感じたこともことばにしながら、
改めて「稲取」というまちについて
みんなで考える時間。
そこで、「風待ち」ということばについて
どんなイメージがあるのか、
集まってくれたみなさんに聞いてみたんです。
このまちに住んでいる人は、
「風待ち」
ということばをどのように捉えているんだろうか。
その人なりの「風待ち」のイメージを聞いてみたい。
そんな興味から出た問いでした。
そしてこの問いは、
私が想像した以上に、稲取に住む皆さんの心に刺さったようです。
私が感じた、
「信じることを選ぶこと」が風待ちなんじゃないか
ということばを受けて、
それぞれが「風待ち」について考える時間が生まれました。
*
きっとこれから、
たくさんの人が「風待ちステイ」を体験しに
稲取にやってくることになると思います。
そして、
そこで感じる「風待ち」のイメージは、
きっと一人ひとり全く違う。
その感覚を
自分の中で考えたり、稲取に住む人と共有したりしながら、
「風待ち」ということばの大きなイメージが
少しずつこのまちで形づくられていったら、
とても嬉しいな、と感じました。
*
そして、
私はこのまちでじぶんが風を待つ、だけでなく、
稲取に風を吹かす存在でもあったように感じています。
外からの風をまちに吹かすと同時に、
たまたま、そこに居合わせた者どうしとして、
同じ場所で、
それぞれの人生の風を待っている。
*
*
*
そのようにして人と人が出会うことは、
ありふれた日常であり、
偶然が無数に重なった奇跡である。
*
その奇跡を、私は信じようと思います。
2022年6月19日 早川芽生