店舗表現のヒントはモダンアートに隠されている・・・
『一つのものを圧倒的に集積することで、新たなフォルム(形)を生み出す』
“圧倒的に集積する”
ディスプレイでもモダンアートでも、“表現”する時には効果的な手法です。
しかし大切なのはその“ひとつひとつ”に手がかけられているかどうか?というところにもあります。
堀尾貞治「あたりまえこのと ひとつ ひとつ」
もう二年以上も前のお話です。
具体美術協会に所属していた堀尾貞治さんの展覧会、「あたりまえのこと ひとつ ひとつ」を拝見しました。
場所は京都にあるアートスペース虹(残念ながら閉館しました)
このギャラリー全体で一つの作品のようにも見える展示。
しかし、よく見てみると3つのパートに分けることが出来るようです。
外に面したガラス部分のペイント。
左側の壁面。
右側の壁面、といったパートです。
ガラス面のペイント
堀尾さんと、アートギャラリーのオーナーの熊谷さんの姿を外から模写したと思われるペイントが、正面に見えます。
とてもインパクトがある。
おそらく、二人がガラス面に貼り付いた状態に立ち、それをスタッフが模写したのでしょう。
左の壁面
中央にハート。
それを囲むように、円を描いたプレートがズラっと並んでいます。
ハートはよく見れば、雑誌を切り裂いてフォルムを作っています。
無造作に貼り付けているように見えますが、なんとも言えない趣のあるフォルムです。
円を描いたプレートも、ひとつひとつ描かれたものです。
配色も違えば、フォルムも微妙に違う。
ペンキの垂れた痕跡もひとつひとつ違う。
これもまた趣き深いです。
その配色の楽しさに、田中敦子さん(堀尾さんと同じく、具体美術協会に所属していたアーティスト)の描く“円”を彷彿させてくれました。
この色とりどりの“円”と大きなハート。
どちらも曲線で優しく丸みを帯びている。
国境や人種を超越した“愛”のメッセージのような気がします。
右の壁面
使用されている素材は“展覧会のチラシ”
もう不要となった、沢山のチラシを再利用しています。
不揃いながらも、短冊上のフォルムに切り取られたひとつひとつのチラシ。
それに対してひとつひとつペイントが施されています。
直線で分割するような線が描かれている。
気の遠くなるような作業がひとつひとつ行われているのです。
それが右の壁面に貼り付けられている。
こちらは左側とは対象的に、スクエアなライン。
密集されている場所と、均等に貼り付けられている場所。
そのバランスに趣がありますね。
堀尾さんの制作風景を想像してみると、きっと計算づくで創作しているわけではないのだろうな?そう思います。
アイディアとして大きなラフプランだけある。
次にひとつひとつの作業が圧倒的に集積される過程で、どんどんインスピレーションが働き、結果的には全体のフォルムが出来上がっているのかなぁって、そう思うんです。
逆に言えば、その出来栄え如何もひとつひとつの過程を積み上げることの結果なのだと思います。
だからこの展覧会のタイトルが「あたりまえのこと ひとつ ひとつ」なのかもしれませんね。
商品・スタッフ・そしてお客さん。つながるような表現
僕も店舗でこんな表現をやってみたくなりました!
商品とお店のスタッフとお客さんとが、つながるような表現ができれば良いなぁ。
お客さんと店舗のスタッフの写真が沢山集積されていてハートのフォルムになっていたり。
商品がひとつひとつが壁に貼り付けられてそれを囲むようにフレームが描かれていたり。
古い商品カタログをコラージュしてフレームに入れて壁一面に飾ったり。
そんなお客さんと店舗のスタッフと商品とがつながるような表現・・・
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