人生を決める出会い
ボクが今の仕事を続けようと思ったきっかけに、決定的な二人との出会いがありました。
その一人は、ワールドというアパレルメーカー時代の上司です。
当時、会社のなかで一番大きな売上を担うブランドを中心に、沢山のブランド事業の責任者である常務取締役の方でした。
アパレルメーカーの仕事は洋服の受注をとることではない!
僕が入社してからの10年ほどは、会社のビジネスの中心は卸事業でした。
アパレルメーカーとして商品を企画・生産して展示会を開催。
展示会で受注された商品を小売業の専門店さんに卸す。
専門店さんがコンシューマー(消費者)に販売する、という流れです。
なので、ビジネスとしての要は“展示会でいかに受注を取っていただくか?”、ということになります。
そのためにまず商品力を強める(良い商品を作る)ことが一番。
普通はそう考えますよね?
もちろん商品力を強めることはとても大切。
でもその上司の考えはそれだけではなかった。
専門店さんが順調に維持発展できるように、コンシューマーに向けて商品の価値を高く伝えよう、アパレルメーカーである我々もそこに貢献しよう、そんな志を持っていたのです。
だからVMDや販促や販売教育の専門家チームを結成し、その専門店のサポートを行うことに注力していたのですね。
おかげで、全国の専門店様の店頭で数々の実践をさせていただくことができた。
取引先の店頭という緊張感のある環境で、一流の表現を追求することに邁進できたのです。
取引先が一流の小売業であるために
商品やブランドやお店の価値を最終消費者に伝えることを専門家たちがサポートする。
⇒それにより取引先専門店さんが発展する。
⇒結果として、展示会において沢山受注され、アパレルメーカーも利益が生み出される。
こういうことを推進されていました。
だからボクに、直接的にも間接的にも聞こえてくる話は、一流の小売業であるためのお話しばかり。
アパレルメーカーといえば本来モノづくりの会社。
なのに、商品が良いのは当たり前、如何に売るのか?を考えさせられるクセを付けていただきました。
今思えば、とても本質的なことをついていたなぁと、そう思います。
後に会社が、SPAという、自らが小売を行う業態へ変換するタイミングでその上司も退職。
本格的に小売業中心の会社になろうとしていたのに、一流の小売業を説いていた人間が不在になる。
そんな皮肉な運命をたどります。
一通の手紙が届きました
退職されるタイミングで、その上司からボク達に手紙が届きました。
その一部を抜粋します。
『思いますれば我々仲間たちは、商品力を強めねばならぬことは言うまでもありませんが、しかしその一方で商品を売る側が順調に維持発展するために少しでも貢献できればと、胸踊らせ心を一つにして日々満身し時を刻むことが出来ました・・・』
『人生は劇です。演出家も主役も自分自身であると痛感いたしております。忘却は人の特質。燃え立つばかりの決意も月日とともに薄らぎ日常の中に埋没してしまいます。本当の人間の大切な物とは生涯の決意であると思っております・・・』
こんな思いが綴られていました。
この上司との出会いが、今のボクの原点であると思います。
だから自分の仕事にもとても誇りを持てたし、本質的なビジネスを身を持って感じ取ることが出来るようになったと、感謝しています。
今でも・・・