My 10 Favorite Albums of 2024 (So Far)
今年はビッグリリースが多い年になりそうですね。しかし北米メインストリームの勢いがそれに負けないかと聞かれると、微妙な気もします。ビッグリリースが続くと同時に、音楽シーンにおいて「アメリカ以外」の存在感が決定的になる年なのではないでしょうか。
少し遅れましたが、第1四半期のお気に入りアルバムを10枚選びました。便宜上ランク付していますが、1位以外のこだわりは実はありません。
10. Deeper Well - Kacey Musgraves
『Golden Hours』(2020) でグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞した Kacey Musgraves(ケイシー・マスグレイブス)の8枚目のLP。ポップ要素をいくらか含んだ前作『star-crossed』(2021) が商業的/批評的に失敗に終わり、彼女の人生のナラティブを中心に添えた純粋なカントリー/フォークアルバムへと回帰。2024年は「歌」の時代。全てを包み込む彼女の唯一無二のボーカルと、うっとり聴き惚れてしまう発音/アクセントが、このアルバムの中心を支えている。
Best Tracks:
M1. Cardinal
M4. Moving Out
M10. The Architect
9. Club Shy - Shygirl
英アンダーグラウンド・ダンスミュージックの最重要人物の一人、Shygirl(シャイガール)のEP。最近では、Mura Masa(ムラ・マサ)、Arca(アルカ)、FKA twigs(FKA・ツウィッグス)、Erika de Casier(エリカ・デ・カシエール)らとの客演でその活躍を見せてきた。自らの名前を冠した6曲入りのEPで、グラデーションのあるハウス/テック・ハウスを楽しめる。
Best Tracks:
M1. 4eva
M2. f@k€
8. Visions - Norah Jones
上質にプロダクションされたクラシックなロックとソウルバラッド。焦りが一切なく、「聴かせる」ソングライティングになっている。ボーカルも録音もバランスよく、晴れた日にぼーっと聴いていたい1枚。
Best Tracks:
M1. All This Time
M11. Alone With My Thoughts
7. Drop 7 - Little Simz
Little Simz(リトル・シムズ)のEPシリーズ第7作目。Nia Archives(ニア・アーカイブス)や Shygirl(シャイガール)らも手がける英クラブシーンの旗手Jakwobの全面プロデュースによるこのEPで、来たるであろう次作LPへの期待は高まるばかり。
Best Tracks:
M1. Mood Swings
M4. SOS
6. TYLA - Tyla
2023年が PinkPantheress(ピンク・パンサレス)なら、2024年は Tyla(タイラ)。巷で「アマピアノ」という単語が広まってからほんの数年。ちなみに筆者が同ジャンルを初めて認識したのは、2021年の夏、Jorja Smith(ジョルジャ・スミス)が文化盗用で批判された頃。
グローバルヒットを狙っていたアマピアノは、ハウスの要素を大いに含んだ「Water」でついに世界へ。デビューLPでは、アフロビーツが Alté(オルテ)という言葉に出会ってさらに多様化した現象を、彼女はアマピアノにおいて、たった一人で取り組んだ。しかも自身のアイデンティティは忘れなかった。
Best Tracks:
M3. Water
M5. No. 1 (feat. Tems)
M13. To Last
5. What Now - Brittany Howard
Alabama ShakesBrittany(アラバマ・シェイクス)のフロントパーソン、Brittany Howard(ブリタニー・ハワード)のソロ2枚目。壮大なバラッド「Earth Sign」から始まり、生き生きとしたソウル/ファンクが続く大満足LP。アグレッシブなバンドアンサンブルで魅せるM3「What Now」、ロウなハウスナンバーM8「Prove It To You」、メンターである Prince(プリンス)由来のボーカルがより一層炸裂するM10「Patience」、M11「Power To Undo」など、聴きどころがたくさん。
Best Tracks:
M1. Earth Sign
M3. What Now
M8. Prove It To You
M10. Patience
4. Mahal - Glass Beams
Bonobo(ボノボ)、Black Country, New Road(ブラック・カントリー・ニュー・ロード)、Floating Points(フローティング・ポインツ)などが所属するロンドンのレーベル Ninja Tune と契約している、メルボルンのバンド。東洋と西洋の両方をここまで絶妙なバランスで調理するバンドはそうそういないだろう。鳴る音すべてが贅沢に感じられる。
Best Track:
M2. Mahal
3. ORQUÍDEAS - Kali Uchis
ラテン音楽との距離が近かった70年代のソウルや、80年代にSade(シャーデー)が取り組んでいたテーマを継承しつつ、2020年代にスペイン語圏から北米シーンに殴り込むとこういった音楽になるのかという Kali Uchis(カリ・ウチス)の新作。全編スペイン語で書き上げられ、「ラテンポップの女王」という称号を積極的に引き受けに行っている。たしかに同カテゴリーにおいて彼女の右に出る者はいない。
Best Tracks:
M2. Me Pongo Loca
M3. Igual Que Un Ángel (with Peso Pluma)
M12. No Hay Ley Parte 2 (with Rauw Alejandro)
2. Still - Erika de Casier
2023年の音楽のトレンドを作ったのは間違いなく NewJeans(ニュージーンズ)と PinkPantheress(ピンクパンサレス)。前者のソングライターとして知られる、ポルトガル生まれ、デンマーク育ちの Erika de Casier(エリカ・デ・カシエール)の3枚目のLP。R&Bとビートミュージックの親和性、ミニマルなトラックメイキングを追求しているという点で、現在再評価が進んでいる Janet Jackson(ジャネット・ジャクソン)の傑作『The Velvet Rope』(1997) の文脈にある。
Best Tracks:
M3. Lucky
M5. ice
1. COWBOY CARTER - Beyoncé
Beyoncé(ビヨンセ)がまたしてもキャリアベストを更新した。同アルバムのレビューは別記事で「アメリカの『救済』と『再生』: メディア化するビヨンセ」というタイトルで詳細に書いているのでぜひご覧ください。
Best Tracks:
M1. AMERIICAN REQUIEM
M4. PROTECTOR
M7. TEXAS HOLD 'EM
M16. II MOST WANTED
M20. YA YA
【おまけ】 My 10 Best Songs
※先に紹介したベストアルバムに収録されている曲は今ランキング候補外です※
10. Alter Ego (with JT) - Doechii
Genre: Hip-House
9. Cinderella - Remi Wolf
Genre: Funk / Synth Funk
8. TAKA - Ahadadream, Priya Ragu, Skrillex
Genre: UK Funky
7. Saturn - SZA
Genre: Alternative R&B / Soul
6. Team Tomodachi - Yuki Chiba
Genre: Trap
5. Don't Forget Me - Maggie Rogers
Genre: Country / Singer-Songwriter
4. GOAT - Number_i
Genre: Southern Hip-Hop, EDM, Jersey Club
3. Training Season - Dua Lipa
Genre: Synth-Disco / Psychedelic-Pop
2. Walk Like This - FLO
Genre: R&B
1. yes, and? - Ariana Grande
Genre: House