友達の何気ない一言でとり戻した、海外への漠然とした憧れ(トゥルム/メキシコ)
世界一周を始めてもうすぐ一年。
メキシコのトゥルムにて、日本に住んでいる友達と合流した。
宮古島に住んでいた時、仲良くなった子だ。
彼女との出会いは私がフリーダイビングを始めるきっかけともなっている。
つまり、人生の岐路に立っていた子だ。
よく一緒に泳ぎに行ったし、ビーチで夕日を眺めながら心のうちを語り明かした。
懐かしくて暖かい思い出。
2人で話すのは楽しかった。
彼女は何度も海外旅行に行っていたし、ワーホリの経験もあった。
当時、ほとんど日本から出たことがなかった私からすると、世界へのイメージと憧れが膨らむひとときだった。
そして今日、およそ一年ぶり。
メキシコでの久々の再会だった。
嬉しいし、とにかく安心する。
一緒にセノーテでピクニックをした。
セノーテとは、メキシコ南部に点在している湖。
大きさや雰囲気など多種多様で、その数は4000を超える。
訪れたのは、がっつり潜るというよりかは、軽く泳いでのんびり過ごせるようなセノーテだった。
机と椅子が置いてあって、ピクニックできるのが魅力。
友達とパートナー、私の3人で、
たくさん泳いで、
お腹が空いたらブランチ。
そしてまた泳いだ。
明日移動なので宿にあんまり食材がなかったけど、こうして寄せ集めるといい感じ。
あの頃同様、ここでもたくさんおしゃべりをした。
以前は世界の国々がものすごく遠い存在で、輝いていて、憧れだった。
けれど最近は結構身近。
“旅をする“ということが肌に馴染んでいる感覚がある。
彼女の今までの旅の話も、同じところに立っているものとして聞けた。
逆に、今の宮古島での生活の話はちょっと遠く感じた。
ほんの少し、戻りたいな、と思う。
あの島でのたわいもない生活が、ものすごくいいものに思える。
ないものねだりだ。
世界一周旅行に出て約一年。
“海外での生活”に対しての漠然とした憧れが、すっかり消え去っている。
12月からカナダでワーホリをするんだけど、正直嫌だ。
お金を貯めるためだけに行く。
働くのが億劫だ。カナダ寒いし。
そんなナヨナヨした気持ちが巡っていた。
けれどそこに投下された友達の至極シンプルな一言、
「いいじゃん!ワーホリ楽しいよー」
その言葉に、
「確かに…!」と思った。
あたり前のことを忘れていた。
ワーホリは海外で長期間働くという人生の貴重なワクワクイベント。
世界旅行を通して、変に海外慣れしてしまっていたんだ、ということに気づかされた。
懐かしく思う。
飛行機を降りた瞬間から巡りだす“海外に来た!“という実感。
何もかも真新しく思える景色。
聞こえるは知らない言語。
覚えのない独特の香り。
人と交わす挨拶ですら刺激的で、
わからなさの楽しさに溺れる、あの感覚。
あのワクワクってどこに置いてきちゃったんだろう。
慣れてきて、華麗に旅をこなす感じも楽しいんだけど、なにか大切なものを忘れてしまっていた。
こんな自分、想像もしていなかった姿だ。
よくない、とてもよくない。
世界一周中にカナダでワーホリをするということ。
旅では得られない出会いがいっぱい待ち受けているんだろう。
取り戻そう。
新しい世界に飛び込む時、あの瞬間の、あの高揚。
思い出させてくれた友達には心から感謝である。
素直に気持ちを話せる友達って、本当に大切な存在だ。