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"音楽は歌詞しか聞かない"って人は、『他人を全く信用しないタイプ』?

こないだ、日本語の同音異義語の多さからくる、日本人のポップソングに対する文脈(歌詞)偏重主義と、そこから生まれる日本の音楽の音楽性の貧困について考えてた。


同じく同音異義語の多い言語を他に探してるみると、フランス語が出てきた。

フランスと、フランス語の音楽の素晴らしさはいまさら言うまでもない。
シャンソンに代表される、芸術性に富んだフランスの音楽。
現代にも素晴らしいミュージシャンを排出し続けている。
こないだ解散を発表したダフト・パンクもフランスのミュージシャンだし、個人的にはTionebとあとSon of kickはたぶん一生大好き。


フランスと日本、アニメとマンガ

フランスと日本、何が違ってるんだろう?
アニメ・マンガを中心とするオタクカルチャーが大好きな国っていうのは共通してる。


アニメ・マンガが作られる際、キャラクターとして描かれる人間は、その人間性をストーリーや設定に合わせて単純化された上で、任意のイコライジングを施されることを避けられない。
作品内でうまく動いて、なおかつ "映える" キャラクターはおもしろい作品には必須だ。

この "キャラクター作成" における手順を誤ると、人間性の軽視や蔑視・毀損に至りかねないこともある、っていうのはクリエイター・消費者どちらも自覚的でなければならない、っていう風にわたしは考えてる。


もちろん、アニメ・マンガもビジネスの枠組みの中の強烈な新陳代謝とともに生み出されるものなので、そのあたりの感覚に無自覚であるどころか、否定的にも見える作品も市場には溢れかえってる。

そういった作品に知らずしらずのうちに触れ続けることで消費者の中に芽生えはじめるのが、人間そのものに対する軽視であり、そこから "コンテンツ" として人間個人を消費しようとする欲求が生まれる。


オタクの欲求と "暴力性"


オタクを語る際に必ず出てくる概念、"処女信仰" を始めとして、アイドル業界までも含むオタクカルチャーに通底する "暴力性" はここから説明ができる、という風にわたしは考えている。

"推し" にした対象の入れ替わりの極端な早さ、度々ネットニュースにも持ち上がるファンからの声優への誹謗中傷などは、そこにあるコンテンツをただ消費するのではなく、「自分が望むコンテンツはこうあるべき」という一方的な思い込みをコンテンツにぶつけるようになった、オタクの "暴力性" の結果だ。

そして、この人間個人を "コンテンツ" として消費したいという欲求は、「日本人とは」を論じたものの中で頻繁に目にする、"他者への不信" という日本人の特徴とされるものと、大変相性が良い。


"推し" という感情


"推し" はあくまで "推し" でしかなく、親子関係や恋人関係のような、インタラクティブかつ責任の生じる人間関係、つまり "コミュニケーション"ではない。
消費者から向けられる一方的な感情の投擲でしかない。
いくら愛情を捧ごうとも、それが相手に変化を与える心配がなく、与えたいだけ愛情を与えられる立場からの "暴力的" な愛情の発露。


ここで、改めて音楽についての話に戻す。

音楽、特に歌詞を持たないクラブミュージックなどの音楽がオーディエンスに与えるものはまず、 "タイムライン"、つまり時刻表のようなものである。
それが、とあるクラブの中で、とあるDJを目の前にした集団であれ、仕事からの帰宅後のひとりきりのYouTubeタイムであれ、音楽を聞くオーディエンスに対して等しい "タイミング" を与える。


ポップソングの流れる何分間かの長さの中で訪れる、あるリズムやメロディ、展開が、オーディエンスを等しく導く。
等しく与えられた "タイミング" がもたらすのは個人と個人を結びつける "一体感" であり、宗教における宗教音楽の役割はまさにこれで、現代の音楽も宗教になぞらえられて語られる所以である。


万人が同じものへ向かって同じように動くことで、そのものを基準として自他を改めて認識し直し、そして受け入れる。

イスラム教の礼拝が毎日同じ時刻に行われることには、当然ながら "一体感" の観点からとても大きな意味がある。



しかしながら、この音楽の生み出す一体感と宗教性は、コミュニケーション欲求を持つものにしか発揮され得ない。

他人に対して強い不信感を抱く日本人が求めるものは、コミュニケーションではなく、人間個人を "コンテンツ" と見なす、暴力的な感情の発露だけである。

このとき、音楽は、あくまでその音楽を作り出したクリエイターの付随物でしかない。聞きやすい形に体裁が整ってさえいればいい。音楽がもたらすコミュニケーションの形は、他人への不信感から必要としない。






フランス生まれのマンガカルチャー、"バンド・デシネ" の特徴は、複雑な人間描写と練り込まれたストーリーの織りなす深い精神性と、卓越した描画技術であると言われている。

いわゆる "大人" のための芸術だ。


さて、日本のアニメ・マンガは?



ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。

あなたは歌詞と音楽、どちらを重視しますか?

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