#18 京都府城陽市 ―新名神開通後の新たな街づくり―
はじめに
『J NOTE』第18回は、京都府城陽市を取り上げます。
城陽市は、京都府南部に位置する人口約7.4万人の市です。京都市と奈良市のほぼ中間に所在し、城陽市内から京都駅まで電車で約30分という立地であることから、1970年代ごろよりベッドタウンとして発展してきました。
しかし、現在では近隣の京田辺市や木津川市などで宅地開発が盛んであることから、城陽市内の人口は1995年ごろをピークに減少傾向となっています。
そんな城陽市では、2024年度の新名神高速道路開通に合わせて、市東部の丘陵地帯に大規模な商業開発が計画されています。
そこで、今回の『J NOTE』では高速道路の新規開通に合わせて、城陽市がどのように街づくりを行っていくのかについて取り上げたいと思います。
①大型アウトレットモールの開業
城陽市では、2024年に京都府内初のアウトレットモールとして、「京都城陽プレミアム・アウトレット」の開業が予定されています。
京都城陽プレミアム・アウトレットは、三菱地所が運営する「プレミアム・アウトレット」の全国11か所目としてオープンする予定です。新名神高速道路の城陽スマートインターチェンジが設置される場所に隣接する形で建設が計画されています。
関西地方では、すでに「りんくう」と「神戸三田」の2か所にプレミアム・アウトレットが開業していますが、どちらも土日には多くの買い物で非常に混雑しています。そのため、開業後は城陽のアウトレットにも多数の来客者数が見込まれています。
京都城陽プレミアム・アウトレットへの出店店舗数は、オープン段階で約150店を予定しており、これは「りんくう」「神戸三田」のオープン時の店舗数(80店)よりも大規模なものとなっています(現在はそれぞれ増床・店舗数拡大済み)。また、車4000台が止められる大型駐車場や公園なども合わせて整備される予定です。
しかし、プレミアム・アウトレット開業によって城陽市内では交通渋滞が発生することが懸念されています。
とくに一般道は、京都市内に直通する府道69号線が片側1車線、国道24号線についても奈良・京田辺方面が片側1車線と交通事情はあまりよくありません。また、国道24号線の京都方面も宇治市内でバイパスが途切れていることから、市内のみならず周辺自治体でも渋滞が発生する可能性があります。
加えて、最寄り駅となるJR奈良線長池駅からのアクセスに関する具体的な案が出ていないため、交通面でやや不安が残っているのが現状です。
②次世代物流施設の建設
城陽市には2026年をめどに、全国初のインターチェンジ直結型の物流拠点が建設されることが発表されています。
物流施設は、新名神高速道路の宇治田原インターチェンジに直結する形で建設が予定されており、三菱地所が整備を進める「A街区」、伊藤忠商事と東急不動産などが中心となって整備を進める「B街区」の2か所に分かれて計画されています。
この物流施設は、京都府が策定した「新名神を活かす『高次人流・物流』構想」に基づいて、トラック運転手向けの休憩施設の整備や自動運転トラックの受入を想定した施設開発などが行われる予定です。また、AIやIoT技術を生かした最先端の物流システムを導入するなど、これまで全国に例のない物流拠点の整備を目指しています。
施設の工事着工は2025年度を予定しており、竣工は新名神高速道路開通に少し遅れる形になる見込みです。しかしながら、当施設が完成すれば国内の物流業界を大きく変えるパイオニア的存在になるかもしれません。
おわりに
ここまで、京都府城陽市の新たな街づくりについてみてきました。
城陽市では、新名神高速道路開通に合わせて様々な街づくり計画を打ち出し、市内の産業活性化や人口減少の食い止めに注力していることがわかりました。
関連文献
今西仲雄「ベッドタウンから職住調和都市への転換に関する一考察 ―京都府城陽市を中心として―」『龍谷大学大学院政策学研究』第9号(龍谷大学大学院政策学研究編集委員会、2020年)
中村雅彦「企業が機会を活かす行動につながる地方自治体の産業政策に関する考察―京都府城陽市の事例を中心に―」『龍谷大学大学院政策学研究』第11号(龍谷大学大学院政策学研究編集委員会、2022年)