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#19 「ふるさと納税人気NO.1」ってどんな街? ―北海道紋別市の産業と観光―

はじめに

『J NOTE』第19回は、北海道紋別市を取り上げます。

紋別市は、オホーツク総合振興局の北部に位置する人口約2.0万人の市です。オホーツク海に面しており、冬には沿岸に流氷がやってくることで有名な街です。

市内には鉄道や高速道路などは通っておらず、札幌や旭川方面からのアクセスにはもっぱら自家用車や高速バスが用いられています。また、市内に所在するオホーツク紋別空港に発着する定期便は1日1往復の羽田便のみに留まっており、他地域から紋別へのアクセスは決して良いものではないといえます。

そして、市の人口についても1965年以降一貫して減少傾向であり、全国の市町村同様に若年層の首都圏流出が本市の大きな課題となっています。

そんな紋別市ですが、2021年度のふるさと納税による寄付金額は約152億円を記録し、「全国で最もふるさと納税による寄付金が集まった市町村」となりました。

これは、紋別市のふるさと納税の返礼品に「ホタテ」「カニ」などの海産物が選ばれていることで、広く人気を集めたのではないかと考えられます。しかし、中には「どういった街なのかをよく知らない」まま、紋別市にふるさと納税をしてしまった人もいるのではないかと思われます。

そこで、今回の『J NOTE』では、紋別市の地場産業と観光について見ていきたいと思います。

①紋別市の地場産業

紋別市では、農業や水産業が基幹産業となっています。主に乳牛や肉牛を中心とした畜産業や、貝類やカニなどを中心とした漁業、バイオマス発電に利用するための木質チップを生産する林業などが盛んです。

そのなかで今回は、畜産業と漁業について見ていきたいと思います。

紋別市の畜産業

紋別市の畜産農家では、主に酪農を行っています。

市内で育てられている牛は、生乳用と肉用がほぼ同等の割合となっており、なかでも「オホーツクはまなす牛」は、紋別市と隣接する滝上町でしか生産されていないブランド牛です。

オホーツクはまなす牛は、牛乳の生産が主である乳用牛(ホルスタイン種)でありながら、肉用として生産されています。市内では5つの牧場で生産されており、ストレスを牛に与えないように徹底した品質管理のもと大切に育てられています。

オホーツクはまなす牛は、主に関西方面へと出荷されていますが、ふるさと納税の返礼品や地元のレストランなどで味わうことができます。まだまだ知名度は高いとは言えませんが、ふるさと納税の人気によって徐々にその販路を増やしているものと思われます。

このように、紋別市ではブランド牛の認知度向上や経営システムの強化に積極的に取り組むことで、持続可能な農業基盤づくりを目指しています。

紋別市の漁業

紋別市の漁業は、沿岸から流氷がなくなる3月から11月末ごろまで行われます。

市内で水揚げされる品目として、ホタテが漁獲量・漁獲高ともに全体の半分ほどを占めています。そのほかにも、スケトウダラサケカニなども数多く獲れています。

令和3年度 紋別市漁獲量(品目別)
1位 ホタテ:39,024トン
2位 スケトウダラ:24,129トン
3位 サケ:3,424トン
4位 タラ:2,867トン

令和3年度 紋別市漁獲高(品目別)
1位 ホタテ:578,545.2万円
2位 サケ:274,888.1万円
3位 スケトウダラ:81,472.6万円
4位 タラバガニ:36,917.5万円

紋別市産業部水産課『もんべつの水産(2022年度版)』より抜粋。

そして、紋別で水揚げされた豊富な魚介類の多くは、紋別市内の工場などで加工されて全国に出荷されています。主にホタテの身などをそのまま冷凍加工したものや、カマボコやさつま揚げなどの練り物を生産しています。

令和3年度 水産加工 品目別製品出荷高(数量)
1位 ほたて貝(生鮮冷凍水産物):16,680トン
2位 スケトウダラ(冷凍すりみ):13,246トン
3位 魚粉(飼肥料):6,593トン
4位 かに(茹でもの):2,273トン
5位 ソリュブル(飼肥料):2,215トン

紋別市産業部水産課『もんべつの水産(2022年度版)』より抜粋。

とくに、出塚水産が生産している「珍味ほたて」は、ホタテの貝の形をかたどったさつま揚げで、貝柱が丸々1個入っている贅沢な一品となっています。

紋別市の海産物は、先述の通りふるさと納税の返礼品でも高い人気を誇っており、紋別市の経済と知名度向上に大きく貢献しているものといえます。

②紋別市の観光

紋別市の観光と言えば、やはり流氷です。

紋別市では冬季に「ガリンコ号」と呼ばれる砕氷船が2隻運行され、海の上から間近で流氷を眺めることができます。このうち、2021年にデビューした「ガリンコ号Ⅲ IMERU」は3階建てのクルーズ客船となっており、冬季の運行が終わると「釣りクルージング」や「花火クルージング」など、1年を通して運行しています。

また、「北海道立オホーツク流氷科学センターGIZA」では1年中流氷について学べるほか、クリオネを鑑賞することができます。そのため、流氷がやってくる冬季以外にも紋別の海を楽しむことができます。

そして、「オホーツクとっかりセンター」も紋別が誇る観光地の一つです。

オホーツクとっかりセンターは、野生のアザラシを保護・飼育している国内唯一の施設「アザラシランド」、アザラシと触れ合ったりエサやり体験などを楽しむことができる施設「アザラシシーパラダイス」の2つの施設で構成されています。

とっかりセンターでは、様々なオリジナルグッズやアザラシ保護のためのプロジェクトを立ち上げており、観光振興や保全活動を積極的に行っています。また、ふるさと納税の寄付金もアザラシ保護や環境保全に用いられています。

紋別市内には、他にも夏季にハマナスが咲き誇る「オムサロ原生花園」や、海沿いに建てられた「オホーツクタワー」などの観光地が所在しており、冬季に限らず一年中豊かな自然を楽しむことができます。

おわりに

ここまで、北海道紋別市の地場産業と観光についてみてきました。

紋別市は、畜産業や漁業が盛んな地域であり、ブランド化して全国に売り出していることがわかりました。また、観光については流氷以外にも、紋別の豊富な自然を生かしたものが多いことがわかりました。

紋別市は、都市から離れている地理的条件のハンデや人手不足などの問題を抱えているものの、恵まれた自然を最大限に生かして持続可能な街づくりに取り組んでいるものいえます。

関連文献

  • 佐藤孝弘、黒瀧秀久「森林認証の取得と流域林業活性化の課題 ―北海道網走管内美幌町と紋別市を事例として―」『オホーツク産業経営論集』第15号第2巻(東京農業大学産業経営学会、2006年)

  • 中囿桐代「地域の『担い手』として外国人技能実習生を受け入れる人口減少自治体の試み ―紋別市国際交流サロンを事例に―」『商工金融』第70号第2巻(商工総合研究所、2020年)

  • 福山貴史、敷田麻実「地域づくりにおける『負の資源』の活用プロセス―北海道紋別市の流氷の価値創造の事例―」『日本地域政策研究』第23号(日本地域政策学会、2019年)




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