été 85 - summer of 85 -を見た
Le mardi 12 juillet 2022
どんよりと厚い雲が、僕の体ごと空気を重くする。
昼下がり、低気圧の負の影響を受けながら、何もせずじっとしている。
そんな中ふと目に飛び込んできたDVD。数日前に借りたままの映画が重なっていた。
選んだのは「summer of 85」。ずっと気になっていた映画だった。小さなシネマでしか上映されないような、静かな映画。
1時間40分の上映時間の中で、ぼくは 主人公の幸福、悲しみ、怒り、そして再生を経験した。
すごくナチュラルで、人間的な映画だった。
へたな誇張のない、静かで、思春期の男子のひと夏をそのまま映したような映画。
朝起きて「それ」に気づいたときの、やり場のない恥ずかしさ。
勝手に人に期待して、それが自分の期待通りにならずひたすらに怒りをぶつけてしまう若さ。
それもこれも全部、自分たちが経験してきた、今まさに経験していることたちだった。
1985年、ふた昔ほど前の南仏。ヨットの上で出会う2人の少年は、まだ高校生だった。歳不相応と言っていいほど端正な顔立ち、締まった体。一目見た時から惹かれてしまう男の子、ダヴィド。
二つ年上の彼に憧れを抱く少年、アレクシ。自分の名前が気に入らないと言ってアレックスと自ら名乗る彼は、ダヴィドとは対称的にまさに16歳という出で立ち。
出会い、体を交わし、幸福な時間を過ごす。その後に待ち受ける悲しみや別れも、2人の時間を無かったことには決してできない。
何が起ころうと、何事もなかったかのように続いていく。人生。しかし、記憶の中には2人が互いを愛した時間が明確に横たわっていて、薄れはしても、それが消えてしまうことは無いのだろう。
セピアを帯びた映像に包まれるようにして、若い2人の物語は進んでいく。作中に使用される楽曲の数々も、彼らを、彼らの若さを祝福するように感じた。
忘れられない映画体験がまた一つ、増えた。