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北欧、フィンランド

私は今、角田光代の「いつも旅の中」というエッセイを読んでいる。

最近、私は旅をするエッセイばかりを選び、購入し、読み耽っている。
それは、もともと旅や海外が好きな私が、ここ最近ずっと、外に行くことが出来ていないせいもある。

その本には、角田光代ならではの旅の仕方が書いてあった。一人で旅をする事、お金があるのに安宿に泊まり、飛行機で移動すればいいのにわざわざバスを使い、現地の人と会話して、街を近い存在にする。
そういう旅の仕方をしていた。

旅の仕方って、いろいろあると私はこの本を読んで改めて考えた。
いや、もちろん、私だってもう十何カ国と海外に行き、その度に色んな人に出会ってきたから、わかっているつもりではあったけれど。

けれど、そう言われてみれば、私の旅はいつも、保守的であった。
異国の地という心細さが、私をあまり積極的にさせないのかもしれない。

いつだってホテルと飛行機が付属しているツアーに申し込み、あまり自由行動を好まない。
一人で動き回って、帰り道がわからなくなるのが怖いからだ。
そう思うと、なかなか自由に歩き回るという事はできなかった。

けれど、一度だけ、一切ツアーには申し込まずに、ホテルと飛行機だけ予約して旅をした国があった。

北欧、フィンランド

フィンランドは、なんというか、とても暖かかった。
気温の話ではなく、人の話だ。
目が合えば、ニコッと笑ってくれる。無表情でも、瞳の奥のどこか遠くに、優しい温かさを持っている人が多かった。
無口で、シャイな人も多かったけれど、とても嫌な感じがしなかった。
私は、そんなフィンランドに、溶け込みたかった。
値段の安い、冬に訪れた。夏は白夜で、いつまでも日は沈まないのに、冬はあっという間に夜が来る。まだ午後の3時なのに、なんだか夕暮れを思わせるような、そんな街だった。

ツアーに申し込まずに行ったフィンランドだけれど、私はヘルシンキの町からは出ることがなかった。
毎日毎日、ヘルシンキの町を練り歩き、サウナに入りに行ったり、全裸で入れるプールに泳ぎに行ったり(女性と男性と入れる時間が分かれているので、本当に全裸で泳いでる人がいた)、近所のカフェを巡ってシナモンロールばかり食べたり。町の人たちは、物珍しそうに日本人の私をチラチラ横目で見ていた。

ヘルシンキは、まるで時間がゆったりと流れているようだった。
電車も、トラムも、駅も、街を歩く人々も、日本人のように、日々時間に追われ急いでいる感じがしないのである。
その日一日を、限りなく大事に、丁寧に過ごしていた。
フィンランドは、そういう国だった。

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