手触りの遺伝
辿ったつもりは全くないのに、気づいたら親と同じ業界で挑戦してたとか、意図せずいつの間にか親と同じ趣味が生き甲斐になってたとか、
そんなちらっと光る奇跡みたいな遺伝を見ると、すごく羨ましかった。
いつまでも憎んでいたいムカつく父と、自分を反面教師にしろと口酸っぱく言ってきた母、2人から私はそんな遺伝もらってないから。
2年の構想を経て、いいえサボり期間を経て、ZINEを初めて作った。
1番ワクワクしたのは紙や製本糸など、「手触り」を選ぶ時間。長野にある印刷工場に、朝イチの高速バスで紙を直接選びに行くくらい、こだわってみた。
本をぱらぱらした時の指のひっかかりがないかとか、あえて印刷のムラを出すための凸凹のある紙にしたりとか、等身大の私がつくるから製本に使うのはチャーシュー作った余りの凧糸にしようとか。
ふと、懐かしい気がした。
2人が東急ハンズで買ってくれたトレーシングペーパーと、誕生日に贈ってくれたハート型のぷちぷちだ。
トレーシングペーパーに文字を書いて、空に掲げて、見てを繰り返し、包装する必要のない家の物をぷちぷちで包んでは、開けて、を繰り返した。
私の周りにあった異質な素材の面白さ、それを15年以上経った今も好きな感覚はたぶん、ちいさなちいさな奇跡の遺伝だ。
私の手は彼らからのいとおしい遺伝。
それに気づいたある日のお風呂、
私の過去にはルーツがあって、
そこから繋がるストーリーの中にいるって感じて、ぐっとあたたかくなった。