5/27 森道市場2023フェスレポート。人力ミラーボールとVMO。ハッピーグルーヴの四角空間。
愛知県蒲郡市の海岸遊園地にて開かれている森道市場に参戦した。
過ごした時間はとてつもなく多幸感に溢れ、あっという間に時間が過ぎた。これまでの人生を振り返っても遊園地という場所は時間の進みが早い。特に大パーティハッピー空間となっていた“四角“は時空が歪んでた。
東京新宿から夜行バスに揺られ、朝に名古屋着、そのまま名古屋に住む友人宅に寄り、シャワーを借りて、朝ごはんをいただき、蒲郡まで電車で向かった。
友人と私は会場へ向かう電車で缶ビールで始めていた。私の森道はその時からスタートしていた。私は森道は5年前にその友人と行った以来2度目の参加である。(愛知県もその時以来なので5年ぶり人生2回目。)
名古屋から電車で1時間程度、缶ビールに加え、持参した泡盛、紹興酒にまで手を出し、顔は赤くなり出し、酔い始めていた。会場の最寄り、蒲郡駅に到着した時、時間は午前10時ベロベロ一歩手前である。
さらに東京から参加の2人の友人と合流をし、会場入りを果たす。
大きく海ステージと道路を挟んだ遊園地ステージがあり、まずは森道の醍醐味、海ステージへ向かう。海辺の砂浜にあるステージと、その手前の芝生ステージ、どちらも寝転ぶこともできるし、自然とマッチした環境となっていて靴を脱ぎたくなる。裸足となり、芝生もしくは砂浜を足の裏から感じ、音楽とともに地球の鼓動を感じる。野外フェスの最高の瞬間である。細田守映画の主題歌などを手がける高木正勝のピアノでスタート。時間は11時間くらい
会場の散策をしようと歩く。かなり広く砂浜のステージから1番反対のサーカスステージにいくには歩いて2、30分ほどかかった気がする。途中途中のショップはかなりの数があり、面白そうなお店も多い。遊園地ゾーンでは海ゾーンから一転し、メリーゴーランドや空飛ぶ車、ジェットコースター、お城のような建物が現れ、おとぎ話の最中に放り込まれた気持ちになった。その遊園地のステージこそが、私が森道市場でほとんどの時間を過ごすこととなるMORI-MICHI DISCO STAGE、私たちはその会場を“四角”と呼んでいた。
四角はお城の中、レンガ作りの壁に四方を囲まれており、その中心部には噴水が鎮座する。
流れる音楽はディスコ、ハウス、テクノなど私の好みど真ん中なダンスミュージックであった。
時に音楽は人を“解放する”ことがある。人間社会のしがらみから、人同士のコミュニケーションである言葉というから、理性の働いている普段の自分からの解放。誰かにとってその“解放されていく”光景は「壊れていってる」「おかしくなっていってる」と表現されるかもしれない。
私たち(私と友人3名)はその様子すらも「四角くなる」と表現した。
私たちは森道市場で気がつくと、四角に吸い込まれ、留まり、四角くなった。
時間は夏の日のガリガリ君がごとく溶け出し、一瞬で過ぎた。もう16時くらいになっていた
これは日記なので完全に主観である。森道市場のパーティレポではなく、私個人の森道市場、ひいては四角くなる様子を私の体験したことを私の言葉で残すだけである。
音楽により“解放された側”“壊れた側”“四角くなった側“の物語である。
音楽に耳を傾け体を揺らす、腕を振る、膝を曲げる、音が鳴り続ける限り止まることがない。ほとんどのダンスミュージックでは音が止まることがなく、軽快なテンポで音が鳴り続けるために私自身も休まるタイミングがない。頭の中では考え事がほとんどない状態。音だけに集中している。“イマココ”にいる状態。一種の瞑想状態に近いと思う。
ディスコステージの中、噴水を中心としたグルーヴが進行する。森道市場というフェスの中、その"四角"に吸い寄せられた人々の集合体は、時間が進むにつれて、“四角くなってくる”。
誰かの熱狂は横で踊っている自分に届き、自分の熱狂は隣に伝播する。噴水を挟んだ向こう側の誰かに届くこともある。それが全体にクッと行き届く時、グルーヴが出来上がり、自分の楽しいが相手の楽しい、隣の人の楽しいが自分の楽しいになる時、そこは大パーティハッピー空間となる。
私は2回、その空間を今回の森道市場27日土曜日で身体に感じた。
1回は何度も登場している“四角“こと森道ディスコステージ、CYKの時間帯である。
もう1回はサーカスステージ、VMOのパフォーマンスであった。
CYKとは東京で活躍するDJクルーで場を作り上げることが素晴らしく上手で思う存分に楽しんでいるだけで場の一体感がいつの間にか生まれ、盛り上がってしまう。今回もそうだった。
対してVMOとは今回森道市場でパフォーマンスを見て初めて知ったバンドである。
全身黒に包まれた服、白いメイク、トゲトゲの頭、デスボイス、音。森道の会場内で最深部に位置するサーカスステージには何時のタイミングでどうゆう理由から“四角”を抜け出したのか覚えていない。タバコを吸いにいってもすぐ四角に戻り、ジェットコースターに乗ることもできず、鈴木真海子もハナレグミをみることも出来なかったのに、VMOは見ることができた。楽器を使い、体の全てを使い、魂の音を出しているバンドに吸い寄せられ、気がつくと最前列にいた。最前は戦いだった。
まさに言葉の通りの熱狂、狂乱。最前の目の前に並んだストロボライトが1秒間に何度も光り、視界はほとんど機能していない。機能していないのは目だけではなかったように思う。
VMOの音楽は、魂そのものだった。その生命剥き出しの魂が音と私たちが呼ぶものとなり私の魂に直接ぶつかってきた。全身全霊をかけ音を奏でるVMOに対し、最前にいる奴らも身体をフルに使い、大声を上げ魂をぶつけ合う。魂と魂がぶつかり合い、私はある瞬間、音になっていた。
爆音で音が鳴り響いている中、真空状態のような時間が現れる。それはハードコアブラックメタルという初めて触れたジャンルであったが、もはやジャンルの名前などはどうでも良かった。とにかく己の中の魂を感じ、それを爆発させた。ただ音を浴びたのではなく、食らった。それ以外の言葉はない。
熱狂、狂乱、ストロボ、魂、ハードコア、ブラックメタル。
VMOの演奏は和太鼓のパフォーマンスやオーケストラの音のように身体全体、むしろ魂で直接聴いていた。この初めての音楽による衝撃を知った後はこの衝撃を知る前には二度と戻れない。アメリカのヨセミテ国立公園のたった一人の人間では到底敵わない圧倒的に壮大な絶景を見た時に感じた感情を思い出した。
最後の線香花火が落ちたと同時にライブが終了し、熱狂の最中にいた観客たちがステージ前から散り散りになる。一人取り残されたようにそこに残る。台風が過ぎた後のそれと同じ気持ちだった。
スマホを確認すると友人からのメッセージ「四角にいるよ」と。
VMOの興奮冷めやらぬままに私はディスコステージ四角へまたもや吸い込まれていく。時間は20時頃
ルミナリエのような綺麗な電飾のあしらわれたゲートをくぐり、プール沿いを抜ける。森道市場の良いところとして、カップルやファミリーでの参加も多い点がある。しかし、ディスコステージで爆踊り、VMOでは上裸で魂のぶつけ合いをしていた私は異世界転生されたんじゃないかと不安になるほどだった。即座にTシャツを来た。危なかった。そんな感覚になりながら小走りで家族連れを追い越し、私の主戦場であるディスコステージに到着する。
会場の“四角くさ“は最高潮に達していた。
正面すぐに友人の姿を見つけると即座に踊り始める。言葉はないが私たちは“踊り“というコミュニケーションを持っている。VMOのデスボイスも何を言っているか正直わからなかったが、魂は伝わった。それはむしろ言葉よりもダイレクトだった。
CYKのディスコミュージック、ダンスミュージックにより、会場のグルーヴがまとめられる。噴水を中心に一体感を感じ、私一人ではなく会場の熱が上がっていた。
ふと横を見るとサッカーボールを持って楽しそうに踊る人がいた。それは私が毎年通っているりんご音楽祭の主催者であった。そのボールはミラーサッカーボールだった。森道市場のショップにて12,000円で売っていたものを買ったのだという。流れで受け取ると「重たいから持ってて」と。
そうして森道市場2023にて人力ミラーボールが完成した。
ミラーボールを持ったままクルクル周り、ボールを手の中で回した。
最高な音楽と共に自らの目の前で回るミラーボール。かなり重たかったが、その時アドレナリンにより全く重たくなかった。やはり“魔のステージ四角”。大パーティハッピー空間と化した四角での時間は体感時間にすると数十分で終わってしまった。
改めて私はパーティが好きだと実感した。
今回、『森道市場で誰が1番楽しんだでしょうか選手権』があったらトップに君臨するとさえ思っている。完全にめちゃくちゃ楽しかった。
それはただ単に音楽があったらよかったのか、蒲郡ラグーナがよかったのか、アルコールやその他のものがよかったのか、友人たちと来れたのがよかったのか。そのどれもが楽しかった要素である。正解であるが正解でない。音楽、場所、自分、友人が良ければ大体は最高の時間となる。しかし今回はそれを超える感情がある。“その日、その場所を楽しもう”とする他の参加者がいたからにほかならない。
大パーティハッピー空間を作るのは主催者でも演者でもなく、そこに“参加しているすべての人なのだ“と改めてわかった。
隣の人が楽しそうだと私は楽しい。それと同時にきっと私が楽しそうだと隣の人も楽しいのである。それがグルーヴを作り出すのだと分かった。
自分が最高に楽しむためには相手の楽しいが必要で、その相手の楽しいには自分の楽しいが必要。だとしたらまずは自分が楽しむしかない。
森道市場。最高のフェスだった。
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