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残像日記8
十月某日
いもを掘る。今年もたくさん掘れたことを皆でよろこぶ。細長くない、丸っこいさつまいもに四方八方根っこが生えているのを見て、Mさんが「獣の心臓みたい」と言う。
十一月某日
『空気の日記』を読む。23人の詩人がコロナ禍に綴った日記本で、まずいちばん気になっている詩人のひとのところだけを読む。次にまた気になる人と、その繰り返し。その人の作品だけからではわからない、部屋や街の断片がちらちらと見える。
十一月某日
すこし肌寒い日。海に行き、ひたすら波打ち際を歩く。シンパシー、エンパシー、とブツブツ言いながら歩いていると、母ぐらいの年齢のおばちゃんに写真を撮ってくれと頼まれる。曇天の海をバックに両手ピースの傾げる上半身。まぶしかった。駅近くの納言志るこ店で田舎しるこを食べ、あたたまって帰る。
十一月某日
自転車で隣りの市の図書館に予約した本を受け取りにいく。
杉本真維子『袖口の動物』『点火期』
藤原安紀子『音づれる聲』
中尾太一『パパパ・ロビンソン』
別の日
峯澤典子『ひかりの途上で』
暁方ミセイ『青草と光線』
ぱらぱらと詩集ばかり読んでいて、小説を借りても読まずに返す日々が続いている。日記もどうやって書いていたか思い出すため、メイ・サートン『終盤戦 79歳の日記』を借りる。79歳、父と母のちょうどあいだくらいの年齢だ。身体の不調をなだめながら、庭を花を気にかける日々。79歳まで生きているのだろうか、私は。しんどくなく本が読めているといいなと思う。