チーム力
先日、熊本の八千代座へ歌舞伎「古典へのいざない」を見に行ってきました。近年、友人のお陰で毎年観劇することができ、そして今年も、とても感動的な時間を過ごすことができました。
自分へのご褒美!といっても、ご褒美もらえるほどのことはしていないので(笑)自分への慰めかもしれません。いやいや、叱咤激励ですね。
友人には感謝するばかりです。
さて、今回は工事現場の話を、と思います。建築工事は、多くのプロの職人さんがかかわって造り上げていきます。多くの職人さんは、下請けとして作業します。どんなに大きな会社でも、この形態はあまり変わりません。社員として何人かの大工さんを雇用していることはありますが、多くの職種は他の会社(または個人)に発注して、作業をしてもらいます。多くの会社(個人)がかかわることになるので、工事全体を取りまとめる役の人が必要になります。
この役を担うのは、かつての日本では大工の棟梁さんでした。しかし、現在は建設会社がこの役を専門にすることが多くなりました。大工さんはその分作業に専念できるのです。工事を取りまとめるためには、多くの知識と経験が必要です。それだけではありません、常に安全面、衛生面に気を配り、作業の流れを考え、細部の作りを考え、そしてコスト管理も行います。(大工さんはこの辺りに気が回らず、最後に「追加請求」という形になることが多いと感じます)
「工務店の人は作業をしないで、顎で人を使って偉そうに!」などと思ってはいけません(笑)
設計士はというと、このチームのゴール(完成形)を指し示すのが仕事だと思っています。
施主の気持ちを汲み取り、法に則り、衛生的で快適、安全な建築の完成形を皆と認識できるように表現するのです。設計士も多くの知識と経験がないと、このチームに貢献できません。現場では、いろいろな問題が発生するものです。そして、チーム一丸となって解決策を考えゴールを目指して作業するのです。
いいモノになるかは、一つのゴールに向かい、いかに多くの職人が集中できるかにかかっている気がします。それには、チーム力が必須です。
プロのサッカー選手のように、プロの職人さんは他のチームに入っても活躍できます。しかし、足並みのそろわないチームメイトがいるとほころびが出てきますよね?初めはちょっとしたミスでも、そこからズルズルといろんな事に影響が出てきてしまうものです。結局は、人間同士の作業なのでチームの和が結構大切なのです。
そのチームの監督が、建築会社の現場監督(現場代理人)ですね。選手選びも大切な監督の仕事です。
ところで試合が始まってからの設計士の仕事はというと?設計士は、工事現場へ行くと嫌がられる存在です(笑)設計図通りできているか、監視する役回りだからです。試合中の、審判みたいな感じでしょうか。嫌がられたりしながらも、それでも、監視役は必要です。
施主のため、建物の責任を負っています。
キチンと見張らなければいけません!
そこで、どうすれば現場の人から嫌がられないかと(笑)ちょっとだけ考えてみました。きっと、完成形が素晴らしく感じられるもの。誇りに思えるような仕事になること。ではないかと。そのためには、ちょっとくらい嫌われても素晴らしいものを目指すことが、結果としては認めてもらえるのでしょう。
(これ、これから自分に言い聞かせよう!)
毅然とふるまう主審のように、時にはカードや退場も言い放たなければなりません!(これは、少しオーバーですね。)
モノづくりおいてこの「チーム力」は共通していると、先日の歌舞伎を見ていて感じました。多くのスタッフが、華やかな舞台の陰でせわしなく働いています。役者さんをはじめ、その一人一人が完成した華やかな舞台を誇りに思い、汗をかいて真剣に自分の役(仕事)をこなしています。その姿には毎回感動させられます。
役者さんはもちろんみなさん「命をかける」「命を削っている」いや刹那に「命は燃やしている」ようにも感じます。八千代座は、小さな舞台なのでそんな心意気が凝縮して感じられるせいかもしれません。
何事にも「心意気」、大切にしたいです。
今、ブログを書きながら思いました。