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掌篇集

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詩、掌篇。または吉田悠軌さん作『一行怪談』のオマージュ。 気が向いたら続きを書く。
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2016年8月の記事一覧

例えば宙を泳ぐたんぽぽの綿毛が彼女の肩に乗っただとか、それで充分だった。そんな些細なきっかけが、彼に火をつけた。要は誰でもよかった。ただ、自然の成り行きにすべての運命を押し付ける。僕のせいではない。そう思いたかったのだ。
『犯行予告』

命のあることが決して幸福な訳では無いのに、彼女はいつも、失われようとする命に相まみえる度に「次はどうか末長く在りますように」と小さな声で願っていた。
『カントフネブレ』