【特集】月極駐車場に隠された巨大ポテンシャル
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インターネットの普及から20年、スマートフォンの登場から10年―――。
社会のデジタル化が進み、さまざまな利便性が向上する中でも"ITの空白地帯”に遭遇することがある。
自動車ユーザーが月極駐車場を探し、契約を結ぶプロセスはその典型例だ。
近隣を歩き回り、駐車場の看板に手当たり次第に電話をかける。
ポストに入ってくる駐車場募集のチラシを確認する。
契約を結ぶ際は、不動産会社に出向き、紙の契約書に捺印する。
そんな現代に似つかわしくない体験に変革をもたらしているのが月極駐車場管理SaaS「Park Direct」を提供するニーリーだ。
訳知りのスタートアップ関係者であれば「月極駐車場では、TAMが小さいのでは、、」といった声も聞こえてきそうだが、バーティカルSaaSの新星は、私たちの想像を超えるスピードで拡大を続けていた。
詳細は公表されていないものの「T2D3を上回るペースでARRが推移している(代表取締役佐藤氏)」と国内SaaSスタートアップ屈指の成長をみせている。
今年7月には海外機関投資家のKeyrock Capital Managementから17億円の資金調達。
様子見ムードの強いスタートアップ投資環境下においても、企業価値は117億円に到達するなどローンチから4年弱で破格の評価を受けている。
「ステルスで事業拡大をしてきたため、意図的にメディアインタビューを避けてきた」と、これまでの露出は限られてきたが、今回、Primaryではニーリー代表取締役佐藤氏に独占取材の機会を得た。
2023年末、いま最も注目すべきバーティカルSaaSスタートアップの知られざる巨大ポテンシャルに迫っていく。
月極駐車場は「ニッチ市場×→巨大市場〇」
現在、日本国内の月極駐車場台数はおよそ3,000万台。
自家用車1台貸しから、法人に対して数百台単位での貸し出しまで、全国津々浦々に月極駐車場は存在する。
一般的な賃貸不動産と同様に土地の「オーナー」が不動産業務を営む「管理会社」に募集、契約、賃料収納、管理業務を委託。駐車場の「借主」は「管理会社」と賃貸借契約を結び、所定の手数料が引かれた賃料が「オーナー」に渡るのが基本的なビジネス構造だ。
「管理会社」にとって、月極駐車場の貸し出しは数千円から数万円程度の賃料に対する手数料となり、単価に対して工数もかかるため、大きく儲かるビジネスではない。
一方で「駐車場を更地にして、不動産開発を行うケースなどもあるため、駐車場管理件数を増やすことは管理会社のビジネス的にも重要(佐藤氏)」という構造を持ち、「管理会社」としては手間を減らしながらも取り扱い件数を確保したい思惑が存在する。
「借主」としては、駐車場検索の不便さや対面や書面による契約締結、クレジットカード未対応の決済などに不満を抱いており、一連のプロセスに対するデジタル化が望まれていた。
このような「管理会社」「借主」双方の非効率を一気通貫で解消するのが月極駐車場の募集から契約、決済、管理までを提供する「Park Direct」だ。
2019年のサービスローンチ後、掲載台数は着実に増加。現在は40万台を超える月極駐車場の登録がなされており、競合サービスの数倍となる圧倒的な規模感まで成長した。
売上の詳細は明かされていないが、現時点で推定ARR20~30億円程度とPrimaryでは概算している。
また成長ペースも「米国で参照されるような初年度を2億円として、そこからのT2D3ペース(ローンチから5年後にARR144億円)を目指しており、ニーリーはそのペースに乗っている(佐藤氏)」と国内SaaS屈指の成長スピード感を示している。
現在、ニーリーの同業他社を含めたWeb上に掲載されている月極駐車場台数は100万台程度とみられるが、日本全国3,000万台の母数を考えれば、市場の浸透度は3%に過ぎず、ホワイトスペースが広大に存在する。
「この数年で1,000万台の掲載を達成したい(佐藤氏)」という野心的な目標も実現可能性は十分にあり、その達成によって将来的にARRは現在の25倍の余地がある。
ここからは佐藤氏へのインタビューを通じ、ニーリー創業からの戦略や海外機関投資家も着目する「月極駐車場管理SaaS以上」の拡大可能性について明らかにしていく。
急拡大バーティカルSaaSを立ち上げる戦略論
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